先日、ある学会の忘年会に参加した。
日ごろの研究会とは異なり、リラックスした年忘れ会だった。
先生方の服装を何気なく見ていると、ユニクロのTシャツをインナー感覚で着ている方を多く見た。
自然に、話題がユニクロの話しになった。
「安い価格、暖かい機能、カラフルなトレンドカラーでフィット性があり着回しに重宝」など、口々にその良さを賞賛する言葉が出た。
実は、私の当日のインナーウェアーは、Heatテックだった。
ユニクロの一人勝ちが、日本のデフレスパイラルの要因の一つだという説を唱える経済学者が居られるそうだ。
私は「ユニクロの商品は、世間が言うほど安くはない」と思っている。
Heatテックの品質表示を見ると「アクリル41%ポリエステル36%レーヨン20%、ポリウレタン3%」とある。
「マイクロ中空紡績糸、カチオン異型断面糸のアクリル、ポリエステル、レーヨン、ポリウレタン+後加工機能」という原料の中国、ベトナム製の下着と言える。
原料的には取り立てて言うほどのことはない。
百貨店や専門店、量販店のブランドに比べれば激安的な価格ではあるが、
ユニクロの製造原価は驚くほどの安さではないが、消費者の大きな評価を受けている。
これがこれほどまでに高評価を受けるのは、ユニクロならではの秘訣がある。
ユニクロの価格の相対的な安さ、とプロモーション力による魅力の演出だと思っている。
私は常々、ユニクロの勝利の歴史は、「既存の憧れ商品の価格破壊」の歴史だったと考える。
古くは「中国内蒙古のカシミヤセーターの価格破壊」に始まり、「アメリカのポーラテック200のフリースの価格破壊」、「イタリアのゼニアバルファのキャッシュウールセーターの価格破壊」、「日本製(貝原)デニムの価格破壊」等など、手の届きぬくかった“憧れ商品の価格破壊”の勝利の歴史だ。
その秘訣は、正味原価を「20%で割る」か、「25%で割る」、か「35%で割る」かによって価格帯は大きな差が出てくる。
伝えられている『匠』の生産管理力やロジスティックス、イメージ戦略、財務力など成功も多くあるが、価格破壊のもとになっている、原価に対する除算の分母数字の違いだと思えてならない。
分母の数字が大きいほど価格帯は高くなる。
原価を0.2で割るのと0.35で割るのと、数字がどちらが大きくなるかは小学校低学年の問題だ。
私は、次の二つの問題を解き明かすことが重要と考えている。
?分母が大きくなる要因は何か?!
?分母を大きくしても、ソフト、ブランド、サービス力でお客の信頼を得る方法は無いのか?!
百貨店や専門店、量販店の既存の小売業界と既存のアパレル業界が、この二つの矛盾・問題に対して、真剣に取り組くむことが、現在のアパレル業界にとって重要では無いかと考える。
この問題の回答は、単純な除算ではなく、複雑な方程式の解析と見えるかもしれない。
しかしながらアプローチの仕方で、案外単純に解析出来るかも知れないと考えている。
私は、数年前から「アパレルの矛盾」というキーワードでこの問題を提起してきた。
残念ながら、旧態の小売業界やアパレルがこの「矛盾の解析」に対して、正面から取り組んでいるとは思えない。
「ユニクロ、ポイント、しまむら」などの現在の好調企業の共通項は、お客様とベンダー企業、従業員の三者から好(高?)感度を得ていると考えられる。
「三方良し」の古い考え方が新鮮に見えてくる。
一つの方程式の解析に対するアプローチの一つと考えている。
ユニクロ機能シャツについての過去の記事
http://blog.goo.ne.jp/impannatore/m/200806