『腰痛で足が痺れます。』と患者さんが見えられました。お話を伺うと病院で腰椎の癒着があると診断されたそうです。
病院では痛み止めと湿布が処方されたそうですが、外科的な措置は難しい様です。
触診すると足の親指と小指の痺れ、足関節前面と下腿前面の前脛骨筋の痛みが強く出ているようです。
経穴で考えれば太衝・俠谿・解谿・条口・足三里に該当する付近です。
ここで反応が強い部分を整理してみると
①太衝は足の厥陰肝経の原穴で前脛骨動脈幹が弓状動脈を形成する分岐部に当たります。
太衝部分の筋肉は第一背側骨間筋で運動神経は外側足底神経、知覚神経は深腓骨神経です。
②俠谿は足の少陽胆経に属し筋肉は第四背側骨間筋で運動神経は外側足底神経(内側足底神経)、知覚神経は浅腓骨神経です。
③解谿は足の陽明胃経の経火穴で筋肉は前脛骨筋腱・長母指伸筋腱・長指伸筋腱で運動神経は深腓骨神経、知覚神経は浅腓骨神経で血管は前脛骨動脈です。
④条口は足の陽明胃経に属し筋肉は前脛骨筋で運動神経は深腓骨神経、知覚神経は外側腓腹神経で血管は前脛骨動脈です。
⑤足三里は足の陽明胃経の合土穴で筋肉は前脛骨筋で運動神経は深腓骨神経、知覚神経は外側腓腹神経で血管は前脛骨動脈です。
痛みが強いのはいずれも坐骨神経の走行ライン上の様です。坐骨神経の走行は、腰仙骨神経叢を出た後、梨状筋の前面を通り大坐骨孔を通り大胆後面を下降し膝窩の上方で総腓骨神経と脛骨神経に分かれさらに脛骨神経は踝の付近で足底神経に分枝します。
伏臥位で背部を軽擦すると腰部の脊椎に数か所突出している部分が観察され腰神経叢にトラブルが考えられます。*腰神経叢は第12胸神経~第4腰神経の前枝から構成されています。
また肩部は筋肉が固まっていて脊柱起立筋が頸から腰までが厚く固くなり、両方の臀部の筋肉が固く小野寺臀部点に著明な圧痛があり下腿も筋肉の緊張と圧痛が認められました。
痛む場所は坐骨神経の走行ラインと合致している様であり、足の痺れも坐骨神経の症状の様に思えます。
当院では「経絡治療」が確立される前の古流の鍼灸術である「澤田流鍼灸術」と「経絡治療」とを併せて使用して治療しています。
今回は先ず「腎虚証」で証を立て虚している「腎の気」を補い、その後に澤田流鍼灸術を使い肩部と腰部と下腿の凝りを緩め腰陽関と仙骨周りを箱灸で温めた後に脊椎の腰神経叢部分にビワの葉灸を行いました。
背面で治療を終えて、今度は仰臥位で治療、両足の太衝・俠谿・解谿・条口・足三里に鍼と灸をして最後に貼る鍼をして経絡の流れを調えました。
患者さんは治療を終えて『腰の痛みが全然違います、足の痺れが無くなりました。』と喜んでお帰りになりました。