(224)予期せぬ再会
四百字詰原稿用紙換算9枚
ページ数や内容に縛りのないweb漫画掲載を想定しておりネームがなくても順番にコマが起ちあがるように書いてあります。季節の設定は常に真夏である。
登場人物
校長(55) 165㎝。 白髪混じりの髪。穏やかで紳士然としている。
加藤しほり(45)165㎝。上品でスタイルが良く美人度は中の上。
N=ナレーション
快晴の空の絵にN『土曜日の午前――』
十階建て、1LDKの高級マンションの外観にN『校長宅――』
マンションの部分的な絵にN『妻と死別後、一人住まいには広すぎる一軒家を売り払い徹底的に断捨離を断行して1LDKの賃貸に引っ越した』
尚もマンションの部分的な絵にN『死後の相続のごたごたを避けるために分譲ではなく賃貸にしたのは我ながら賢明だったと思っている』
同、3階にある室内
注、玄関を入って右側にトイレ、浴室(洗面所、洗濯機設置)があり、その廊下の向うは15畳のリビングで右壁際にキッチンが有り。大型テレビ、机、一人用のリクライニング椅子(ストレスレス)、二人用のテーブルがあるのみ。扉の奥の六畳の寝室にはセミダブルのマットレスが直置きしてあるのみで実にスカッとしている。
リビングで校長が机に向かいパソコン作業をしてる後ろ姿にN『ここ数日、校長会に出席するためのレポートに取り組んでいたーー』
「ピンポーン」とチャイムの音に玄関の方に振り向き、
校長(・・・だれだろう・・・?)と呟く。
はっとして椅子から立ち上がり、
校長(しまった!今日は家政婦さんが面接に来る日だったんだ)
校長「はい」と玄関ドアをガチャと開ける。
双方が互いの顔を見て驚く。
注、布のトートバッグを肩に掛けた清楚なしほり、半袖ブラウスに膝丈のタイト気味のスカート、踵の低いパンプスを履いている。
校長「もしかして・・・」
校長「しほりさんじゃ?・・・」
嬉しそうに頷き、
しほり「憶えていて下さいましたか?」N『加藤しほり。45歳。165㎝』
しほり「派遣先の名前を見てまさかと思って来たら嬉しいまさかでしたわ」
校長、その言葉に驚く。
照れを隠すように、
校長「その後、娘さんはお元気でやっておられますか?」
しほり「はい。二年前に結婚して他県に嫁いで行きました」
嬉しそうに感慨深げに何度も頷き、
校長「もうそんな年に成長したんだ、よかったよかった」
校長「まっ、どうぞお入りください」
しほり「はい、お邪魔します」
両膝をついて靴をドア側に向かって揃えるしほりのスカートがまくれて太腿が露わになった絵。
同、リビング
キッチン回りの絵にしほりの声、
「家政婦が必要ってことは・・・?」
テーブルに向かい合って掛け(双方の前に飲み物あり)、
しほり「奥様は入院でもなさってるんですか?」
校長「いえ、妻は三年前に他界し今は一人暮らしなんですよ」
しほり「(驚き)まあ、じゃあ慣れない一人暮らしでご不便なさってるでしょう?・・・」
しほりをうっとり見つめ、
校長(十年前に会った時も美しいと思ったが、今もまったく美貌は衰えてないな・・・)
室内を見回し、
しほり「すっきりして気持ちのいい部屋ですね」
校長「終の棲家だから極力荷物を増やさず小さく暮らす事を心掛けてますので」
しほり「けど2人暮らしの荷物をここまで減らすのには決心がいった事でしょう?・・・」
校長「はい、とりわけ妻の遺品を整理するのには悩み抜きました」
スカートの奥にチラっと下着が見えるのをテーブルの下からの視点で描いた絵のアップに会話、
「ところで・・・もう旦那の件は片付いたんですか?」
