冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

南アルプスデビュー: 鳳凰三山

2013-08-17 20:53:46 | 旅行
8月最初の日曜日&次の月曜日(有給取った)で、南アルプスの鳳凰三山に登ってきた。
まず結論。素晴らしい。日本の山楽しい。こんな景色世界にもなかなかない。
パイネやカナイマに行く体力がなくなっているのではないかという恐れから始めた日本の登山だが、日本の山自体が世界クラスの観光資源だと思う。
この列島は地質学的に世界的に稀有なものらしく、火山も隆起した山も特徴がある。それに、多雨だったり豪雪だったりして、山岳地形・風景が素晴らしく迫力ある。植物も、日本固有種なんかざらで、その山にしかない高山植物とかたくさんある。これらに遭遇するだけでも得した気分だ。

ということで、詳細に入ります。
土日は混んでるだろうという軟弱な理由で、月曜に有給とって日・月の山行を計画。朝7時3分に新宿駅を出る特急かいじ号で甲府に向かいます。


8時半過ぎに甲府に着いて、そこから9時発のバスで登山口の夜叉神の森に向かいます。高校生の合宿部隊を含め、バス2台がいっぱいになる人数の乗客がいました。日帰りの強者は少ないと思いますが。。。
バスは1時間10分ほどで夜叉神の森に到着。登山口はバス停の反対側にあります。トイレを済ませて10時20分頃に登山開始です。


最初の1時間は夜叉神峠まで樹林帯をひたすら登ります。直ぐに汗が吹き出る。登山口は標高1380メートルということで、この高度ではまだまだ涼しくはないです。で、予定通り1時間ほどで夜叉神峠に到着。山小屋があり、高山植物が咲いています。ガスがかかっていて眺望はNG。晴れていれば北岳が見えたはずなのだが。


クルマユリかな。


ヤナギラン。


ここで鳳凰三山について。
南アルプスの中では比較的初心者向けらしいですが、登山口から山頂までは最短のコースでも1300メートル以上ありますし、1つの山が大きい南アルプスらしく普通のペースでは5時間以上の登りを覚悟しなくてはなりません。私のとった夜叉神峠のコースは標高差1400メートルくらいでコースタイムは7時間となっていましたが、いろんな方のブログを見ると5時間程度と見ておけばいいようです。
三山というのは、薬師岳、観音岳、地蔵岳の3つのピークを持つためにそう呼ばれています。
この日宿泊予定の薬師岳小屋は、薬師岳直下の標高2700メートル程度の場所にあります。

で、水を飲んだりして少し休んだら登山再開。南アルプスらしくブナやカラマツの森が深く、コケもびっしりの樹林帯を行きます。
山深い感じでいいですが、地味な登りで徐々に体力を奪われます。ホントに初心者向けなのか、この辺りですでに疑問を持ち始める。
それにしても、もののけ姫がでかい狼に乗って出てきそうだ。


癒しは様々な高山植物。ヤマオダマキ。


ヤマホタルブクロ。たくさん咲いていました。下山に使ったドンドコ沢コースに特に多かった。


タマガワホトトギス。複雑な花の形ですね。


これはリンドウの一種だと思うけど。


ヤマハハコ。蕾らしい。咲くと小さい白い菊の花がいっぱいらしい。


ひたすら登ると、少し開けた場所に出ます。地図で確認するとやはりコースタイムより速いペースで来ていますが、別にすごく速く登った感覚はないのでこんなもんなのでしょう。
そして、どのブログにも紹介されている不思議なオブジェに遭遇します。


その後も、苺平と呼ばれるところまで、標高とともに少し大きな石が出てくるくらいで景色に大きな変化はないままに登り続けます。
苺平からは、100メートル以上下ってテント場のある南御室小屋に着きます。水場が開放されていて、南アルプスの天然水を飲むことができます。冷たくて生き返りますな。
その後はやや急な道を最後の300メートルくらい登るのですが、これが意外ときつかった。1時間以上かかりました。
これまでより大きいザックを背負って既に4時間近く登っていたので、最後はバテ気味だったですな。ホントに初心者向けなのかよ。
それにしても、南アルプスは森林限界が高い。2500メートルくらいだとまだまだ深い森の中です。眺望が開けないので、永遠に森を抜けられないような錯覚に陥りますな。

しかし、ヒーヒー言いながら登っていると、急に足元の土が白い砂っぽくなります。
と同時にハイマツ主体の植生になり、展望が開けます。やっと森林限界を超えました。
すると、景色がまったく違ってきます。この変化はあまりに急です。


花も変わります。
稜線付近に多いヒメコゴメグサ。小さい。可愛い。よく見るとちょっと複雑な形。


そして今回のメイン、タカネビランジ。何と可愛いものか。これが稜線の花崗岩地帯にひっそりと、でも数多く咲いています。勇壮な砂と岩の風景に彩りを与えています。


白いのも。


ピンクの濃いのも。


そして、最初のピークである薬師岳も見えてきました。ここまで来れば小屋はもうすぐ。


で、宿泊する薬師岳小屋に到着。3時15分くらい。登りにかかったのは丁度5時間でしたね。
この山小屋には水場はないのですが、1時間前に南御室小屋で補給しているし、何より山頂直下で明日の予定が楽になるし、トイレもバイオトイレで思ったより清潔なので、結構おすすめと思います。


