冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

南アルプス縦走の旅 その3熊ノ平への道 & 熊ノ平から間ノ岳へ

2016-09-22 20:02:27 | 旅行
お天気に恵まれ、本当に大感動の大絶景の山旅だったのですが、私の写真ではその醍醐味をほとんど伝えられませんね。こうして見直すと。写真技術が稚拙、残念なものです。
しかし、実はそれはプロの写真家でもほとんど伝えられないのではないでしょうか。お天気がいいと特に日本の山岳地帯の景色は圧倒的に美しく、大きさも感じられます。それなりに海外旅行もしてきましたが(海外で山岳旅行はしていないけど)、日本アルプスの絶景は世界的に見てもレベル高いと思いますよ。ホントに。そして、北アルプスの方がどうしても注目度が高いですが、今回の南アルプスの山旅を経て思ったのは、自分は南の方が好きかもしれないということ。北アルプスも大好きですよ。でも南の大きさは、山に溶け込む感じでしたね。まあ、北アルプスで3泊4日の縦走をした時は雨に降られてしまったので、快晴だったら北アルプスにも同じように溶け込めたのかもしれないですけど。

で、熊ノ平。山に溶け込むにはもってこいの山小屋、そしてテント場です。遠いけど。
まずは塩見岳直下の岩場を降りてきました。塩見小屋方面から登ってきたルートに比べると岩場は険しくないし、距離も短いのでそれほど問題ありません。振り返るとこんな感じ。


進行方向右手には、長大な蝙蝠尾根とその向こうの白峰南嶺の向こうに富士山が見えます。


進行方向は間ノ岳中心に大山脈。この写真とか、雑誌の夏山特集に使えないかしら。まあ、これでも実際に見えている風景の感動に比べると矮小化されてます。


少し行くと、ハイマツの森に沈み込むように入っていきます。ここでのすれ違いは困難。


それを抜けるとこんな感じで足を滑らせたくない道が続きます。


北俣岳分岐を過ぎるとガレた急な坂です。写真は結構格好いい稜線の道ですが、実際に下るのはなかなかたいへん。片側が切れ落ちているので結構神経使います。登るのもつらいと思うけど、下りは落石起こさないように注意です。もちろん滑落も。


難所を越えて振り返ると、左側には今下ってきた難所。右側には塩見岳バットレスと呼ばれる塩見岳の北面。


標識。まだまだ熊ノ平は遠いが。


この辺りから見る塩見バットレスは大きく見えて迫力がありました。稜線の緑とのコラボもよろしい。


塩見バットレスにズーム。


これはクロマメノキという植物。ネットで調べたけど、花はドウダンツツジやコケモモにちょっと似ている。かなりたくさんありました。


稜線の道。進行方向はこんな感じで北部の山々がとても大きい。


進行方向右手に見てているのは白峰南嶺と言われる稜線です。緑深くて南アルプスらしい感じ。一般登山道ではないので藪漕ぎ、ハイマツ漕ぎが普通な上、水場がないので縦走するならスピードハイク、もしくは6リットルとかの水を担いで行くらしい。ちょっとハードル高すぎエリア。笹山だけなら山頂の展望もありそうだし興味あるなあ。


右手後方には、白峰南嶺越しに富士山が見えます。まあ、楽園ルートね。このくらいお天気がいいと。神に感謝です。


後方は下ってきたルートと塩見岳。こうして見直すと、左に伸びる蝙蝠尾根は確かに魅力的に見える。


少し開けだ場所に出ました。大きく崩落している箇所を挟んで北荒川岳を進行方向に見るところです。崩落越しの農鳥、間ノ岳、甲斐駒、仙丈。


南アルプスは、薙(なぎ)と言われる地名が多いですが、崩落している場所を指すようです。今でも年間数センチ成長している山脈だし、降雨も多いので崩落する箇所もおおいのでしょう。南アルプス林道が土砂崩れで通行止めになってバスが止まるのはよくあるパターン。

この日あたりからザックの写真を積極的に撮るようになる。


15分くらい休憩して出発。ここからは崩落地の右に稜線を巻きながら少し下ります。高山植物に加え、まばらに生えた木々と草地のコラボが牧場のような雰囲気。ちょっと標高が高すぎですが。