「・・・いえ、異常に執念深く独特の勘が働く人だからまだ私を探してる気がしてならないんです・・・」
深刻な顔で腕を組み、
校長「ふむう・・・」
しほり「もし見つかったら娘の家庭もぐちゃぐちゃにされるのは目に見えてるし・・・」
不安を振り払うように、
しほり「考えたら恐ろしくなるから出来るだけ考えないようにはしてるんですが・・・」
校長、不安げなしほりを見て頷く。
《ここから校長の回想》
空の絵に校長のN『あれは私がまだ六年生のクラスを受け持ち教壇に立ってた頃ーー』
○教室内
教員当時(十歳若い)の校長が本を手に授業している。
ふと前列に座ってる陰のある十二才のしほりの娘を見て、
校長(一週間前に転校して来たこの子はずっとおんなじ服を着てるな・・・)
放課後、無人の廊下の絵にN『娘の服装に只ならぬものを感じたので母親を呼んで事情を聞くことにした』
教室内、暗い表情のしほり(質素な服)と校長が向かい合って掛けて話してる絵にN『聞けばDV夫の暴力に堪えきれなくなって実家に逃げたら我慢が足りないと責められて大喧嘩の末に絶縁し』
教室の天井の絵にN『そのまま着の身着のままで他県から逃げて来たという』
暗い表情で、
しほり「もし、あのまま逃げずにいたらきっと殺されてたと思います・・・」という彼女を心配そうに見つめる校長の絵にN『これを聞いて情に厚い校長は即座に行動を起こした』
空の絵にN『まず金を用立ててやり親子が安心して住める家に引っ越しさせた』『そして、しほりが就職するには住民票が必要だが、こちらに移したら居所が旦那にばれてしまうのでそれが一番の難問だった』
尚も空の絵にN『だが校長が何度も役所と談判したお蔭で新しい住民票を作る事ができ、しほりも就職できた』
スーパーの買い物帰りのしほりと娘が楽しそうに話しながら手を繋いでる絵にN『こうして親子の新生活が軌道に乗ったのを確認し、徐々に身を引いていったのであったーー』
《回想終わり。校長宅のリビングに戻る》
頭を下げ、
しほり「なんとか生活できて娘が無事お嫁に行けたのも先生のお蔭です。感謝してもし尽くせません」
しほり「あのとき先生と出会えてなかったら一体どうなっていたか・・・」
校長「いゃあ今日は嬉しい報告が聞けてよかったなあ」と喜んでくれる校長を畏敬の眼差しで見つめ、
しほり(本当に人の心のひだに沁み入ってくるようなところがある方・・・)
しほり「(頬を染め)私・・・」
恥ずかしそうに俯き、
しほり「あのとき女として声を掛けてもらいたくて何度も信号を送ってたんですよ・・・」
校長「えっ・・・?!」
しほり「なのに気づいてもらえなくてがっかりしましたわ・・・」
あっ気にとられ、
校長「けど当時の私には妻がいて・・・」
優しく頷き、
しほり「分かってます、先生が奥様を裏切るような人でない事は」
熱い眼差しで見つめ、
しほり「先生のその誠実さに私は一層惹かれたんです」
あ然とする校長に、
しほり「所で家政婦の面接に来たんですが、私は合格ですか?」
校長「も、もちろんですよ」
校長「貴女に合格なんて言葉を使うのもおこがましい。どうかよろしくお願いします」と頭を下げる。
しほり「掃除の手順とか食事に何か注文はありますか?」
校長「滅相もない、全てお任せします」
校長「ただ、酢の物とか魚を食べさせてもらえたら嬉しいな」
校長「あっ、果物を全然食べないから少しは食べた方がいいですよね?」
慈愛の眼差しで頷き、
しほり「分かりました。お任せ下さいな」
校長「で、いつから来ていただけます?」
しほり「今日からでも」
校長「(顔を輝かせ)えっ!ほんとに・・・?」N『なにやら人生の転機が訪れそうな予感――』