ツアーの団体さんもいましたが、60名定員の小屋に40名くらいの宿泊客だったように思います。実際、寝床は余裕がありました。土曜の夜は満員だったとのことなので、1日ずらした甲斐があったということ。夕食のおでんをいただき、午後8時の消灯まで小屋の方や他の登山者と情報交換したり、小屋にある雑誌を読んで過ごしました。


翌朝は3時半ごろ目が覚めてしまう。さすがにそんなに長くは眠れず。静かに外に出てみると、星がすぐ近くに見えました。
少し時間がたつのを待って、4時半ごろ小屋を出て山頂を目指します。まずは薬師岳から。薬師岳は山頂が広く、大きな岩と砂浜のような白い砂が特徴的。広いので日の出の絶景スポットを求めて暫くさまよいます。


快晴ではなかったものの、雲海が広がっていて神秘的な夜明けになりそう。


雲海の上に頭を出しているのは奥秩父の金峰山などでしょうか。


そして富士山も。


雲海の上に朝日が昇ります。


西側を見ると、南アルプス最高峰の北岳が朝日に照らされ始めました。


次に向かう観音岳への道も明るくなります。


そして富士山も。この時点では頭に雲かぶってます。


観音岳は鳳凰三山の最高峰で、標高2840メートル。白い砂浜のような稜線を朝の澄んだ空気の中歩くのは気持ち位ですが、砂に意外と足を取られます。
薬師岳から約40分で到着。山頂は狭いですが、360度絶景です。雲海すげー。


山頂には小さい観音様も発見しました。


これから向かう最後のピークである地蔵岳は、オベリスクと呼ばれる巨岩が山頂にあります。あれを目指します。それにしても、地蔵岳まで2つくらい大きなアップダウンがありそうで稜線歩きも思ったより楽じゃないかも。


楽じゃないと感じたら高山植物を愛でて現実逃避する。タカネビランジはたくさん咲いていました。ほかにも、例えばミヤマアキノキリンソウ。


タイツリオウギ。


途中で岩に右ひざを強打するというアクシデントがあったものの、大事には至らずに1時間20分ほどで地蔵岳山頂へ。
賽の河原と呼ばれる砂地にお地蔵さんがたくさん立っています。このお地蔵さんをここまで連れてきた人のパワーに感服です。


日が出てきて、振り返ると観音岳も美しい。ちょっと富士山も見えてますね。


そして迫力のオベリスク。途中まで登りましたが、無理はせずに下りました。単独行なので怪我でもしたら誰も助けてくれないし。


ここまで来ると達成感あります。しかし、問題はこれから。苦手の下山を延々5時間以上覚悟しなくてはなりません。山がでかい南アルプスは下山コースも長くて楽はできません。
山頂からの砂地の下山は膝への負担もなく楽勝です。しかし、すぐに樹林帯に戻るので現実に引き戻されます。40分くらいで鳳凰小屋という山小屋に到着。ここの水も美味しいです。親切なスタッフが勧めてくれました。花畑も手入れがよくて、いろんな花が咲いていました。


ちょっと休憩して8時40分ごろ鳳凰小屋を出発。ここからの下山コースは滝を見られるドンドコ沢コースを取りました。が、結果としてはこれは裏目だったかも。沢を何度もわたるコースで岩場も多く、結構な急坂でした。極端な例えをあえて使えば、日光男体山の5合目付近の岩場が混じる樹林帯の急坂が1000メートル続く感じ。
岩にぶつけた右膝をかばいながら下りていたら、姿勢に無理があったのか軽くひねったのも誤算。
そして、ガスがかかって滝はほとんど見えず。。。


それでも高山植物は相変わらず美しい。これはシモツケソウ。


そしてソバナ。


コバイケイソウ。


ギオン。


これは鳳凰山を代表するシャジンの蕾かな。


バテバテでコースタイムをオーバーしていろんな登山者に抜かされつつ、帰りのバスが3時ということで時間的な余裕があったので心理的にもプレッシャーはそれほどなかったですな。これが12時半のバスに間に合うように急いでいたら、更に膝をひねったりしたかも。
そして、4つある滝の最後の1つ、南精進ヶ滝はきれいに見えました。


午後1時30分過ぎに、やっとのことバスの出る青木鉱泉に到着。風情のある木造の旅館です。
ここで1000円払って温泉へ。2日分の疲れと汗を落とします。やはり下山後に温泉のないコースはあり得ないでしょう。


こうして無事に南アルプスデビューを果たすことができました。山頂の絶景も高山植物も、初の山小屋泊の経験もどれもよかったです。
まあ、何だかんだ言って特に登りはもう少し余裕があった感じなので、次なる絶景を求めてもう1つか2つ夏のうちにトライしたいところです。
だって、この絶景も20年したらなくなってるかもしれないし。温暖化は恐ろしいよ。日本の大自然の美が残っているうちに絶対に見ておきたいと思いますな。

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