いせ九条の会

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額賀防衛庁長官の発言を考える/山崎孝

2006-09-09 | ご投稿
9月5日、額賀防衛庁長官は都内での講演で、集団的自衛権の行使について「(自衛隊による)国際平和協力活動を推進していく上で必ず重なり合う部分が出てくる」と指摘。その上で、「最終的には憲法(を改定する中)で明確にするのが望ましいが、現実的に何か起きたときに憲法を守って国がつぶれるようなことがあってはならない」と述べ、自衛隊の海外派兵推進のために解釈変更による早期容認を目指すべきだとの考えを示したことは既に紹介しています。

 自民党総裁選では、麻生太郎外相も解釈変更による集団的自衛権行使の容認を、谷垣禎一財務相は改憲による容認を主張しています。

集団的自衛権の行使について、額賀防衛庁長官「国際平和協力活動を推進していく上で必ず重なり合う部分が出てくる」」と述べたことを考えてみます。イラクに派遣した自衛隊の活動を「国際平和協力活動」と、捉えた場合「重なり合う部分」が出てくると考えられます。

憲法の規定を無視できず、イラクの非戦闘地域という地域に派遣しましたが、反米武装勢力に攻撃される可能性が高いために、重武装をして出かけました。能動的には武力を使用できないためにサマワでは英軍や豪州軍が治安維持に当たっていました。しかし、英軍や豪州軍が攻撃されても、自衛隊は武力行使で支援はできませんでした。(サマワに駐留した自衛隊は攻撃を避ける意味もあって、道路補修・学校補修、水道補修などの事業をイラク人に通常より高い経費を払って下請けさせていました。その件数は130件以上あったと報道されています)

正真正銘の国連平和維持活動の場合は、紛争当事者間の戦闘行動が終息してからが原則です。Aという国がBと言う国を大規模に侵略しない限り国連は武力介入はしません。そして国連治安維持活動で武力衝突が不完全で、武力衝突で武力行使が避けられない状況が予想される場合は、日本は輸送・通信・補修など後方支援を選ぶことが出来ます。

国連レバノン暫定駐留軍に参加するドイツは、再びイスラエル人に銃口を向けることを避けるために、イスラエル軍が居るレバノン南部には派遣せず、海軍を派遣してシリアからの武器密輸の監視を行うことを検討しています。このように工夫すれば武力行使を避けることが出来ます。

日本は現在ゴラン高原で、シリアとイスラエル両軍を対象にした「国連兵力引き離し監視隊」に参加し、輸送・道路補修など後方支援活動を担当しています。「国連兵力引き離し監視隊」は1千名強の規模の国際部隊ですが、1974年6月から2006年1月末まで、敵対行為による死者は7名です。その他病気や事故死などで36名亡くなっています。これを見れば武力行使の事態は少ないと言えます。国連平和維持活動には、どうしても日本に海外での武力行使が絶対的に必要なことではありません。中国は国連レバノン暫定駐留軍には工兵が参加しています。

最近の安保理決議は加盟国の利害や思惑が対立するために、結束を維持することを重点において、武力制裁が行える国連憲章第7章を前提にすることを避ける傾向が出ています。

結局は、集団的自衛権行使は、日米の軍事組織の一体化に伴って、今後の日米同盟にとって必要とされるものです。集団的自衛権行使を明確にした改憲案で纏まるのに時間がかかるために、現行憲法の解釈を変えようと、安倍氏、麻生氏、額賀氏が主張しているのです。これら閣僚たちは憲法の遵守義務を完全に忘れています。

額賀防衛庁長官は「憲法を守って国がつぶれるようなことがあってはならない」と述べましたが、どのような状況を想定して述べたかはわかりません。憲法の最大の考え方は、武力で国際紛争を解決しないです。そのためには粘り強く対立する問題を当事国と話し合い共存する為の一致点を見出すことです。双方が武力に訴えれば大きな損害を蒙ることは明らかです。戦争こそ国を滅ぼしかねないものです。

日本が直接的に攻撃されれば個別的自衛権は発動でき、世界でも有数の自衛隊を使うことが出来ます。他国の戦場で同盟国の軍隊を支援する集団的自衛権が行使できなくても、国が滅びる道理がありません。他国の戦場で米軍を支援したり、日本が在日米軍が他国を攻撃する発進基地となれば、日本が攻撃される可能性は生まれます。

軍事超大国の米国が自国の領土に侵攻しない限り反撃しないでしょう。米国の政策がある国を追い詰めて窮鼠猫を噛む事態が起こらない限り先制攻撃はしません。この先制攻撃は自殺に相当します。

一定の知識を持った国民は額賀氏の言葉の欺瞞性を見抜けます。国民を馬鹿にした発言です。