一陽来福  ~齋藤一陽による截金の日々~

伝統工芸。截金職人齋藤一陽が、日々の物創りの様子を紹介します。

お道具考-炭-

2011-03-11 00:05:00 | お道具考-截金工程を探る-
截金につかう金箔は、
薄い箔を何枚か炭火で焼き合わせ、初めて截金ができる状態になります。
金箔はたたきあげられ薄く延ばされたもの、
それを更に焼き合わせることによって、強さが現れるのです。

昨今、アイロンや電熱器で焼くのが主流なようですが、やはり一度炭火の味を覚えしまうと、やめられません(笑)
それは、ふっくらと温かみのある色に焼きあがること。
そして、ちりめん状の風合がなんとも美しいのです。
これは、電気の力では、出ない味のようなものなのです。

ですがそれはそう拘りといった難しいことでもなく、
単純に炭火で焼いたとうもろこしは美味しいですよね?

ただそれだけの事なんです^^

とはいえ、炭にもいろんな種類があります。

こちらの炭は、手あぶりにしたり、暖をとることに使っている炭なのですが、どうやら練物のようです。硬く、永くいつまでも温かにしてくれるので、お気に入り。
少したどん(炭団)のような感じなのかもしれません。

鋳こします。

硬いのですが穴が開いているので、比較的火が通りやすくなっています。


こんな感じで部屋を暖め。


接着に使う膠(にかわ)を溶かしたりしています。

金箔を焼く炭は、紀州の備長炭を使用しています。
節が無く、真っ直ぐなもの。


密度が細かく、硬質で、指で弾くとキンっ♪と鉄琴のような音がするものが望ましいです。

まるで黒いダイヤのように光っています^^

緩やかな土手を作り、カンカンに熱くなって真っ赤になった炭を横たわらせます。


灰(藁灰)を調節して金箔を炙り、焼き合わせていきます。


手あぶりの火鉢は金属製ですが、金箔を焼くときの火鉢は木製枠を使っています。
どうしても。という訳では無いのですが、金箔との相性を考えた配慮です。
焼物の火鉢の時は素焼きのものを、釉薬のかかっているものは、やはり控えています。

金箔を焼くときの温度の感覚は、言葉では説明できません。体で覚えていくしかありませんね。私もその都度少しずつ覚えています。何年焼こうが、何枚焼こうがこれで良し、という日は来ないのですね^^

何にしても、素材たちがどのような性格をしているのか、よく知って、相手のことを考え、
お付き合いをすることが、とても大切なことだと思うのです。




次回のお道具考は金箔。をお伝えします^^

お楽しみに~~???



着付け教室をはじめたお友達たちがリンクを貼ってくれました。
「ふあふあくらぶ 奈良の生駒で着付け教室・苔盆栽・パン教室」
http://ameblo.jp/fuwafuwapannookurimono/
京女さとこはんは一陽の帯留めを身近に実際に使って下さっています^^
記事で紹介してくださいましたhttp://ameblo.jp/fuwafuwapannookurimono/entry-10820091491.html
ありがとうございます。

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膠(ニカワ)。

2009-03-30 22:25:12 | お道具考-截金工程を探る-
今年1月の31日2月1日。
日本画、伝統技法と画材を学ぶ。日本画家集団『』の勉強会を受講してきました。
一日三講演が1000円!大変お得です!!
①表具について
②色の化学
③墨の不思議
④画家と歩んだ道のり
⑤和紙を漉く
⑥美術製作者の為の~(いろいろ^^;)
墨の講座では、お土産の墨までいただいてしまいました。

印象深かったのは、和紙職人さん「林伸次氏」による黒谷和紙の実演と和紙ができるまでの細かい過程が他ではあまり聞けないほど、詳しく説明されていました。

あとは奈良、墨運堂会長「松井重徳氏」による墨のお話ですが、截金にも関係のある膠の話が重きにおかれ、とても興味深いものでした。
膠は日本画には絵の具を定着、発色させる?大変重要な材となります。

截金には、金箔を貼り付ける為の接着剤となっています。

まずは最近の動物達の様子から、とれる膠の質が変わったこと、そして抽出する技術までも変わってしまい、それに伴い現在の墨の劣化につながっているということです。なにせ膠にたずさわる日本の技術者が居なくなりつつあるということで、それを伝承すべく、墨をつくる方自らが膠を作っておられるという訳なんです。
膠=ゼラチンではあるのですが、一概にゼラチンというだけでなく、様々な要素が含まれている。その細かい要素を取り出すにあたり、膠の種類はもちろんのこと、抽出する温度によって変わってくること、また抽出したそれらをどの比率で合わせるかという点で、経験と技術が必要ということです。
墨には滑らかな繋ぎ(第一コラーゲン)という要素が、特に必要なようです。

