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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (158) 長尾家 71

2024年08月03日 06時20分12秒 | 甲越軍記
 三条の城には長尾山城守、同新七郎討死とはいえどもいまだ照田常陸介、黒田の一族が激しく防戦している
景虎は包囲の各陣ごとに隊を作らせて、その夜、近郷の竹やぶに派遣して竹を切って束ね三尺一束として大量に作らせた
朝には、この竹束を前にして鬨を挙げて攻め寄せた。
城中からは、これをめがけて雨あられの如く、鉄砲を放つが竹束を貫通せず、次第に景虎勢は城に接近した。
頃合いを見て、距離を測れば竹束のすぐ後ろから、一斉に城めがけて火矢をおびただしく飛ばせば、塀下の仮屋七か所から火の手が上がり、折節北風なれば一同に燃え上がり、煙が城中にまくりたち炎は天にそびえたつ
城内は大騒ぎになり、火を防げば敵は乗り入れて攻めかかる、敵を迎え打てば後ろから火の手がせまり背を焼く
火勢は風に巻きあげられてますます燃え広がり、その隙を見て新発田尾張、本庄弥二郎、加地安芸、色部修理亮、竹俣三河の軍勢は早、門を打ち破り塀を乗り越えて三の丸、二の丸に攻めあがる
城兵はもはやわが身を救うだけで精一杯となり、親も子も互いを救う暇もなく討たれていくもの多し
景虎勢は落ち行く城兵を後ろから追い詰めて討ち取っていく

古志駿河、新津彦二郎らの軍勢も老若男女の別なく、片端から手当たり次第に討ち取っていくと、そこに黒田の勇将、松田長門守現れて、今は三条の城もこれまでと覚えければ従兵三十余人と共に古志駿河守の三百余騎の中にまっしぐらに切って入る
前後左右に切り伏せて勇を振るって戦えば、古志の軍勢切り立てられて四方にどっと引く、松田勢は勢い増してその足で新津勢の中に討って懸かる、新津勢これにあたって討たれるもの数知れず
松田長門、味方を振り返ってみれば生き残りし従兵は僅か八騎である、ここに今はこれまでなり、ここで討死するよりも生きて再び事を謀るべしと袖印を投げ捨てて落ち行く。

三の丸、二の丸も落ちて残る本丸に照田常陸介、黒田の一族「今はこれまで」と妻子を刺し殺し、思い思いに自害する
そんな中にも長尾平蔵相景はむなしく自害するよりも敵を死出の道連れとしようと二十余人の甲兵を率いて、古志勢の中に切りかかる
平蔵は当たるを幸いに敵を前後左右に突き伏せて、あたかも羊の群れを襲う猛虎の如き働きで四、五十騎をたちまち突き倒す
新津勢は古志を助けんと、槍衾を作って突きかかれば、長尾の従兵は次々と討たれて一人平蔵は敵の中を狂いまわる様に戦う
新津勢を倒すこと二十余騎、その身もまた数か所の傷を負い、城中に引き戻りわが陣屋を見れば、炎に包まれる中を妻子は慌てふためいて叫んでいた
平蔵は近づいて心強く、妻子の首を刎ねて死骸を火中に葬り、自らも火の中に飛び込みわが首を切り落とし、焼け失せる
哀れなるかな長尾平蔵相景三十五歳、その妻二十二歳、男子五歳、同じ火の中の煙と消え失せる

三条の城は陥落し、戦が止むと景虎は火を消火させて両日この城にて人馬を休ませた。

(yottin この三条は朝ドラ「虎に翼」の寅子が赴任している新潟県三条である、中世にはこんな歴史があったのだ)


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