ジャン・アレチボルトの冒険

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心揺さぶる歌声と高いコメディ適性、桜井玲香ヒロインの「Mr. カミナリ」は演劇の未来を開くか [10Nov14]

2014-11-10 16:00:00 | 芸能
衛藤美彩さん、桜井玲香さん、スーパーエキセントリックシアター(SET)創立35周年記念公演「Mr. カミナリ」、2週間全18回の舞台、本当にお疲れ様でした。

SETは、コメディを基本に置きつつ、本格的な歌とダンスで観客を魅了する、国内屈指のエンターテイメント集団で、二人のWキャストが告知されたとき、ハイスキルな舞台に付いて行けるのかどうか、「大丈夫?とくにキャプテン?(笑)」と、正直、一抹の不安を感じていました。

ところが、いざ始まってみると、二人とも持ち味を生かした演技で物語に溶け込んでいる。

そして、コーラスやソロの場面で、素晴らしい歌声を響かせ、SETの舞台に新しい風を吹き込んだんじゃないかと、ファンとして自惚れられるほど(笑)、存在感のあるヒロインを作り出して、乃木坂46の底力を見せてくれました。


私は、以下の記事で書いたように、「折り返し付近」の衛藤さんと、さらに、千秋楽前日の桜井さんを観てきました。

衛藤美彩の美声炸裂!SET「Mr. カミナリ」はアイドルとの化学反応が斬新なミュージカルコメディ [04Nov14]

前回のカーテンコールで、座長である三宅祐司さんが「また違ったアプローチになっていて」と述べたように、確かに、キャプテンの回は、みさみさとは異なる雰囲気の舞台になっていたと思います。

というのは、現実離れした超絶美少女ながら、桜井さんには、なぜかそこはかとなく漂う「天然感」というか、「ポンコツ感」というか(笑)、「ボケキャラ」的な雰囲気がある。

それが三宅裕司のツッコミ魂を刺激するのか、ヒロイン臼杵七音 (うすき ドレミ) への当たりが、みさみさのときより、強くなっていた気がします。


そもそも名人芸と言える域に達している、小倉久寛との掛け合いも、彼が醸し出す究極レベルの「ボケ感」があってこそ成り立つもので、桜井玲香のような、お嬢様なんだけど、隙だらけという空気感は、三宅さんの好物じゃないかと(笑)。

衛藤、桜井で、台詞や筋立てが大きく変わることはないのだけど、アドリブ部分でのやり取りが、キャプテンの方が、よりコメディ色が濃くなっている印象を受けました。

カーテンコールのとき、いよいよ千秋楽を残すのみとなった今の気持ちを聞かれて、桜井さんが「顔合わせから、稽古、公演と、あっという間に過ぎてしまって、まだまだ物足りない」と述べたのに対して、三宅さんが「じゃあ、地方公演に来る?」と返してました(笑)。

演技部分での桜井玲香のキャラは、正統派のボケとツッコミを基本とするSETの掛け合いに、かなりフィットする可能性を感じさせるもので、座長のお誘い発言には、ちょっとだけ本音が入っているかもしれません。


桜井玲香が吉本新喜劇を彷彿させる庶民的なドレミを演じたのに対して、衛藤美彩は、目が離せなくなるスタイルの良さと、淀みなく台詞を繰り出す隙のない演技で、「本当に、君は一介の音楽教師なの?」という雰囲気を発散します。

ストーリーについての予備知識を一切持たず、「Mr. カミナリ」を観たのですが、衛藤美彩が登場してしばらくの間、彼女は、政府から派遣された潜入捜査官ではないか、禁止されている音楽を秘密放送で流し続ける「南のヤンバルクイナ」のアジトを見つけようとしているのではないかと、かなり後半まで疑ってました。

「Mr. カミナリのみなさん、この地下室を超文科省に通報したのは、実は、私なんですよ、ハッハッハッ」てなことを、みさみさが突然言い出すんじゃないかと(笑)。


ただ、彼女がおじいちゃんから教わったという「とんこつラーメン」の歌をうたい、主役であり、Mr. カミナリの一人である、三宅裕司演じる神田さんがその歌を知っていたという辺りから、二人の血のつながりが浮上してきて、ドレミはたまたま騒動に巻き込まれた普通の人なのね、という気分になってきました。

