いせ九条の会

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改憲に反対する概括的な私の意見/山崎孝

2006-09-27 | ご投稿
今まで私が述べてきたことをまじえておおまかに再度の意見をのべてみます。

日本は敗戦の時点で、本土に兵士が4百万人以上、本土以外に3百万人以上いました。海外での戦死者は日中戦争が拡大する1937年以降からでも2百万人以上出しました。アジアの人たちに2千万人を超える犠牲者を出す侵略戦争を起こしてしまいました。

この歴史を背景に日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こらないようにする、と決意を記しました。そして憲法の決意を政府が守るように、海外では武力行使をしてはならないと定めました。この定めによって、戦後61年間、日本は戦争で人を殺すことも殺されることもなく、明治からの戦争が続いた歴史を一変させました。

この憲法の決めごとは、2006年1月18日の日米防衛首脳会談で役に立ちました。米国からイラクの治安維持活動に自衛隊が参加をしてほしいと言われましたが、日本は「現行法では困難」と断ることが出来ました。英国は国連事務総長から国際法違反と言われたイラク戦争に参戦し、イラク占領後は、反米武装勢力との戦闘や治安維持活動で103人以上もの戦死者を出しています。

現在の自衛隊の海外活動は、米空軍の公式ホームページ6月28日付に「航空自衛隊は初めて、積極的に戦闘地域へ配備される」と書かれ、また防衛庁関係者が「空港という点と飛行経路という線だけを『非戦闘地域』とするのはフィクションだ」と考える状況にまでになったイラクバクダッド空港などで米軍の支援を行っています。これはイラク特別措置法と憲法に違反しています。

改憲を支持する人たちの中には、憲法に自衛隊の存在を明記したいと考える人たちもいますが、内閣法制局は日本が直接的な形で攻撃を受けた場合は、個別的自衛権は行使できるとして、自衛隊の存在を認めています。ただし、日本の領海外での武力行使や日本が攻められていないのに同盟軍を戦闘行動で支援する集団的自衛権行使は認めていません。

2005年10月に公表された「自民党新憲法草案」は、現行憲法の第9条第1項「戦争放棄」の条項は残していますが、第2項で戦争放棄の精神とはかけ離れた「自衛軍」という軍隊を持ち、海外での武力行使が出来るとなっています。

 世界の流れは、ヨーロッパはかつて戦争を何度もした国同士がもう戦争はしないとして、多国間による安全保障体制の欧州連合(EU)が出来ています。アジアでは厳しく対立していた米国とロシア・米国と中国・中国と韓国が合同協議を行う6カ国協議で東アジアの平和と安定を図ろうとしています。北朝鮮のミサイル発射後もこの枠組みを維持する努力を重ねています。なぜなら、この協議で北朝鮮は、米国が安全を保障するなら、軍事的核の放棄を行うと約束しているからです。2005年12月には東アジア首脳会議で、東アジア共同体構想も話し合われています。

これら多国間による安全保障体制の確立を図ろうとする動きは、憲法を変えて日本が軍事的双務の責務を負ってまで、日米軍事同盟を強化していく方向とは違います。

しかし、安倍晋三氏は、集団的自衛権行使を「数量的概念」にして行使する範囲を限定、解釈改憲で集団的自衛権の行使を可能にする。解釈改憲よりも集団的自衛権行使の範囲を拡大した改憲は5年を目途に行いたいという意向を示しております。

首相に就任したときの記者会見でも、解釈改憲による集団的自衛権行使については、日米同盟の双務性を高めることが重要、日米同盟は「外交・安全保障の基盤」と述べています。

2006年6月、日米首脳会議で合意した共同文書「新世紀の日米同盟」には、「共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成する」とうたっています。その共通の価値観に、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進を挙げています。しかし、共通の価値観の推進を実践した結果は大きな挫折をしています。

2006年9月に出した国連イラク支援派遣団の報告書は、イラク中央政府が「法に基づく統治」に向けた努力をしているにもかかわらず事態が悪化していると指摘。市場、モスク(イスラム教礼拝所)、巡礼者に対するテロ攻撃が頻発し、宗派抗争や報復攻撃が続いていると強調。民兵集団や組織犯罪が増大し、市民が無差別に殺りくされているとしています。

2006年年9月、アナン国連事務総長は、「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっていると指摘。アナン氏は安保理に提出した報告書でも「イラクはいま、世界で最も暴力の激しい地域だ」「暴力が続けば、国の分裂の危険、内戦の可能性さえある」と厳しく警告しています。

このように武力よる日米共通の価値観の推進という大義は、米国の言動によって崩壊に瀕しています。従って日本が軍事的な双務の責任を負い、そのために集団的自衛権行使を必要とする根拠もまた失っています。

私は、戦争をしない平和な国で暮らし続けるために、憲法を守り生かしたいと考えています。