一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「将棋ペン倶楽部・2010年秋号」―自作を斬る

2010-09-08 00:44:19 | 将棋ペンクラブ
きのう「将棋ペン倶楽部 2010年秋 第54号」が届いた。例によって開封はせず、夜の散歩まで待つ。
夕食後、散歩先のドトールコーヒーに入りアイスコーヒーS(200円)をオーダーし、ここで初めて開封する。今回は拙作「奇跡の光景」が掲載されているから、読む張り合いはある。
中身は全128頁。「将棋ペンクラブ大賞発表号」とはいえ、かなりのボリュームだ。これだけの頁数は、数年前に原田泰夫将棋ペンクラブ名誉会長(九段)が逝去されたときの追悼号以来ではなかろうか。
拙作は95頁から掲載されていた。活字化された自分の作品を読むのは楽しみだが、ただ今回は推敲不足だったので、読む前から若干の不安があった。投稿してから1ヶ月あまり。現在の新鮮な目で見て、どのくらいのアラが見つかるか。私は息をのんで、活字を追った。……。いや…参った。
冒頭部分を記してみる。

かつて私が通った高校は一応男女共学だったが、その比率は男子4に対し女子1だった。
むろんこの高校を受験する前から、その比率は承知していたが、……

早くもここで、頭がクラクラした。「女子1だった。」の次の「むろん…」は、改行しないほうがよかった。さらに「受験する前から、」の「、」は、あとに続く文章のリズムを崩している。この読点はないほうがよかった。
駄作の予感を抱いたまま読み進むが、案の定、修正したい箇所がところどころ出てくる。具体的にどうというわけではないのだが、やはり文章のリズムがわるいのだ。やがて決定的な「疑問手」が、次の頁の1段目に出た。
私が2年に進級したときのくだりだが、私のクラスが4階にあったことが、記されていなかったのだ。
あとの文で「しかし3階へ降りれば…」と出てくるから、自分のクラスが4階にあることは推測できる。しかしそれでは不自然で、この類の説明は、本文でハッキリ述べなければならない。
さらに読み進むと、2段目に今度は「大悪手」があった。また該当部分を引いてみる。

当時わが校の制服は、男子の学ランに対し女子はシャレた色のブレザーで、ブラウスも白のほかにブルーや薄いピンクがあったから、現在の目から見ても、先進的だった。

書き写しているだけでもう嫌気が差すのだが、女子のブレザーの色が記されていない。ちなみに女子の冬服は紺色、夏服はベストで、鮮やかな青色だった。
…と、ここまで読んで、古参のペンクラブ会員は、似たような文章を以前読んだ覚えがある、と訝しく思ったことだろう。
それは正しく、3年前の2007年秋号に掲載された拙作「文化祭1982」の序盤の部分と、内容がほとんど同じなのである。実は今回の投稿は、このとき書きもらした我が校の女子の制服を、詳しく書くためだった。よってあとに続く文章は、そのための目くらましにすぎない。その点は、読者をペテンにかけたようで、申し訳なく思っている。
ああそれなのに、このいい加減な描写はなんだろう。女子のネクタイは紺とエンジの2色があったにもかかわらず、これも記していない。いったい、なんのための投稿だったのか。
話がやや逸れたが、上の引用文の「大悪手」は、「ブラウスも白のほかにブルーや薄いピンクがあったから…」という箇所で、正しくは「ブラウスも白のほかにブルーやベージュがあったから…」だった。
「ベージュ」から「ピンク」へと、なぜこんな「記憶のすり替え」が起こったのかと考えるに、この原稿の執筆前、7月17日に行われた「マイナビ女子オープン一斉予選対局」で、室谷由紀女流1級の、ピンクのブラウスを目にしたからではなかろうか。あの鮮やかな制服姿が脳裏に残って、ブラウスの色に「ピンク」を加えてしまったのだ。
しかし、ヒト様の高校の制服を、母校の制服にするだろうか…。まったく、自分のバカさ加減に呆れてモノが言えない。
さらに進んで、98頁。教室内にある「個人用ロッカー」がこの話のキーになるのだが、肝心の設置場所が書かれていない。実際は教室の後方にあった。本文には「個人用のロッカーの上に…」とあるので、書き加えるならここで、「教室の後方に設置されている個人用ロッカーの上に…」とすべきだった。それにしても、この説明不足に気がつかないとは、どうかしている。
今回の文章は随筆だから、私は当時の教室内の光景は覚えている。それを知っているのは私だけなのに、読者も知っていると錯覚しているのだ。
要するに、ひとりよがりの文章なのだ。何も知らない読者にもその光景が見えるよう、詳細な説明をしなければならないのに、その配慮が欠けている。
これらの原因は分かっているのだ。今回の執筆の前後に、このブログにてマイナビ女子オープン一斉予選対局の観戦記を書いたのだが、そちらに精を出しすぎて、将棋ペン倶楽部への執筆がおろそかになったからだ。
さらに紙媒体に載るというプレッシャーが、キーボードを叩く手を重くさせた。いやいや書いているから、文章に勢いがない。寝不足で思考力も低下しているから、似たような単語が繰り返し出てきて、文章が平板になっている。魂がこもっていないというべきか、ただただ駄文を垂れ流している感すらある。
私は弁護士に「皮肉の利いた名文です」と言われて満足するほどの自信家ではない。1回読んだだけでこれだけ悪手が散見されては、もうダメである。
本書の巻末を見ると、「新入会員」に、「藤森奈津子」「松尾香織」「大庭美樹」の名前がある。これ、どう考えてもLPSA所属の女流棋士であろう。ほかにLPSAスタッフ氏の名前も見えるから、代表理事に脅されて入会したのだろうが、私の駄文を読んで、
「大沢さん、会報の常連だと聞いて期待して読んだけど、スットコドッコイな文章だったワ」
と思ったに違いない。
現在将棋ペンクラブの会員は4~500人というところか。貴重な会費を支払っているのに、こんな文章を提供してしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいである。次回投稿することがあれば、もう少し読者が満足できる文章にしたいと思っている。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする