冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

南アルプス縦走の旅 その5 間ノ岳~農鳥岳~奈良田

2016-09-27 22:28:58 | 旅行
縦走している時は辛いけど楽しいし、景色や花に感動しているし、歩く時間だけでなく起きる時間や寝る時間も含めて時間管理もちゃんとしているし、もちろん滑落などの事故にも会わないように気を付けているから、色んな意味で気が張っています。ソロ登山の場合皆さんそうなんじゃないでしょうか。私の場合、無意識ながら結構必死で縦走の毎日を過ごしているのだと思います。結果として、下山すると2キロまではいかなくても少し痩せるし、筋肉が張った状態が2~3日続きます。

考えるのは、あまりに長期間だったり1日のコースタイムが長すぎたり、大キレットのような長大な難所を含む旅はしないようにしようということ。どこかで気が抜けたりして事故を起こしそう。1週間とか2週間とか山籠もりする人もいるようだけど、私の場合はやめた方がいいのだと思う。ソロテントでは。あるいは、1日に歩く時間を平均6時間程度にしてアップダウンも少なめにするとか、難所がある場合は翌日楽な日程を組むとかしないと。

今年は遭難者がかなり多いらしいですが、明らかな準備不足やその反対で本当に不運な事故もあるでしょう。が、自分がもしも事故を起こすならちょっとした、一瞬のミスのような気がする。そしてそれは疲労が原因となる可能性が高いと感じている。ということで、この南ア縦走の旅も、ある意味で丁度いいレベルで計画実行できた冒険だったのだと思っています。

縦走4日目、日の出からまもない間ノ岳の山頂です。記念すべき初山の日の朝日と富士山。


南をむけば、これから歩いていく農鳥岳が左手前に。右には2日前に歩いた仙塩尾根と塩見岳。その奥には南アルプス南部の名峰たち。


南部方面ズーム。


農鳥岳アップ。ゴツいイメージですね。その奥には白峰南嶺から続いて笊ヶ岳などの山々が見えます。まあ、上級者の山域で、私は当分踏み込めません。


北の方は当然北岳。そして甲斐駒ヶ岳と仙丈ケ岳。前日は、この標識の左下側、三峰岳方面から登って来ました。今日は北岳方面から来て、農鳥岳方面に向かいます。


ザ・北岳。


空気のせいか、前日ほど空が真っ青ではなくて、少しぼんやりした感じの空気。これはこれで朝っぽくて悪くないですけど。
前日北岳山頂でもやった、登山靴と山のコラボ写真。お世話になっている登山靴と北岳。


そして富士山と。雲海に浮かぶ富士山を堪能。


こちらはザックも入れて。南部方面の名峰と。


自撮り。


さて、農鳥岳に向かいましょう。とは言っても、農鳥岳も格好いいのでなかなか写真を撮るのをやめられない。
農鳥岳と雲海の上に浮かぶ富士山のコラボ。農鳥岳からの大きな尾根は大唐松尾根でしょう。バリエーションルート。ハイマツ漕ぎでたいへんらしいですが、実は雪山シーズンに利用されるようです。上級者のブログを見る限り。


農鳥岳&南アルプス南部の名峰たち。雲があるのが山脈の東側だけで、大井川源流方面は雲がないのが分かると思います。雲がどこで発生してどう動くのか分かりますね。


農鳥岳拡大。農鳥小屋も見えています。赤い屋根が稜線に映える。北岳山荘の構図と似ている。


拡大。この稜線も格好いいです。北岳~間ノ岳稜線に負けない迫力。やはり白峰三山。雰囲気的にもちゃんと3つ揃ってますね。


農鳥岳で一番高いところは西農鳥岳ピークで、標高3,051メートル。これは農鳥小屋の奥にそびえるところの一番高いところでしょう。農鳥岳のピークは3,026メートルですが、これは1つ前の写真の左側でこぶのようになっているところだと思います。いずれにしても、あそこまで縦走するのは大変そうだ。地図で見て分かっていたことですが、この日のルートは結構厳しそうだ。

で、ここからはいったん農鳥小屋を目指して間ノ岳を下ります。この下りが結構なガレ場で神経を使いました。山歩き4年目ですが、やはり下りのガレ場は得意でありません。どうしてもペースが落ちる。そして、オンタデの写真を撮っていつもの現実逃避。


今回は面倒がってよくなかったですが、本当はこういうガレ場の比較的急な下りのルートではストックはしまうべきですね。あまり役に立たないと感じます。いざという時は手を使う方がずっと安全。ストックは、基本的に登りの樹林帯や比較的勾配の緩い稜線で使うだけにした方がよいと思っています。
で、ストックのせいではないですが、転ばないようにノロノロと下っている途中で少し休みながら撮った塩見岳、荒川岳&赤石岳、農鳥岳のズーム写真。写真撮ることを言い訳に1,2分立ち止まるのはいい休憩になるんですよ。実際。






そして、鞍部に建つ農鳥小屋。深沢さんだったかな。怖いということで有名な小屋番さんがいるところですが、どうやら小屋番さんの朝食タイムだったようでお会いできず。まあ、この小屋に飼われている犬にはしっかり吠えられた。