ただし、こんな高地でも鹿の食害がひどいらしく、元々はもっとずっと多くの花々が咲いていたようです。今では、鹿が嫌うマルバダケブキが増えてしまい、こんな様相です。


5万分の1の地図にもあるキャンプ禁止標識の場所に出ました。元々はキャンプ指定地でトイレだったのかな。熊ノ平まであと3時間って、ちょっと大変すぎよね。


荷物の重さもさることながら、この辺りの時間帯できつかったのは気温。夏場のアルプスを縦走していていつも思うのは、素晴らしいお天気に恵まれた時の暑さによる苦痛。絶景と裏腹。暑さに弱い私はこれが本当に苦しい。歩き始めてすぐに3時間ならどうということはないのですが、既に5時間ほど歩いてきているし、難所もあったし、稜線では太陽が照り付けるし、樹林帯に下りれば風がないし、なによりテント装備重い。縦走の実態は、苦しみが主軸にあって、ちょっと休んで顔を上げると絶景に感動するというものですな。逆ではない。残念ながら。それでも楽しいんだけど。なぜか。

あとはお花。南アルプス固有種でとても可愛いタカネビランジ。山歩きを始めたばかりの夏に鳳凰三山に登ってたくさん見た花です。




崩落地の南側に回ってきた。樹林帯から再び稜線に出て振り返ると、やや小さく見えるようになった塩見岳。ただ、ここから見た方が両翼を広げる形で偉そうで格好いい。赤石岳とか北岳とかの盟主級に比べると地味な山なのかもしれませんが、塩見岳は3,000メートル峰ですからね。やはりでかいです。山頂の岩場感とか、山頂がバットレス的に盛り上がって見えるところとか、北アルプスで言うと黒部最奥の水晶岳に重なるイメージでしょうか。水晶岳は昨年登れず。雨にやられた。


この日は雲もかからず、白峰南嶺越しの富士山はずっと見えています。


そして、北荒川岳に到着。11時頃です。ここで30分ほど休憩。残っていたパンなどを食す。他の登山者は少ないですが、皆さんここでフリーズドライや小屋で購入したお弁当などで昼食を取られていました。なぜここで休憩するのか。それはここが南アルプス最高の大展望台だからです。
仙塩尾根の稜線の開けたとことで、間ノ岳・塩見岳の中間とも言える位置。周囲が広く見渡せるうえ、どの山からも適度に距離があるので3,000メートル峰の巨体が大きく眺められる。つまり、1つか2つの巨体に遮られないでゆったりと全部が見渡せる。
まさにド真ん中にいるという感覚。あまりの感動に、「厳冬期にこの場所にヘリで連れてってくれたら3万円払います。10人くらいのツアーならチャーターできるんじゃないですかね。」とかアホなことを一緒にお昼ご飯食べていた登山者に話しかけたりしてました。
写真ではこの大パノラマというか、ド真ん中感を伝えるのは不可能ですが、一応幾つかアップします。

北部方面。仙塩尾根、緑深くて長い。


間ノ岳、農鳥岳は見えますが、ここからは北岳は見えません。


ボーっと感動していたせいか、この場所での写真はそれほど多くないんですよね。背景の山を変えて自撮りとか、ザック撮りしていて、あまりブログエントリ向きではありません。
むしろ1つ1つの山をズームして撮っている。ビッグマザー仙丈ケ岳。


農鳥岳。ゴツくて渋い。そして大きい。


間ノ岳。ずっと右手前方に見えていて、主峰の貫録。


塩見岳。両翼の広げ方は鷲羽岳に似ているとも言えそう。


塩見バットレスにズーム。


堪能して先に進みます。ここからは再び樹林帯に潜ります。風が欲しい。。。


相変わらずマルバダケブキ優勢の植相。


いい加減疲れてきましたが、遅くとも2時には熊ノ平に着くだろうということで歩みを早めることなく無理を避けます。それにしても風が欲しい。
1時間弱で新蛇抜山というピークへの分岐が出現。ちょっと登りますが、風にあたるために重い荷物を下して空身で登りました。


