1999年に起きた米コロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件をモチーフに、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」「小説家を見つけたら」のガス・ヴァン・サント監督が、事件が勃発するまでの高校生たちの一日を淡々と描いた青春ドラマ。
同事件をテーマにした映画といえば、マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」が挙げられるし、こちらの方が有名かもしれないが、二つの作品を見比べると、同じ事件に対する切り口が全然違っている。「ボウリング・フォー・コロンバイン」が、アメリカの銃社会という視点から、この事件を描いているのに対し、「エレファント」の方は、ほとんどその原因について述べられることはない。ただ、映画の中で、ヒトラーのテレビ画像や、いじめの話や、銃で人を撃ち殺すゲームや、銃をネットで購入したりするといった映像が映し出されるだけである。
映画は、多くの部分が、普通の高校生の日常を淡々と撮ったシーンで占められている。被害者も犯人も全く違いなく普通の生活を送っている様子が流されていく。そして、最後に銃乱射事件が起こるのだが、それでも最初は何が起こったのかわからないほど淡々とした映像なのだ。しばらくして、状況がわかってくると、すごい恐怖に襲われる。普通の日常が、思っても見なかった非日常に切り取られていく恐怖。最初から最後まで自分の主観を挟まず、全編客観的な視点のカメラでこの映画を撮った監督の狙いはそこにあるのかもしれない。