ちなみに、Mr. カミナリは、荒んだ若者が引き起こす犯罪などの社会問題を解決するため、政府が、昭和の「かみなり親父」を参考に、子どもの教育用として、なんと!、希望者を死後に改造して作った人造人間です。

生前の記憶はすべて消されるので、ひ孫であるドレミと会っても、自分との関係には気づかないという状況が可能になっています。

そして、Mr. カミナリ制度を唯一受け入れなかった九州への逃亡を続ける中、一歩手前の下関で、実は自分自身が作ったその歌によって、神田さんが、生前の出来事を思い出し、お笑い的にも、音楽的にもゴージャスなクライマックスへ流れ込んでいく。

歌は「記憶のしおり」であり、人の心を動かす凄いパワーを持っているというのが、「Mr. カミナリ」の一つのテーマだと思います。


桜井玲香のドレミは、共演者の輪の中にどっぷり入って、みんなで芝居を進めていくヒロインであるのに対して、衛藤美彩は、隠し切れないスターオーラが、「掃き溜めの鶴」的なワクワク感を醸し出す、「自走式」ヒロインというイメージでした、あくまで私の感覚ですが。

ただ、雰囲気は違えど、二人とも、それぞれの個性を上手く発揮した演技が出来ていて、彼女たちの役者としての潜在能力と、SETという劇団の懐の深さを感じました。


ところで、今回の舞台を観ていて、衛藤さんは、大仕掛けのアクション映画で栄えるんじゃないか、ハリウッド的な大作でも、彼女であれば様になるんじゃないかと、ふと思いました。

イメージとしては、「007」のボンドガールというより、「バイオハザード」でミラジョボビッチと対決する感じが良いですね(笑)。

「ミステリアス」な雰囲気って、単にビジュアルが飛び抜けているだけで出せるものじゃない筈で、あれだけの「只者じゃない」感、しかも「セクシー」がもれなく付いてくるのは(笑)、大きな武器になるんじゃないでしょうか。

みさ先輩自身が目指すイメージがあると思うので、あくまで1乃木坂ファンの勝手な願望なんですが、全身レザーの衛藤美彩がハイキックした後、銃を構えるシーンとか、最高に魅力的だと思うのですが、どうでしょう、何だか変な方向に、妄想を膨らましてしまいましたけど(笑)。


芝居部分では、違うタイプのヒロインを演じながら、歌部分に入ると、ステージが消え去って、観客を別世界に連れて行くほど、二人とも素晴らしく魅力的な歌声を披露してくれます。

衛藤さんは、「鈴を鳴らす」ような天使の歌声で、聴いていると、俗世の煩悩を忘れ、天上界で優雅に遊んでいる気分になる。

一方、桜井さんは、透き通った高音の美しさに加えて、低いパートにも力強さがあり、自身の感情をそのまま音楽に載せて届けるような、非常に気持ちのこもった歌で、心を揺さぶられます。

とくに最後の劇中音楽ショーは、衛藤さんと桜井さんの歌唱力が遺憾なく発揮され、超絶に美しいビジュアルとの相乗効果によって、どこに出しても恥ずかしくない魅力溢れるプロのステージになっていました。

正直、乃木坂のライブや番組で、個々のメンバーの素晴らしさを、ここまで上手く引き出したものは見たことがなくて、SETのプロデュース能力の高さに感心すると共に、運営との差を考えて、ちょっとブルーな気分になりました(笑)。


キャプテンの回を観たとき、すぐ前の席に、SETのファンなのでしょう、おばあさん、お母さん、娘さんの、親子三代と思しき方々がいて、その反応が気になったのですが、キャプテンの歌に聴き入っておられて、乃木坂ファンとして、嬉しかったですね。

さらに、カーテンコールのとき、「れいか~!」と声が上がると、おばあさんが、「おお!!」と笑いながら声のする方を身を乗り出して見ていて、普段のSETではあまりないだろう、アイドルの現場感にも、興味を持たれているようでした(笑)。

芝居のあと、カーテンコールで役者の名前を呼ぶのは、「ブラボー!」と叫ぶのと同じく、観客として許される範囲の賞賛表現だと思いますが、歌舞伎の「よっ!成田屋!」のように、基本的にシステムとしてやっているのではなく、本当に観客が自由意思で叫ぶのは、日本の演劇では少ないのかもしれません。

