FPの家で暮らす

ストレスフリーなFPの家で ひとり暮らし満喫

心温まる『おみおくりの作法』

2016-03-31 15:16:01 | 本・映画・音楽の感想

主人公はロンドンの公務員。孤独死した人の身辺整理をする民生係だ。
身寄りを探し、見つからなかったり、引き取られなかったりした場合には
葬儀の手配もする。冒頭、彼と牧師しか参列者のいないそうした人々の葬儀が
短く次々に流れる。

けれど、彼の丁寧な仕事ぶりは経費がかかりすぎるとして、
合理的に数をこなす隣地区の事務所に統合されることになり、
彼自身は解雇を言い渡されてしまう。そして、ちょうどその直前に
入ったケースを最後の仕事として扱うことになる。

しかし、この孤独死した人物は愛すべき人物ではなかったようだ。
かつての妻や娘、戦友、ホームレス仲間、だれをたずねていっても、
その死に特に感慨を持たないし、葬儀にも出ないと言う。

主人公は感情を表に出さず、淡々と仕事をこなしていく。
だが、彼がこれまでに見送った人々の写真をアルバムに
ていねいに貼り付け、それをを眺め返すようすや
さまざまな小さなエピソードから、彼が単に仕事として
形式的に葬儀を手配しているわけではないことがわかる。

そのうえ、この最後の仕事に彼は、仕事としては
ありえないほどのものを最終的につぎ込む。
見も知らぬ、誰からも惜しまれない男のために。

映画は最後までほんとうに静かに進んでいく。
そんななかで、小さなふれあいが生まれ、
幸せな予感に包まれたとき、唐突に訪れる幕切れ。
皮肉な対比。悲しすぎるすれ違い。
でも、映画のラストにはほんとうに心が温まった。



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