いせ九条の会

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民衆に犠牲を強いるのは北朝鮮ばかりではない/山崎孝

2006-10-24 | ご投稿
【韓国政府高官:核保有論議発言を懸念 日本人記者団と会見】毎日新聞10月23日付け電子版

【ソウル中澤雄大】韓国の柳明桓(ユミョンファン)外交通商省第1次官は23日、毎日新聞など日本人記者団と会見し、自民党の中川昭一政調会長や麻生太郎外相らが核保有論議を提起していることについて「韓国内でも大きく反響を呼んでいる。日本が核武装すれば、北東アジアの平和的構図が崩れる」と述べ、懸念を表明した。

日本独自の対北朝鮮制裁措置については「歯が鋭すぎて相手を殺してしまってはならない。(北朝鮮が)戻る橋を残しておかなければならない」と指摘。金剛山観光事業など一連の「包容政策」に関しては「北朝鮮が国際社会の一員となるための現実的、合理的対策との確信に全く揺らぎはない」と述べ、基本的に維持する考えを強調した。(以上)

10月23日付けの朝日新聞に、金剛山観光に同行した朝日新聞記者の記事があります。《》のところが記事の抜粋部分です。

北朝鮮の案内人が核実験を《「我々はもう弱い民族ではなく、米国も手をつけられない強くなった。将軍様がいないと今日のような強い民族にはなれなかった」と語った》。北朝鮮の案内人は公式的な意見を述べています。「米国も手をつけられない強くなった」という言葉から、核実験が米国への対抗措置であったことを物語っています。

《一方で韓国人の観光客たちに緊張感は感じられなかった。ツアーの目玉は山歩き。山々の頂上付近はすでに紅葉で燃えていた。登山道に入ると、売店で手に入れた北朝鮮産の「マッコリ」(どぶろく)で、紅葉を眺めながら即席の酒盛りを始める観光客も見られた。登山をせず、北朝鮮側の職員と座って話し込んだり、道中で北朝鮮兵士に手を振ったりする参加者の姿もあった。》

記事のこの部分を読むと、核実験という軍事的緊張関係を迎えても、緊張や敵対関係ばかりではなく、民衆同士には融和的関係を保ち続けることが出来るのは、同じ民族の絆の強さでしょうか。それとやはり韓国政府の宥和政策があるからだと思います。

日本政府は「歯が鋭すぎて相手を殺してしまってはならない。(北朝鮮が)戻る橋を残しておかなければならない」という韓国の指摘が報道されていますが、日本政府は制裁を強めています。更に北朝鮮の核実験を利用して、自民党の政治家たちは、日本の集団的自衛権行使や核武装論の議論を唱え、軍事化路線の方向に国民を誘導しようとしています。

朝日新聞の記事は、今年7月の水害を受けて北朝鮮の国民の必要とする15%(約80万トン)の穀物が不足すると述べた後《ツアーに参加した中年の韓国人男性が、灰色にくすんだ村の姿を見てつぶやいた。「食べるものがない北が核実験をするとは、どういうことだろう」》と伝えています。

韓国人観光客は北朝鮮政府の政治姿勢に疑問を投げかけています。しかし、この民衆のことを考えない政治姿勢は、その国のおかれた国力の状況により露出した程度の差はありますが、北朝鮮政府だけの姿勢ではありません。

米国の新自由経済主義と軍産複合体制による軍事政策の民衆への矛盾は、ハリケーン「カトリーナ」で大きく露呈しました。財力のある階層の人たちは逃げて助かり、貧困層の多くの人が逃げられず犠牲になりました。州兵は本来、災害活動が任務のひとつとなっていましたが、イラク戦争に派遣されていたために救助活動は手薄になりました。軍事費との関係で政府は堤防の改修も後回しにしていました。イラク戦争による犠牲がどの階層に多く出ているかもわかりました。AP通信によれば、米兵の戦死者のうち、34%が貧困層の出身者で、極めて高い所得を得ている世帯の戦死者は17%と指摘されています。

日本政府は財政再建を理由に、財力の弱い階層に負担を増大させながら、バブル期より利益を上げている大企業には法人税を上げず財政再建を負担させません。そして、世界のどの地域の有事にも即応させる目的の米軍再編での日本側負担は、米国の要求のほとんどを受け入れています。専守防衛では必要のない空中空輸機を増やし空中空輸部隊を創設、高性能の大型輸送機や高速輸送艦の導入などを行います。

現在の日本は、平和主義の日本国憲法を守り、生かすことが大切となっています。