勉は、自分に叱咤を科していた。叱咤が自分を成長させ、能力を向上させると思っていたからだ。自分を卑下し、駄目だと思うことが向上心に繋がり、向上への方法だと思っていた。逆に褒めてしまえば遊んでしまって、褒めたことから安心してしまい、できるから良いと思い、何もしないと思っていた。
これは間違っていた。勉は褒めても褒めなくてもやらないことには変わらなかった。しかし、褒めるからやらないと思い、自分で自分を虐待していた。この虐待が気分的に落ち込んでしまい、鬱状態を誘発していた。彼が自分を虐待しても、激励しても差はないんだと分かるには数十年を要した。今では、例え結果が悪くても、最初にしては良いとか、これだけできて良いとか、ポイントは抑えているとか、自分なりに良い部分を見つけ、自分で自分を激励することにした。
不思議なことに、自分を虐待しているときよりも、対象が楽しくなり面白く感じ、返ってやる量が増えた。しかも、虐待時よりも早く成長した。自虐より自賛だ。最も他人に言うときは、自虐で良い。自賛していると傲慢な奴だと思われる。