つづく
四百字詰原稿用紙換算9枚
ページ数や内容に縛りのないweb漫画掲載を想定しておりネームがなくても順番にコマが起ちあがるように書いてあります。季節の設定は常に真夏である。
登場人物
校長(55) 165㎝。 白髪混じりの髪。穏やかで紳士然としている。
加藤しほり(45)165㎝。上品でスタイルが良く美人度は中の上。
N=ナレーション
快晴の空の絵にN『土曜日の午前――』
十階建て、1LDKの高級マンションの外観にN『校長宅――』
マンションの部分的な絵にN『妻と死別後、一人住まいには広すぎる一軒家を売り払い徹底的に断捨離を断行して1LDKの賃貸に引っ越した』
尚もマンションの部分的な絵にN『死後の相続のごたごたを避けるために分譲ではなく賃貸にしたのは我ながら賢明だったと思っている』
同、3階にある室内
注、玄関を入って右側にトイレ、浴室(洗面所、洗濯機設置)があり、その廊下の向うは15畳のリビングで右壁際にキッチンが有り。大型テレビ、机、一人用のリクライニング椅子(ストレスレス)、二人用のテーブルがあるのみ。扉の奥の六畳の寝室にはセミダブルのマットレスが直置きしてあるのみで実にスカッとしている。
リビングで校長が机に向かいパソコン作業をしてる後ろ姿にN『ここ数日、校長会に出席するためのレポートに取り組んでいたーー』
「ピンポーン」とチャイムの音に玄関の方に振り向き、
校長(・・・だれだろう・・・?)と呟く。
はっとして椅子から立ち上がり、
校長(しまった!今日は家政婦さんが面接に来る日だったんだ)
校長「はい」と玄関ドアをガチャと開ける。
双方が互いの顔を見て驚く。
注、布のトートバッグを肩に掛けた清楚なしほり、半袖ブラウスに膝丈のタイト気味のスカート、踵の低いパンプスを履いている。
校長「もしかして・・・」
校長「しほりさんじゃ?・・・」
嬉しそうに頷き、
しほり「憶えていて下さいましたか?」N『加藤しほり。45歳。165㎝』
しほり「派遣先の名前を見てまさかと思って来たら嬉しいまさかでしたわ」
校長、その言葉に驚く。
照れを隠すように、
校長「その後、娘さんはお元気でやっておられますか?」
しほり「はい。二年前に結婚して他県に嫁いで行きました」
嬉しそうに感慨深げに何度も頷き、
校長「もうそんな年に成長したんだ、よかったよかった」
校長「まっ、どうぞお入りください」
しほり「はい、お邪魔します」
両膝をついて靴をドア側に向かって揃えるしほりのスカートがまくれて太腿が露わになった絵。
同、リビング
キッチン回りの絵にしほりの声、
「家政婦が必要ってことは・・・?」
テーブルに向かい合って掛け(双方の前に飲み物あり)、
しほり「奥様は入院でもなさってるんですか?」
校長「いえ、妻は三年前に他界し今は一人暮らしなんですよ」
しほり「(驚き)まあ、じゃあ慣れない一人暮らしでご不便なさってるでしょう?・・・」
しほりをうっとり見つめ、
校長(十年前に会った時も美しいと思ったが、今もまったく美貌は衰えてないな・・・)
室内を見回し、
しほり「すっきりして気持ちのいい部屋ですね」
校長「終の棲家だから極力荷物を増やさず小さく暮らす事を心掛けてますので」
しほり「けど2人暮らしの荷物をここまで減らすのには決心がいった事でしょう?・・・」
校長「はい、とりわけ妻の遺品を整理するのには悩み抜きました」
スカートの奥にチラっと下着が見えるのをテーブルの下からの視点で描いた絵のアップに会話、
「ところで・・・もう旦那の件は片付いたんですか?」
「・・・いえ、異常に執念深く独特の勘が働く人だからまだ私を探してる気がしてならないんです・・・」
