いせ九条の会

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「新世紀の日米同盟」が根拠とした大義の崩壊/山崎孝

2006-09-25 | ご投稿
【イラク人死者6600人 7―8月 テロ頻発、米軍作戦下で】9月24日「しんぶん赤旗」電子版より

 国連イラク支援派遣団(UNAMI)は二十日、イラクで七―八月の二カ月に六千五百九十九人の民間人が殺され、五―六月の死者を約七百人上回ったとする報告書を発表し、イラク情勢が過去最悪の事態に至っていると警告しました。9・11米同時テロ五周年を前後して、ブッシュ米大統領が繰り返し強調してきた「イラクでの自由と民主主義の成果」は、現実によって否定されています。(居波保夫)

 特に月間としては七月の民間人の死者が三千五百九十人に上り、過去最悪を記録しました。その大部分は首都バグダッドに集中。七月には同市で米軍が「掃討作戦」と称する大規模な軍事作戦を強行していました。

 UNAMIの報告書は、イラク中央政府が「法に基づく統治」に向けた努力をしているにもかかわらず事態が悪化していると指摘。市場、モスク(イスラム教礼拝所)、巡礼者に対するテロ攻撃が頻発し、宗派抗争や報復攻撃が続いていると強調。民兵集団や組織犯罪が増大し、市民が無差別に殺りくされているとしています。

 ひどい拷問の跡のある遺体や処刑されたとみられる遺体が全国各地で何百と発見されていると述べています。その対象は軍・治安部隊要員のほか、判事や弁護士、ジャーナリストや出版関係者に及んでいます。

 特に女性の場合、社会進出はおろか、自由な外出、保健サービスや教育を受けることさえ困難です。治安の悪化に加え、「戦闘的集団」の不寛容さによって女性の権利がますます制限されていると報告書は指摘しています。

 報告書はさらに、米国主導の多国籍軍が過度の武力行使に出ており、市民の移動を制限している事例がいくつも聞かれると明記。また、イラク司法機関の能力不足もあって、何千人もの被拘束者が既存の法の枠外で拘束され続けていることにも注意を喚起しています。

 ブッシュ大統領は十九日の国連総会での演説で、「イラクは国民の願望を体現する民主的政府を持つに至った」とイラク戦争・占領の成果を改めて誇示し、「イラクで民主主義が成功を収めるよう援助し、イスラム世界の希望のかがり火にしたい」と述べました。

 しかし、その直前に演壇に立ったアナン国連事務総長は、「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっていると指摘し、暗にブッシュ政権を批判しました。同氏は十一日に安保理に提出した報告書でも「イラクはいま、世界で最も暴力の激しい地域だ」「暴力が続けば、国の分裂の危険、内戦の可能性さえある」と厳しく警告しています。

★国連イラク支援派遣団(UNAMI)イラクで人道復興支援活動を実施する国連の各組織を統合する機関として、二〇〇三年八月十四日採択の安保理決議一五〇〇で創設されました。任期は一年。これまで毎年更新され、今日に至っています。復興と人道支援で国連の役割を拡大するものとして期待される一方、米軍主導の占領下で活動が制約されている面もあると指摘されています。(以上)

国連イラク支援派遣団は、《特に月間としては七月の民間人の死者が三千五百九十人に上り、過去最悪を記録しました。その大部分は首都バグダッドに集中。七月には同市で米軍が「掃討作戦」と称する大規模な軍事作戦を強行していました。》と報告しています。現在、バクダッドで米軍の兵士や物資を空輸活動をしている航空自衛隊はこの作戦と関係していないのでしょうか。

国連イラク支援派遣団報告は「戦闘的集団」の不寛容を指摘しています。日本の社会は、猛々しい心の政治家や闘う政治家を目指す指導者の言動に煽られ、寛容の心や宥和の心を失っていく気配を感じます。この気配が強くなると容易に戦争体制は築かれてしまいます。

《ブッシュ大統領は十九日の国連総会での演説で、「イラクは国民の願望を体現する民主的政府を持つに至った」とイラク戦争・占領の成果を改めて誇示し、「イラクで民主主義が成功を収めるよう援助し、イスラム世界の希望のかがり火にしたい」と述べました》しかし、イラクの現状は、戦争を起こすと必然的に消失する人間性や、暴力や武力の応酬で掻き立てられた憎悪心が引き起こす地獄絵です。

2006年6月、日米首脳会議で合意した共同文書「新世紀の日米同盟」は、共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成する、とうたっています。その共通の価値観に、自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配の推進を挙げています。

国連イラク支援派遣団の報告書を見れば、この日米共同の価値観のなかの人権=人間の尊厳を守ることや法の支配が根底から崩れていることがわかります。従って「共通の価値観と利益が、地域及び世界における日米協力の基盤を形成」するとした日米協力の根拠や大義は、米国が起こしたイラク戦争とその後の中東における民主化のモデルにしようとしたイラクの占領政策の破綻によってとうに崩壊しているのです。9月19日の国連総会の演説で、アナン国連事務総長は、「基本的人権をないがしろにしたテロとのたたかい」がテロ行為を生み出す結果となっていると指摘したことでも、そのことは明確です。米国の主張する「世界の民主化」に日本が軍事的な双務の責任を負うため集団的自衛権行使を必要とする根拠もまた崩壊しています。

9月24日午後に「志摩九条の会」の発会式がありました。そこに集まった人の中には、広島で原爆投下後の地獄絵を見た人、「満蒙開拓団」に参加していて、敗戦前後に起きた地獄絵を見た人がいました。その方たちは、戦争は二度としてはいけない、そのために「志摩九条の会」に参加して、少しでも力になりたいと話されました。

24日の午前「いせ九条の会」の賛同署名運動に参加して、私は戦争体験者の話をお聞きしました。以前にも賛同署名運動に参加して何人もの方たちから戦争の話をお聞きしています。そして戦争はしてはならないという思いを「いせ九条の会」の賛同署名に込めて下さいました。私は戦争体験者の話を聞くと何かしら粛然とした気持ちになります。

周知のように、日本国憲法前文は、戦争を体験した幾百万の日本人の思いが込められて、再び政府の行為によって戦争の惨禍を起こさないように決意をしています。この憲法を守り生かさなければと改めて思います。