一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第93期ヒューリック杯棋聖戦第4局

2022-07-18 23:23:57 | 男性棋戦
17日(日)は、第93期ヒューリック杯棋聖戦第4局(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)が行われた。ここまで藤井聡太棋聖の2勝、永瀬拓矢王座の1勝で、この19日に20歳の誕生日を迎える藤井棋聖は、10代の間に棋聖防衛ができるか、という状況だった。
将棋は永瀬王座の先手で、相居飛車となった。
序盤で藤井棋聖が1歩損に甘んじたが、本当の盛り上がりはその先だった。3筋でお互いの歩がぶつかっているのに藤井棋聖がそれを無視し、じっと右銀を上がったのだ。
永瀬王座は当然3筋の歩を取りこんだが、これは素人目にも大きく感じる。むかし中原誠十六世名人の入門教室本で、「序盤の1歩得は勝敗を左右することがある」みたいなことを書いていたが、本局はここで先手の2歩得である。アマ同士の対局なら、ほぼ勝負アリではなかろうか。
だが藤井棋聖はこの進行が承知の上なわけで、私は戸惑うばかりだ。
しかも藤井棋聖は慌てず、今度は左の銀をじっと上がったのだ。
いかがであろう。善悪を超越したようなこの指し回しは、お釈迦様が指しているようではないか。
私はリアルタイムで見ていたわけではないが、この進行を生で見たら、逆に藤井棋聖の勝利を確信したことであろう。そのくらい強い衝撃だった。
このあとはごちゃごちゃした展開になり、気が付けば藤井棋聖が優位に立っていた。
この感覚、大山康晴名人の香落ち上手局を並べたときに味わったものだ。
名人がハンデを抱えているから不利なのに、戦っているうちに有利になってしまう。もちろん、形勢がどこで逆転したかは、ヘボの私には分からない。しかし本局の藤井将棋にも、それを感じたのである。
終盤は、藤井棋聖が勝勢になったが、永瀬王座も反撃し、藤井玉が中空をさまよってしまう。まるで酔拳のような玉だが、藤井玉はよくこういう動きをして、逃げ切ってしまう。
最後は永瀬王座の形作りに、藤井棋聖が先手玉を綺麗に詰ましたのだった。
永瀬王座は残念だったが、藤井棋聖から1勝を挙げたのだから、善戦したといえるのではなかろうか。冗談ではなく、そんな感じである。

これで藤井棋聖は棋聖3連覇、通算タイトルは9期となった。
19歳といえば、奨励会員をやっていてもまったく不思議でない。しかし藤井棋聖は、すでに並の棋士よりはるかに優秀な成績を収めてしまった。
局後の会見では、「これからも実績よりは実力を高めていくことが大事だと思っている」と述べた藤井棋聖。これ以上強くなられたら、ほかの棋士はいよいよ歯が立たなくなる。
藤井棋聖がタイトル戦で負ける日はいつになるのだろう。現状では、まったく予想できない。
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