東京そぞろ歩きが続き、今回は「味処」編。
東京での食事は大衆的な老舗が多い。
また行動範囲が限られているので、偏った店に重ねて訪れることが自然と多くなる。
その中で勝手に常連と思っている店をいくつかあげるなら、
浅草、デンキブランの「神谷バー」、神田の老舗、蕎麦の「まつや」、
そして銀座ならここ「ライオンビアホール」である。
いわゆる「銀座ライオン」は東京の主要繁華街はもちろん、
空港や駅、そして全国各地に出店している。
何か事情があって撤退したのかもしれないが、
かつては金沢にも2店舗の銀座ライオンがあった。
全国の銀座ライオン、その数170店舗とのことだが、
銀座7丁目中央通り沿いにあるこのライオンビアホールだけはまったくの別格と思っている。
その歴史は大正7年(1918年)に遡る。
「銀座ビアホール」として開店したものの、関東大震災でいったんは焼失。
昭和9年(1934年)に再建され現在に至っているというから、写真中に見えるように今年で83年。
日本に現存する最古のビアホールとして今も老若男女多くのファンに愛されている。
さて、そんなライオンビアホールでのオススメを独断的にご紹介。
まずは、エビス スタウト クリーミートップ。
コクとうまみ、そしてクリーミーな泡はスタウトビールの代名詞、ギネスにもけっして劣らない。
「黒ビールは苦手」という方にもぜひお勧めしたい。
そして食べ物なら、フィッシュ&チップス。
白身魚のフライにフライドポテトが添えてある。
本場イギリスと違って日本人好みにカラっと揚げてあり、
さらにタルタルソースがついているのがうれしいが、
そこはやはりイギリス風にビネガーをふって頬ばりたいところ。
ただし、調子に乗ってビネガーをふんだんに振りかけると
あたり一面に、あのツンとくる匂いが充満し、隣近所迷惑となるのでご注意を。
さて、ライオンの料理は種類が豊富。
ソーセージなどドイツを思わせるものもあればピザやガーリックトーストなどイタリアンも。
さらには焼きそばや枝豆など多国籍だが、総じていうならオールドファンが懐かしがる「洋食」ということだろう。
その中でちょっとハマっているのが...
「炒めスパゲティ ナポリタン」。
「炒め」という語感にソースが焦げた匂い、
さらに、いかにも日本風アレンジという目玉焼きが「洋食」をこよなく愛するシニアの食欲中枢を直撃する。
休日の昼下がり、とうに昼食時間は過ぎているのにこの賑わい。
新鮮なビールに懐かしくおいしい料理。
それぞれのテーブルで上がる歓声にてきぱきと動くホールスタッフたち。
その好循環が長い歴史を支えてきたのだと思った。
ライオンビアホールの雰囲気から思いついた曲がある。
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線。
ラジオ放送から流れ、敵味方問わず愛された曲が「リリー・マルレーン」であった。
それぞれの国の言葉で歌詞がつけられ、
それぞれの国の好みに合わせて編曲された数多くの「リリー・マルレーン」が生まれたが、
中でもオリジナル的存在といえるのがドイツの歌手ララ・アンデルセンが歌う勇壮な「リリー・マルレーン」だった。
LALE ANDERSEN, "Lili Marleen" (1938).