深刻な顔で腕を組み、
校長「ふむう・・・」
しほり「もし見つかったら娘の家庭もぐちゃぐちゃにされるのは目に見えてるし・・・」
不安を振り払うように、
しほり「考えたら恐ろしくなるから出来るだけ考えないようにはしてるんですが・・・」
校長、不安げなしほりを見て頷く。
《ここから校長の回想》
空の絵に校長のN『あれは私がまだ六年生のクラスを受け持ち教壇に立ってた頃ーー』
○教室内
教員当時(十歳若い)の校長が本を手に授業している。
ふと前列に座ってる陰のある十二才のしほりの娘を見て、
校長(一週間前に転校して来たこの子はずっとおんなじ服を着てるな・・・)
放課後、無人の廊下の絵にN『娘の服装に只ならぬものを感じたので母親を呼んで事情を聞くことにした』
教室内、暗い表情のしほり(質素な服)と校長が向かい合って掛けて話してる絵にN『聞けばDV夫の暴力に堪えきれなくなって実家に逃げたら我慢が足りないと責められて大喧嘩の末に絶縁し』
教室の天井の絵にN『そのまま着の身着のままで他県から逃げて来たという』
暗い表情で、
しほり「もし、あのまま逃げずにいたらきっと殺されてたと思います・・・」という彼女を心配そうに見つめる校長の絵にN『これを聞いて情に厚い校長は即座に行動を起こした』
空の絵にN『まず金を用立ててやり親子が安心して住める家に引っ越しさせた』『そして、しほりが就職するには住民票が必要だが、こちらに移したら居所が旦那にばれてしまうのでそれが一番の難問だった』
尚も空の絵にN『だが校長が何度も役所と談判したお蔭で新しい住民票を作る事ができ、しほりも就職できた』
スーパーの買い物帰りのしほりと娘が楽しそうに話しながら手を繋いでる絵にN『こうして親子の新生活が軌道に乗ったのを確認し、徐々に身を引いていったのであったーー』
《回想終わり。校長宅のリビングに戻る》
頭を下げ、
しほり「なんとか生活できて娘が無事お嫁に行けたのも先生のお蔭です。感謝してもし尽くせません」
しほり「あのとき先生と出会えてなかったら一体どうなっていたか・・・」
校長「いゃあ今日は嬉しい報告が聞けてよかったなあ」と喜んでくれる校長を畏敬の眼差しで見つめ、
しほり(本当に人の心のひだに沁み入ってくるようなところがある方・・・)
しほり「(頬を染め)私・・・」
恥ずかしそうに俯き、
しほり「あのとき女として声を掛けてもらいたくて何度も信号を送ってたんですよ・・・」
校長「えっ・・・?!」
しほり「なのに気づいてもらえなくてがっかりしましたわ・・・」
あっ気にとられ、
校長「けど当時の私には妻がいて・・・」
優しく頷き、
しほり「分かってます、先生が奥様を裏切るような人でない事は」
熱い眼差しで見つめ、
しほり「先生のその誠実さに私は一層惹かれたんです」
あ然とする校長に、
しほり「所で家政婦の面接に来たんですが、私は合格ですか?」
校長「も、もちろんですよ」
校長「貴女に合格なんて言葉を使うのもおこがましい。どうかよろしくお願いします」と頭を下げる。
しほり「掃除の手順とか食事に何か注文はありますか?」
校長「滅相もない、全てお任せします」
校長「ただ、酢の物とか魚を食べさせてもらえたら嬉しいな」
校長「あっ、果物を全然食べないから少しは食べた方がいいですよね?」
慈愛の眼差しで頷き、
しほり「分かりました。お任せ下さいな」
校長「で、いつから来ていただけます?」
しほり「今日からでも」
校長「(顔を輝かせ)えっ!ほんとに・・・?」N『なにやら人生の転機が訪れそうな予感――』
つづく