農鳥小屋のテント場はスペースがかなり余裕あるように見えました。日程が合えばこのロケーションは悪くないと思います。大門沢経由で奈良田に下るにもよいし、ここから間ノ岳方面に向かうのも、間ノ岳を回避して熊ノ平に向かうのも、いずれのルートを取るにも便利な位置でしょう。
そして、景色もいい。特にこの日は雲海が格好いい。鳳凰三山方面。


富士山方面。


これから向かう西農鳥岳。凄く険しい訳ではないですが、やはりテント泊装備で4日目となるとかなり疲労もあるのか、楽ではなかったです。あとは風。この日の風は結構強くて、稜線ではレインウェアの上着をずっと羽織っていました。


農鳥小屋から少し進んだところで、西側の展望がよい場所がありました。仙塩尾根が見える。


小さく見える熊ノ平の山小屋も発見。ここからのコースタイムは間ノ岳をトラバースするルートで2時間半ということですが、実際に見ると随分と遠いイメージです。


西農鳥岳を登っている最中に振り返って間ノ岳。やはりどの方角から見てもこの稜線は格好いい。そして、間ノ岳からの下りの道が楽でなさそうなのが分かるはず。


取りあえず斜面を登り切ったところで一息。塩見岳方面。蝙蝠尾根が完全に見える位置になりました。塩見岳、2日目に登頂してから後はどんどん離れていって遠くに見えるようになったのに、ここに来てまた少し近づいた。


振り返って間ノ岳と北岳。仙丈ケ岳も見えます。北岳がだいぶ小さくなりました。北岳の奥は八ヶ岳ですかね。


進行方向には、これから歩く稜線の上に富士山。このルートもまたまた絶景ルートですね。


ほとんど他の登山者がいませんが、いるとすると私より体力ある山歩きに慣れた感じの人だけです。まあ、マイペースで行きます。天気もいいことだし。
どうやら西農鳥岳の山頂らしきものが見えてきました。


登頂。1時間程度かかりました。コースタイムより少しかかったくらい。やはり疲労があるのか。まあ、大きな岩をよじ登る訳ではないけど、それなりの岩稜なので落石などに気を付けて歩きますからね。


この稜線をしっかり眺められるのはここで最後のはず。北岳~間ノ岳~農鳥岳稜線、素晴らしかったです。


この先の道。雲海を越えて富士山に続いているように見える。


もちろん、実際には農鳥岳から先は白峰南嶺の稜線が続いています。こちらも東側が雲海でいい景色です。


ここでイワヒバリ。


西農鳥岳から農鳥岳本体の山頂への道。それほど厳しい傾斜ではないんですけどね。なぜかハーハー言いながら歩いてました。3,000メートルで空気薄いせいでしょうか。


右手前方には仙塩尾根、蝙蝠尾根、そして塩見岳、その背後に荒川岳など。このルートから見ると南アルプス南部の山々の位置もよく分かります。


そして、どうやらやっと農鳥岳山頂のようです。山頂には結構人数の多いパーティが3組ほどいて、賑わっていました。


振り返ると、北岳が角度的によく見えていました。


そして鳳凰三山。


農鳥岳から見える富士山。残念ながら少し雲がかかっている。


そして塩見岳。もうおなじみになってしまいました。まあ、このシーン見に来るの大変なんで、写真多くても許してください。


農鳥岳山頂から続く大唐松尾根。バリエーションルートって、これ、まったく道がついてないように見えますけどね。


ここでも休憩含めて30分ほど時間を消費。他のパーティが出発されてから写真を撮りました。もう一度、北岳・間ノ岳を入れて山頂標識。


そして、これから下って行く道。その先には白峰南嶺。まだまだ道は続く。大きい山脈だ。


農鳥岳から大門沢の下降点までは素直な下りで、コースタイムどおりに歩くことができました。花も少し咲いていたけれど、これまでの、特に北岳の大お花畑の後だとやはり見劣りするのは否めず。




そして下降点。10時くらいだったと思います。印象的な黄色の標識と鐘。


雲海が見事な東側が開けているので、韓国から来られた登山パーティの方に写真を撮ってもらいました。




さて、体力的には何とか大丈夫そうなので、ここから往復1時間で白峰南嶺で一番北に位置する広河内岳を目指します。何度か書きましたが、白峰南嶺は山小屋も水場もないルートなので経験者向きで、ルート自体もハイマツ漕ぎ、藪漕ぎの厳しいところらしいです。しかし、広河内岳までなら初心者も問題なく行けるということで、南アルプスの大きな尾根の一部でも味わうために行ってきました。
実際、広河内岳への道はこれといって特徴ないので問題なく登頂できます。標高2,895メートル。地味な山ですが鹿島槍ヶ岳よりも高いという事実。八ヶ岳の赤岳より4メートル低いだけ。