アイドルのコンサートでは当たり前の「れいか~!」「みさみさ~!」が、「Mr. カミナリ」のカーテンコールで、上手いタイミングで炸裂する光景を見ていると、衛藤・桜井の生み出した個性的なヒロイン像と共に、演劇に新しい風を吹き込んで、乃木坂とSETのコラボが成功しているという意を強くしました。


「Mr. カミナリ」のパンフレットに、三宅裕司、小倉久寛ら劇団員と、衛藤、桜井の対談が載っています。

その中で、三宅さんは、

素敵な2人を客演に迎えて、今までとはだいぶ違う印象になるかと。
-------(略)------
これをきっかけにSETが違う形になる可能性もあるよね。

と述べています。

SETという、スタイルが確立しているように見える人気劇団にとっても、乃木坂メンバーとの共演は、今後の方向性をも視野に入れた、大きなチャレンジだったようです。


日本の芸能界は、プロダクション、映画会社、レコード会社、劇団など、タレントを供給する大手の顔ぶれがほぼ固定化されている感があり、一種の停滞感や閉塞感が漂っていて、そこにインターネットの普及を主原因とする、テレビ視聴率の低迷などが追い打ちを掛け、人や企業からお金を集める力が以前より弱くなっている気がします。

しかし、そんな逆風の中、アイドル業界では、次から次へと斬新な集金システムに基づくグループが誕生して、様々な問題を引き起こしながらも、乃木坂のように、握手の魅力で40万枚ものシングルCDを売り上げるような、とんでもない集金力と動員力を持ったグループも出てきました。

それが何かはともかく、アイドルには大人をも強く惹き付ける魅力があって、巨大な人気を呼ぶ可能性のあることが、徐々に知られてきています。


芸能界でアイドルが注目を集め、マンガ・アニメ、芸術、スポーツ、演劇、囲碁将棋など、さまざまな「異業種」とのコラボが進むのは、アイドル産業が成長株と認識されている証拠なのだと思います。

こういったコラボを通して、現在伸びつつあるアイドルというジャンルが、他の分野にどのような影響を及ぼし、経済的な効果を越えた、何か文化的に価値のあるものを生み出せるかどうか、舞台「Mr. カミナリ」への乃木坂の参加は、芸能史に残る、興味深い挑戦なのかもしれません。

そして、衛藤美彩と桜井玲香のヒロインを通して、乃木坂とSETが双方のファンからクロスして評価されたことは、アイドルと劇団が、経済面のみならず、エンターテイメント部分おいても、「WIN-WIN」の関係を築けることを示したんじゃないでしょうか。

その持つ意味は、決して小さくないと思います。


終わった後に「わたしはSETでヒロインをやったんだ」という、経験からくる自信をつけて帰ってもらいたいよね。

これも対談での座長の言葉です。

桜井さんは、「あっという間だった」と感想を述べてましたが、「充実した時間は、過ごしているときは短く、振り返ると長く感じる」と言います。

間違いなく成長した筈のこの経験をベースに、衛藤さんと桜井さんが、今後、大きく飛躍していくことを、楽しみにしています。


「Mr. カミナリ」では様々な歌が美しいハーモニーで披露されるのですが、劇前半、地下室の場面で、Mr. カミナリの一人であり、操られて「南のヤンバルクイナ」の首謀者となる、深川さんが歌い出す曲を、最後に紹介しておきます。

関門海峡のクライマックスシーンでも歌われ、物語の流れに関わる、とても重要で、とても印象的な歌で、以前にも何度か聴いたことがあったのだけど、曲名が分からず、帰って調べてもなかなか見つかりませんでした。

「MR. カミナリ」のテーマソングと言ってもいい、この歌の名前が、ようやく、昨日判明したので、曲を聴けるYouTubeサイトと共に、載せておきます。

1963年、フィラデルフィア出身のボーカルグループ「The Tymes」が歌った「So much in love」です。

「So much in love」sung by The Tymes

この歌は数々のシンガーによってカバーされていて、1982年、Timothy B. Schmitの甘い歌声によるカバーは、日本でCMソングに採用されたこともあって、知っている方も多いんじゃないでしょうか。

「So much in love」sung by Timothy B. Schmit

また、山下達郎さんもカバーしていて、これもグッときます。

「So much in love」sung by 山下達郎



歌って、いいですね、本当に(笑)。


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# 記事中の青字部分は、テレビ番組、公式サイト、書籍、歌の歌詞などに、掲載されたものを、そのまま抜粋引用したことを表しています

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