繊研新聞記事雑感

昨日の繊研新聞に岡一郎氏のインタビュー記事が掲載されていました。
台湾の三僑實業股分公司の傘下のショッピングセンター微風広場（ブリーズセンター）で総経理をされている岡一郎氏のインタービュー記事です。

百貨店（日系）優位と言われている台湾マーケットの中でショッピングセンターとして好調に成長を遂げています。
記事の中でも少し書かれていますが、氏は台湾の太平洋そごうの総経理をしておられました。
台湾の百貨店は新光三越百貨店、太平洋そごう、大葉高島屋、大立伊勢丹の合弁系と中興、明曜、統領などの日系百貨店との提携、遠東、大亜などの地場系、香港系の４つに分けられます。
太平洋そごうが遠東グループ傘下入りで少し状況は変化しましたが、日系百貨店の優位は以前変わりません。（破綻後そごうは太平洋に持ち株を全額売却しています）

日本の百貨店の香港、タイ、シンガポール、マレーシアなどの海外戦略は殆んど成功しなかった中で、只一つ成功している国といえます。

その台湾で太平洋そごうの果した役割は大きかったと思えます。
太平洋そごうの開業は１９８７年と記憶しています。
オープンセレモニーの時のそごう水島元社長が行われた北京語での挨拶は、台湾の百貨店の黎明をもたらしたといえましょう。
その後の台湾業界での語り草になっていました。

太平洋そごうは、それまで京王百貨店や東急、阪神が行なっていたライセンス提携では無く、本格的な日本式の百貨店を地熱の湧き出ている台湾（水島元社長の言）に作るという考えが有りました。
合弁先の太平洋はゼネコンで百貨店経営の経験・ノウハウが無く、却って合弁が上手くいったのではないかと思われます。

オープンして数年たったときに総経理としてそごう側から就任しておられた井上哲総経理とお食事をしました。

私が成功の秘訣をお聞きすると、「合弁先の太平洋との信頼関係を構築し、資金や労務、管理面とＭＤ面やセールスプロモーションなどの両社の業務の持分を明確にし、現地のスタッフを育成してローカル化に取り組んでいる」と淡々と話してくれました。
同席していた太平洋側の王副総経理との信頼関係が成功の秘訣と話しておられたことを深く印象に残っています。
（その王副総経理は、以前に來來百貨店の婦人服担当で、私がイトキン時代に担当していたクリスチャンオジャールと言うブランドの不正コピーをした当事者でした⇒余りの奇遇に意気投合し、乾杯が重なり酩酊した思い出があります）
その後ローカル（ナショナル）スタッフが育ち、新規店舗の出店は台湾スタッフが中心に行えるようになりました。

１５年以上の台湾勤務を終えて井上哲総経理は日本に帰任され、そごうの呉と加古川の店長をされていました。
そごうの破綻後しばらくして、太平洋そごうの熱心な招請で、再び総経理として頑張っておられます。
台湾での生活も２０年を超えられたと思います。

井上氏は台湾百貨店業界にも人脈も広く、信望もあり、台湾百貨店の今日の隆盛に大きく貢献された方と私も尊敬しています。

日本の海外事業に見習うべきことが多いと感じます。

微風広場の岡一郎氏は、井上哲氏が日本に帰任された後の太平洋そごうの後任の総経理です。
インタビュー記事にもありましたように、そごうの破綻の時に、当時の部下と３人で太平洋そごうから微風広場に転籍されました。

台湾ではその移籍が大きな話題（問題）になりました。
移籍の時期や手続きについて太平洋そごうと見解の相違があり、太平洋そごうが訴訟をし、微風広場オープン時にもブランドの争奪戦や業者への取引の圧力など両社で混乱があったようです。
納入業者も台湾でのＳＣに懐疑的なことも重なり、開店当時のブランド導入に苦労があったようです。

移籍の時の混乱は、手続き上の法的な問題や異国同士の倫理間の問題であり、また当事者でしか解らない事情もあったようで、コメントしようはありません。
最近ではＭ＆Ａやヘッドハントなど、このような経済戦争は日常茶飯事になりましたが、当時の私には奇異に感じられました。

久し振りに相変らずのエネルギッシュな岡氏のお写真を拝見して、昔のことを思い出しました。
岡一郎氏の海外（台湾）でのご活躍の記事を拝見して、ご両人を存じ上げている私は、井上哲氏とは異なったスタイルと興味を感じました。