いせ九条の会

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北朝鮮の核実験と集団的自衛権行使の論議を再考/山崎孝

2006-10-18 | ご投稿
すでに紹介していますが、10月11日の国会論議は、枡添要一氏は、北朝鮮の核実験を絡ませて、米軍が北朝鮮の船を臨検中に発砲されても、側にいる自衛隊は何も出来ませんというのか発言しました。久間防衛庁長官は、北朝鮮の核実験とまったく関係のない想定の、自衛隊機が他国の空中給油機に給油を受けている時、給油機を狙ってきた。自衛隊機は攻撃機を撃墜させてはいけないのか、できるのではないか。安倍首相は、公海上で米軍艦が攻撃された場合や、イラクで英豪軍が攻撃された場合の例を挙げて、集団的自衛権行使の必要性の論議を行いました。

日本が国連決議に伴い米軍の船舶検査の後方支援を行うには、周辺事態ということでなければなりません。周辺事態法の適用は、日本周辺で戦火が上がっているような有事、戦争が前提です。政府は強引に周辺事態法を適用させようとしていますが、与党の公明党の斉藤鉄夫政調会長も「『周辺事態』にあたるというのは拡大解釈すぎる」と述べています。野党も周辺事態とは言えないという見解です。

枡添要一氏の発言は、法的には米軍の後方支援が出来ませんから、米軍の側に自衛隊がいるという設定はできません。わざと事を荒立てようとしている本音が伺えます。国連決議は各国の国内法に従って、船舶の臨検を行うことになっています。日本が行うとすれば強制力のない船舶検査です。

国連は北朝鮮に対する制裁が北朝鮮との軍事紛争、そして戦争に発展しないように安保理決議は軍事制裁を排除しました。

見落としてならないことは、日本の集団的自衛権行使の問題は、以前からの米軍への軍事支援レベルアップの話の中から出て来ていると言うことです。米国の高官からは、アフガン戦争では「旗を見せろ」、イラク戦争では「グランドからおりてきてチームに加われ」と要求されました。これが集団的自衛権行使の問題の本質です。

北朝鮮の核実験が起こり浮上した問題でないことを私たちはよく知っています。国民はこの経緯を理解して、北朝鮮問題に乗じた政府の軍事志向、集団的自衛権行使が必要だとの主張に誘導されてはなりません。

幾つもの先制攻撃を行う米軍は、11日の国会論議のようにいつも受身の場合であるとは限りません。集団的自衛権行使の権利を自民党政府に与えれば、先制攻撃をした米軍を自衛隊が武力行使で助けることを十分想定しなければなりません。

追伸 久間防衛庁長官は10月17日の衆院安全保障委員会で、海上自衛隊が補給している米艦船が攻撃された場合について、「(自衛隊が)自分が攻撃されたとみなして反撃するのが自然だ。『自分が攻撃されていないから知らない』ということが、現実に選択できるのか」とのべて個別的自衛権の範囲で認められるとの考えを示しました。また、「集団的自衛権と個別的自衛権と二つに峻別しているが、そうはっきりわけられるのか」とも述べたと報道されています。

日本は自衛隊の海外での活動は「非戦闘地域」と限定し、戦闘行動に巻き込まれないようにしてきています。久間氏が想定した事態は「非戦闘地域」でない可能性もあります。北朝鮮の船舶検査を行う米艦船に補給していてこのような事態が起こることが予想されるのであれば、このような後方支援活動は行わないようにすれば良いのです。日本は他の分野で北朝鮮制裁の国際協力行動はしていますから、米国はともかくとして国際社会から非難はされないと思います。安保理決議は各国の法律に従って船舶検査は行えばよいとしています。

集団的自衛権行使と個別的自衛権行使と峻別は、他国の攻撃が日本の領域か領域外かで峻別は出来ます。

日本国憲法は国際紛争を武力で解決してはならないとしていますから、政府は守らなければなりません。