ここから眺める白峰南嶺は気持ちいい感じで南にまっすぐ伸びていて、最初は森林限界の上を岩やハイマツの道が何となくイメージできますが、次第に樹林帯(実際にはハイマツ帯かも)の緑に道が吸い込まれていきます。こういう道を一人で歩いて山に入っていくのが、一段違うレベルの山歩きなんでしょうね。岩峰の岩登りもレベル高いと思いますが、道なき道というかけ獣道を進んで深い山に入り込むのも別の興味をかき立てるものがあります。




そして、白峰南嶺に並行して走るのは仙塩尾根。こっちは2日目と3日目に歩いてきました。長かった。2日目の最後の方はかなりバテていた。


最後に農鳥岳を振り返る。


さて、大門沢下降点に戻って本格的な下山開始です。この日は大門沢小屋にテントを張る予定。奈良田第一発電所の登山口までだと標高差1,900メートルくらいになるので、時間的にもここは丁度中間地点にある大門沢小屋を利用します。山の日ですが、このルートであれば北岳と違って無茶苦茶混雑するとは考えられないし。と、思っていました。

その前に、下降点で会ったソロの男性登山者。農鳥岳に向かうのかと思ったら広河内岳方面に向かうので、白峰南嶺に向かうのかどうか尋ねたところ、XX沢に下ってテントを張ってゆっくりするとか。翌日間ノ岳に登るとか。その時聞いた沢の名前は思い出せないのですが、池ノ沢だったと思います。いずれにしても道なき道。そして大井川源流から間ノ岳。ホント、南アの登山者はレベル高い人が多いです。さて、広河内岳を眺めつつ下山開始。


ところが、この道が一般登山道とは思えない。急な上にえぐれていたり、凄く細い道で片方が完全に切れ落ちていたり。大きいザックだとザックをハイマツなどにぶつけてよろけることがあるので危険です。それにそもそも道が凄すぎて、先行者がスリップしたあとが随所に。こことかも、右側にロープ見えますけど、ロープ掴む余裕もないし。塩見岳の岩場なんか目じゃない難所です。今回の山行で一番の難所はこの下山コースで間違いない。


倒木多いし。


木の根の下、道が雨のためか深くえぐれていて、ズドンと落ちたら怪我するレベル。慎重に行くのでペースはゆっくり。下山でこれほど苦労したのは初めてです。山歩きを始めた年の鳳凰三山で、ドンドコ沢コースを下った時も二度と行きたくないと思いましたが、その感覚以上。それに、当時より体力も技術もついているから、こっちの方がキツイ道だと言えるでしょう。


何とかスリップもせずに大門沢の見えるところまで来ました。ここまで来れば多少は道がよくなります。まあ、傾斜の斜度の問題でしょうけど。


高山蝶が癒しを提供。


でも橋も壊れていて怖い怖い。この道、登りでもあまり使う気が起きません。農鳥岳、次に来るのはいつになるか。


やっとのこと大門沢小屋到着です。結局はコースタイムとほとんど変わらず、1時半過ぎには受付できました。けど、ホントに厳しい下山道でしたよ。縦走の後にこの試練は凄かった。


テント場から見える景色に山深さを感じる。


私が到着した時にはまだ余裕がありましたが、流石は山の日、結局テント場は満員でした。HPには50張可能とありますが、実際には35張程度がせいぜいでしょう。
小屋の昼食時間は1時半キッカリで終わってしまったので仕方なく予備のフリーズドライ食を食べ、珍しくチューハイも飲みました。まあ、これまでの達成感&厳しい下山の後の一杯。
その後はテントで昼寝しつつ、起きて隣でテントを張られていたベテラン登山者の方にいろいろと情報をいただいたり、5時過ぎには最後の夕食を準備したり。
厳しく楽しかった山行も、翌日の短い下山でおしまいです。

さて、翌日。前日のような道全体が難所のような場所はありません。まあ、それなりにワイルドですが、花も咲いてるし。










途中、道が小川になっている所がかなり長いです。赤いテープで登山道と示してくれなければ道とは認識しないレベル。


樹林帯に入りました。針葉樹の香りがよろしい。






何度もこのような橋を渡ります。




この吊り橋に来ると、電力会社の施設が近いです。ついに文明社会に戻ってきてしまいました。




ずいぶん大雑把なマップ。


奈良田第一発電所のバス停に下山。コースタイムより1時間ほど早い下山で、奈良田の温泉はまだ営業開始前。


まあ、30分ほど歩いていきますから、到着するころには営業するはず。




女帝の湯。4日ぶりのお風呂はとても気持ちがよい。達成感。奈良田温泉は一度行く価値ありですね。特に、厳しい縦走の後は本当に気持ちいいです。


最後は甲府に出ていつものほうとうで締めです。


自分史上最長の縦走だった、2016年夏の南アルプス山行。お天気に恵まれて絶景を堪能しただけでなく、得るものが多かったです。
この年でも自分の限界を広げられるし、いろんなスキルを学ぶことができるし、新しい発見に感動できます。
大らかで、懐深くて、暑くて、繊細で、いろんな形容詞が当てはまる南アルプス。今のところ、自分の一番贔屓の山域になっています。