小さい山頂ですが、風が当たって気持ちいい。周囲も見渡せます。だいぶ夏雲が上がってきてしまいましたね。これはこれで迫力だけど。


仙塩尾根の道。まだ熊ノ平は見えませんが、奥の緑濃い森の中にあるはず。なお、この写真の中央の岩場は地図上で竜尾見晴と書かれているところでしょう。確かに眺望はよかったけど岩場の難所でした。


またまた樹林帯に戻る。南アルプスも小鳥が多くて、鳴き声はずっと聞こえています。でも、姿を見られる機会は少ない。貴重な一枚。


シラビソ樹林帯。この日の最終版。己との闘いに入っている。


ついに1時半過ぎに熊ノ平小屋到着。いやー、長かった。小屋の前にはテラスがあって、皆さんビール飲んで休まれていました。


テント場はやや複雑。3~4張くらいが限界の小さいテント場が幾つか点在しています。遅く到着すると水場やトイレから遠いところに張ることになるでしょう。まあ、張りたい場所は翌日の出発する方向にもよりますけど。私は比較的広くて樹の香りも濃い場所を選びました。


熊ノ平、樹林帯の中の落ち着いた山小屋で、とても雰囲気のあるロケーションですね。針葉樹の香りがとてもいい。水場も小屋脇にあって、水量豊富です。テント張ったら水場で体を拭きました。暑さにやられて汗だくだったし。


夕食。レトルトソースのパスタボロネーゼと卵スープ。パスタには赤やオレンジのミニトマトを入れています。卵の黄身に見えますが。


夕暮れ時。農鳥岳が夕日に真っ赤に染まるのを見たかったですが、残念ながら雲がかかってしまいました。それでも雄大。熊ノ平は農鳥岳の正面に位置するので、凄い迫力です。


この日は疲労もあって7時過ぎから爆睡。ただし、翌朝は早めに目覚めました。私とは逆に熊ノ平から塩見岳方面、三伏峠を目指す人が多くて、その方々は10時間コースに備えて4時前には出発されるので。ということで、私も夜明け前にはテントをたたんで間ノ岳方面に出発しました。
熊ノ平からは、まず400メートル以上と思われる登りで三峰岳(みぶだけ)を目指します。これは山頂というよりも岩の出っ張りのイメージですが、それでも標高は2,999メートル。北アルプスの剣岳に匹敵します。当然森林限界を越えた岩稜になるはずで、晴れていれば景色はいいはず。

ところが、この日の明け方は濃い霧が立ち込めていました。夜明け前は当然真っ暗ですが、やや明るくなってきてもガスが濃くて視界が限られます。こういう状況で森林限界を抜けて稜線にでると、道を見失う恐れが高まります。北アルプスや八ヶ岳と違って歩いている人は私だけ。慎重に前方を確認し、ペンキのマークなどを探します。風もそれなりにあって、緊張しながらすすみました。
まあ、それも1時間くらいだったでしょうか。日が昇ってくると地面が暖められて上昇気流が出たのか、徐々にガスが上空に抜けてくれました。進行方向に三峰岳らしきものも見えてきます。


右手を見ると、間ノ岳と農鳥岳のあいだの鞍部に富士山が。






農鳥岳自身はまだガスの中。


ガスで神秘的な感じの三峰岳に向けて歩く。


そして三峰岳登頂。後に控えるはボスキャラの間ノ岳。間ノ岳は3,190メートルなので、まだ200メートルほど高いのです。スケール大きい山域だ。


山頂ケルン。雲海見事。ザック写真シリーズです。どうも格好良くないですが。


農鳥岳、富士山方面。やはり絶景展望台ですね。


塩見岳、荒川三山方面。三伏峠も見えていると思います。だいぶ長い距離歩いてきたな。


それにしても、毎日お天気に恵まれてありがたい限り。やはり熊野三山と赤城山のお守りのご利益か。
何より、北岳から間ノ岳までは歩く人が結構いると思うけど、絶対仙塩尾根方面がお勧めですね。この景色は見られないですよ。こっちを歩かないと。農鳥岳のガスも完全に晴れましたね。


