折にふれて

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コスモス寺から

2018-10-04 | 大和路点描

前回に引き続き、奈良の般若寺から。

もう何度も奈良を訪れていて、

折々の様子を、当ブログでも「大和路点描」と題したカテゴリーで紹介している。

それにもかかわらず、実は般若寺を訪れるのは初めて。

「まずはコスモスの時期に...」との思いが強かったせいか、

その時期にタイミングが合わず、通りの案内標識が気になりながらも、

これまでは素通りとなっていた。

そして今回ようやく、折しも秋晴れの朝という絶好の機会に訪れることができた。

そこには満開のコスモスが咲き誇って...

いたはずだったが。


Sony α99  Planar 50㎜ (f/5.6 , 1/500sec , ISO100) 

実は、前回の記事でも、その間抜けな所業に触れていたのだけれども...、

訪れた時期が早すぎた。

さらには長雨の影響もあって、まだちらほら咲きの状態。

 

残念といえば残念なのだが。

それでも...。


Sony α99  Planar 50㎜ (f/2 , 1/2500sec , ISO100)

境内一面、腰の高さほどに生茂るコスモスの葉の鮮やかな緑を背景や前ボケに使えば、

それはそれで、建造物や石仏などの被写体がなんとなく引き立つのでは...。

そう気を摂りなおして、境内のあちこちを歩いてみることにした。


Sony α99  Planar 50㎜ (f/2 , 1/3200sec , ISO100)

 

しかし、そう自分に言い聞かせたものの、

般若寺の別名は「コスモス寺」、それに、花がまったく咲いていないわけでもない。

せめて、多少の花でも、この時期に訪れたという痕跡を残せないものか。

そう、足掻いた結果が...。

       
              Sony α99  Planar 50㎜ (f/3.5 , 1/1600sec , ISO100)

       やっぱり、わざとらしい出来である(苦笑)

 

そんなこんなで悪戦苦闘(?)した般若寺顛末、やはり国宝の楼門は外せない。

ところが...。

鎌倉時代に建てられただけあって、楼門そのものは格調高いものだったが、

周囲に現代風の住宅が立て込んでいて、どこから眺めても楼門と街並みがうまく調和してくれない。

それで、苦肉の策。


Sony α99  Planar 50㎜ (f/4.5 , 1/800sec , ISO100)


コスモス主題のカットとなった次第だが、これもやっぱり「わざとらしい」感が否めない。

それどころか、せっかくの国宝をぼかして背景にしたこと、

般若寺縁の方にすればヒンシュクだったかもしれない。

 

ふと...。

楼門近く、足元を見ると、ほんの小さな石塔が立っていて、平重衡の供養塔と記されていた。

平重衡といえば南都焼き討ちの大罪人。

その重衡の供養塔がなぜここに?

供養塔の謂れによると。

京から進軍した重衡方の兵が、ここ般若寺で放った火が瞬く間に広がり、南都のほぼ全域を焼き尽くしたとある。

東大寺や興福寺も焼け落ちているが、般若寺からは3,4キロもあるはずだから、

その業火のすさまじさを窺い知ることができるというもの。

一の谷の合戦後、源氏に捕縛された重衡は木津川の河原で斬首され、首は般若寺の門前に晒されたとある。

それ以上のことは記されていないが、

重衡による「穢れ」 や「たたり」を恐れた誰かがこの供養塔を建てたのかもしれない。

 

さて、「コスモス寺から」などとずいぶんと思わせぶりなタイトルをつけながら、 

その実、なんとも中途半端な見聞録となったが、 

般若寺のホームページで拝見するに、コスモスが咲き誇る境内の華やかさは圧巻。

興味を持たれた方はぜひご来訪の上、ご堪能あれ。


澄んだ秋空にどこからともなく吹いてくる心地よい風。

可憐なコスモスの花がその風に飛ばされまいとふんばっている。

そんな風景を眺めながら、ふと聴きたくなったのが、

ダイアナ・ロスのやさしくも力強い歌声。

 

 「恋のプレリュード」  Diana Ross - When You Tell Me That You Love Me

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