一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

悪夢の社団戦(前編)

2009-08-27 00:02:53 | 社団戦
きょうは私が初めて参加した、7月26日に行われた第20回社会人将棋団体リーグ戦(社団戦)の模様を書こうと思う。私にとって悪夢の1日だったので本当は書きたくないのだが、このまますっとぼけるわけにもいかない。
会場は東京・浜松町にある東京産業会館。都内在住の私にはなんてことない場所だが、他県から来る選手はたいへんである。
私はD組・LPSA星組で参加。社団戦は10時開会だが、今回はLPSAチームが会場の設営・撤去に充たっていたので、1時間前に集合する。
9時に会場入りし、倉庫から机や椅子を出す。私が学生のときはこうしたバイトをよくやったものだ。昔に戻った気分で、体を動かした。
その間にも、続々と選手がやってくる。それにしてもすごい数の出場者だ。数百人規模である。中にはプロ級の棋力を持った強豪もおり、この大会が全国的な催しだということを実感する。
設営も終えて、10時すぎになる。Y監督の指令で、私は大将での出場となった。大将というガラではないのだが、強豪のM氏が午後にいらっしゃるということで、他のメンバーの棋力を見ても、私がその席にすわるしかないらしい。
団体戦は高校生以来だから、かなり久しぶりだ。自分の勝敗がそのままチームの勝敗に直結するケースもあるので、かかるプレッシャーは相当なものである。しかし、ふだんは手強い敵が味方なのだから、頼もしいともいえる。
この日は4局を指すとのことだったので、私は扇子を4本用意した。団体戦では、勝ち名乗りがなによりの朗報である。私は当然4勝するつもりだったので、勝利が確信できた時点で大げさに扇子を扇ぎ、「オレは勝ったぞ!」とみんなに報せるつもりだった。
1勝ずつ、違う扇子を使う。用意したのは中倉彰子女流初段、宏美女流二段姉妹のカラー扇子、LPSAサインラリー扇子、中井広恵女流六段の非売品直筆扇子の4本であった。
午後からと諦めていた、大将格のM氏も到着。M氏には副将を務めていただき、10時半ごろだったか、いよいよ1局目の対局開始となった。
相手に駒を振っていただき、私の後手番。私は先後に敏感で、先手がほしかったので、いきなりデバナを挫かれた形となった。それにしても、この息苦しい緊張感はなんだろう。先ほどまでは4戦全勝のつもりでいたのに、そんな思惑は早くも吹き飛んでいた。
将棋は私の四間飛車に、先手氏が角道を開けない引き角戦法。私は漠然と駒組を進めていたが、☗5六歩と角道を開けられたところで、早くも不利になったことに気付き愕然とした。こちらの布陣は2一桂、2三歩、3二銀、3三角、3四歩、4一金、4二飛、4三歩。どうやっても角交換が受からないのだ。こんな初歩的なスジを見落とすとは、初めての社団戦で、舞い上がっていたとしか考えられない。
それでも角交換後に、3一金~4一飛~4四歩~2二金~4三銀~3二金~3三桂~2一飛と陣形を立て直し、数手進んで先手氏の☗6七金に☖4七角と打ち、☗1八角に☖1五歩と端を攻めて、これは優勢になったと思った。
以下相手の角を召し取り、☖1九飛☗6九香☖1二飛成(成香を取った)に、先手氏が☗8六桂と打ったのが、以下の局面である。

先手氏:4六歩、5六歩、5七銀、6六歩、6七金、6八金、6九香、7六歩、7八銀、8六桂、8七歩、8八玉、8九桂、9五歩、9九香 持駒:飛、桂、歩
後手 一公:1二竜、2五馬、3二金、4三銀、4四歩、4七と、5三歩、6一金、6四歩、7二銀、7四歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9三歩 持駒:角、香、歩4

この局面は角桂交換で後手優勢。しかし☗7四桂跳ねを防ぐ☖7三香は☗7五歩。☖7三銀は☗8五桂。☖6三銀は☗5五桂で、意外とうるさい。
ここで私は持ち時間30分の中の5分以上を使い、☖4一角と打った。
なんたる手か。こんな利かされを指しているようでは、植山(真部)門下を破門される。ここは、☗7四桂と跳ぶなら跳べと☖5七とと銀を取り、☗同金寄に☖8五銀と打つべきだった。
本譜は☗1三歩☖2一竜を利かし☗7七桂と跳ねてきた。動揺している私は遊び駒を活用しようと☖4二金~☖5二金と寄る。ところがすかさず☗3三桂と竜角取りに打たれ、一遍に形勢を損ねてしまった。
ここからは疑問手の連発である。平常心など、どこかに行っていた。それでも終盤は王手竜取りをかけるなどして飛車を2枚手にしたが、その飛車を☖6七飛と打ち、☗7八銀と打たれたところで苦慮していると、対局者から意外な言葉をかけられた。
「切れました」
秒読みの30秒が経ち、時間切れ負けとなってしまったのである。
持ち時間が残り2分になったところまでは記憶にあったが、それ以降は、持ち時間が切れたことも、秒読みに入っていたことも、全く気付かなかったのだ。
「あっ、失礼しました!」
私はどちらかといえば早指しのほうで、LPSA金曜サロンのリーグ戦でも、滅多に秒読みになったことはないのだが、今回はいつにもまして慎重になっていた。時間切れ負けも、初めての経験だった。自軍の選手は、局面が敗勢だったから、私が負けを告げるのが悔しくて、あえて時間切れにしたと解したらしい。
しかし私はそんな卑屈なことはしない。堂々と勝ち、堂々と負けるのである。今回は正真正銘、本当に秒読みの音が聞こえなかった。そのくらい、私は緊張していたのだ。これが団体戦のプレッシャーというものなのか。
チームも2勝5敗で負けた。お昼休みになったが、とても昼食を摂る気になれない。それでも会館の向かいにある立ち食いそば屋に入って、もりそばを流しこむように食べた。砂を噛むようだった。
(つづく)
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4 コメント

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無題 (洋志)
2009-08-27 02:08:16
うーん。発する言葉なし。
不甲斐ないほど不出来という経験はしたことあるけど。それとは違うような。
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それが (KK)
2009-08-27 19:55:37
社団戦のこわさ、です。
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プレッシャー (LPSAファン)
2009-08-27 21:07:33
大会というだけでも大変なのに、団体戦でしかも大将と来ては、相当なプレッシャーなんでしょうね(;一_一)
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不甲斐ない (一公)
2009-08-27 23:37:34
洋志さん
棋力も未熟、経験不足もありました。自信を喪失しました。

KKさん
本当に社団戦は恐ろしい。いい勉強になりました。

LPSAファンさん
この大将というポジションがよくなかったですね。私は陰でコソコソやるタイプなんですよ。
本当にチームの皆さまには、迷惑をかけてしまいました。
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