なお、この写真の手前からガレ場のバリエーションルートを下ると、大井川の最初の1滴が生まれる源流にたどり着きます。これまたスケールでかい話だ。
こちらの写真だとイワツメクサの先の谷底に沢が見えますが、これが大井川源流ですね。


イワギキョウは絵になる。


タカネツメクサも。後の谷は右俣沢だったと思う。


標識。私は間ノ岳を見ながら仙塩尾根を歩きましたが、こっちから塩見岳を見ながら行くのもいいかもしれない。


アルプスの定番、チングルマ君が風に吹かれる図。早朝のアルプスの空気感が伝わるのではないでしょうか。この手のシーンを見たことある人は多いでしょう。登山趣味なら。場所は間ノ岳ではないかもしれませんが。


そしてついに間ノ岳登頂。初日から様々な場所から眺め、その大きさと格好良さに感動してきた山です。流石は百名山の一角で標高日本3位タイ。そして、その背後には標高2位の盟主、北岳が見えているという。その奥の甲斐駒ヶ岳が小さく見えるという。


ここで自撮りしない人はいない。


ついに間近に北岳を捉えました。7月初旬に登り、自分の贔屓の山トップに躍り出た感がある雄大かつ繊細な山です。


東側にはケルン越しに雲海に浮かぶ富士山が美しい。


間ノ岳、感動の展望台です。間ノ岳自体がかなり格好いいと思いますが、富士山含めて周囲にスターが多く、大きな谷が切れ込んでいることもあって眺めがとてもいい。山頂が広いからあっちに行ったりこっちに行ったりして眺めたり写真撮ったりしていると、1時間くらい直ぐに経ってしまう。

仙丈ケ岳と甲斐駒ヶ岳方面。こっちはまだ雲が垂れ込めてますね。


農鳥岳、仙塩尾根、塩見岳、荒川岳、そして南部の山々。うーん、南アルプスグリーン&ブルー。


ズームすると、荒川岳の奥に赤石岳も確認されます。ここからの方が角度的に見えやすいんですね。こっちの山域は公共交通機関だと行きにくいからなあ。高山植物の綺麗な時期に行ってみたいけど。


ゴツくてどっしり農鳥岳。北アルプスに例えると五竜岳とか赤牛岳ですかね。


仙塩尾根を確認したくてこっちの方面を眺める。仙塩尾根は長大で、今回は仙丈ケ岳と三峰岳を結ぶラインは歩いていません。そこだけで丸1日以上かかります。この写真の左手前から伸びている尾根で、雲に隠れた仙丈ケ岳まで。


奥には北アルプスも見えています。向こうからもこちらを見ていることでしょう。


北岳、ボーコン沢ノ頭から池山吊尾根方面と、その後ろに鳳凰三山。3年前に山歩きを始めた年に登った時にはとてつもなく大きな山だと感じた鳳凰三山ですが、こうして見るとやはり南アの主峰ではない。前衛峰ですね。それにしても雲海凄い。


うーん、日本か、ここは。


富士山があるから日本だな。なお、写真でも分かりますが、ここまで来ると急に登山者が増えます。大学の山岳部やサークルらしい集団もいます。


朝日と富士山。自分的富嶽三十六景に入ること間違いなし。


ザック写真シリーズ。まったく、シューズもザックもお疲れ様です。ホントに。


さて、十分堪能したら北岳方面に向かいましょう。途中の北岳山荘にテントを張り、北岳山頂を再訪する予定です。


途中にあったトウヤクリンドウの大株。


北岳は南アルプスの中では山頂が尖っていて、ちょっと雰囲気違いますね。


甲斐駒と北岳。鞍部に北岳山荘が見えてきました。


この北岳~間ノ岳稜線の美しさは自分史上最高の稜線と言ってもいいかもしれませんね。1日目のエントリに書きましたが、山歩き始めた年の雑誌の特集記事で使われていた写真は、この稜線の写真でした。そういう意味で、憧れの稜線を歩いています。荷物は重いですが。
次のエントリでは、3日目の行動の中で北岳登頂から先をカバーする予定です。4日目についてはどこまで書くか決めてませんが、アップする写真の枚数によります。