小篠弘子先生とイトキン㈱との提携時の辻村名誉会長の言葉も印象に残った言葉でした。
ご縁があって提携をすることになったのですが、その頃はヨーロッパブランドのライセンス契約が主で、国内のデザイナーとの提携は初めてでした。
それまで小篠弘子先生はオートクチュール中心で活動されており、プレタポルテの提携は過去数社行なっておられましたが、余りいい結果が出ていませんでした。
先生がそのことに触れられ「この提携が最後と思って頑張ります」といった意味の話しをされた時に、例のニコヤカに、少しハニカミ気味に話された言葉です。
「私は画商のような者です。画家を育てる事が画商の仕事ですから」
その言葉を聞いて、担当者の私は日本のデザイナーとの提携は初めてで、どのようにプロデュースしたら良いか、迷っていたのですが、時間を掛けて育てることが出来ました。
初期の頃は、両社の企業文化や風土の違いなどで、少し戸惑うところもありましたが、その言葉がよりどころになった思い出があります。
私はイトキン㈱を退職したましたが、その後のブランドの成功は皆さんご存知のとおりです。
小篠弘子先生は日本の画壇(デザイナー界)の重鎮になられ、画商の目も正しかったと言えます。
欧米のメガブランドの企業買収、世界戦略や日本のM&A、TOBなどの記事が紙上をにぎわしています。
さながら、ササビーのオークションでの絵画の売買を見ているようです。
「画商がジックリ画家を育てる」というようなことは、時代錯誤になってしまったようです。
最近ようやくデザイナー育成の機運が生まれつつありますが、行政や業界主導では無く、デザイナー達の自立型の活動が重要では無いでしょうか?
それを企業側がジックリ育てていく関係が理想なのでしょうが、時代のスピードが許さないのでしょうか?
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