截金は日本画や墨ほどの膠による繊細さは求めませんが、それでも色々と試してみたものです。
口ではなんとも説明のしようのない、目や指先の感触などで吟味しながら私なりに探しあてていきます。
今年は炭火で温めることをやってみました。尽きる事はありません。
私は直火派で、ぷつぷつと泡がでるほどには高温に温めます。前日漬け置き無しを好んでいます。
ということは、墨に必要な第一コラーゲンという、滑らかさ(もしかしたら耐久性に繋がるもの?と考えています)は失っている溶かし方になっています。
ま。そもそも私の使っている膠にその要素が含まれているかどうかも判らないのですがね^^
今後もまた色々と工夫をしてみるつもりです。


画像は、いただいた墨(まだ改良中の)
膠は普段私が好んで使っている板膠と直火できる片手付きココット^^です。



と、いつも為になる勉強会を開いてくださる、ありがたい『尖』さんですが、
第15回 日本画  の作品展が行われるそうです。
京都市美術館1F
4月7日(火)~12日(日)
AM9:00~PM5:00
ギャラリートーク11日(土)・12日(日)PM2:00~
入場無料

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箔合紙

2009-03-07 00:27:17 | お道具考-截金工程を探る-
私の金箔へこだわりは、五毛箔、縁付きを使うことにあります。
五毛というのは、ほぼ99%の一番純度の高い金箔で、縁付きというのは金箔より間に挟まる紙が大きくて縁の出るものをいいます(ちなみに縁の無いものを断切といいます)。
これらは上等で、少し高くなるのですが、截金をする際これで無いと絶対出来ないというものではありません。
わざわざ無理をしてまで、使う必要あるの?と周囲からの意見もありました。
でもどうしても、やはり他に変える事が出来ませんでした。
だいたい挟まっている紙の感触からして、納得がいきません。
いつもこの挟まっているだけの紙も大切にボロボロになるまで使っていたので^^


その紙を箔合紙といい、岡山でそのほとんどを作られている和紙です。

そんな時、岡山の田中美術館さんで昨年春に実技講演をさせて頂いたのですが、終わりの質疑応答で出ました^^;
『何故こだわってその縁付きの箔を使うのですか?』
というご質問です。
正直なところ、厳密なことはわかりません。ただ一緒に過ごしていて何かが違う、気持ちのよい材なのです。と応えました。どうせ一緒に過ごすなら気持ちのよいものと過ごしたいともお伝えしたように思います。
実は後から、その箔合紙という貴重な和紙を作られている職人さんだと知らされました。ひえ~

ふつうあぶらとり紙などで知られている和紙は雁皮系の箔打紙といって、金箔を叩いてのばす際に使われているものです。その後職人さんの手作業で金箔を四角く切られ、この箔合紙という紙が挟まれてゆきます。この紙は金箔を傷つけることなくしなやかでやわらかく繊細であることと同時に、紙肌は程よく粗くコシのあることの求められる三椏系手漉き和紙なのです。
これが断切の箔になると、薬品の塗られた特殊な洋紙で挟んで機械で叩き、そのまま機械で裁断されてゆくので、紙はまるで違うものになります。箔の厚さも手作業より厚手のものとなるようです。

最近1000分の3ミリ程度の段階にまで延ばされた「澄(ズミ)」と呼ばれるまだ、厚い段階の金箔でも截金は可能であるというのは分かりました。ですがやはり、金は叩かれることによって強くなる。そして薄く延ばされたものをまた何枚も重ねて焼き合わせることによってまた強くしなやかになるのです。

私のささいなこだわりだったのですが、さらに沢山の職人さん達と今この時も手を繋いでいれたようで、ほんとうに幸せだな~と思うのでした。
ありがとうございます。

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冬のアイテム誕生。

2009-02-06 19:41:17 | お道具考-截金工程を探る-
冬のキリ金は、膠がゼリー状になってしまうので、毎年苦労しています。
なにせ金箔ですから、風が出たり、空気が対流してしまうような暖房器具はもちろんバツなので、火鉢はよく使っていました。
が、今年はふと思いついて、ステンレスの板を渡してみると~
なんということでしょう!!毎年の難を解消です~
今までは湯煎や電熱器などで温め返していました。しかし水分を取られ糊である膠や布海苔が濃くなって、これまた問題だったのですが、今では手間無くうまく温度調節ができるようになりました。
最近では、膠まで炭火で溶かしています。これもまた具合が良いのです♪

お道具考

2007-03-21 21:21:10 | お道具考-截金工程を探る-
兼ねてから。鹿皮でなく箔盤は作れないものか?と考えておりました。

金箔を細く切る為の箔盤は、春の子鹿の首の皮が良いとか(;_;)
箔盤を作るのに、一頭分の子鹿の命なのです。


最近。とても丁寧なお仕事をされている、表具屋さんに出会いました。
今時は機械表具などが普及されたり、手仕事でも随分な荒げたなそうです。
良いものは、時を生きていきます。時の中で姿を変え、味わいを出してゆきます。
けれども機会表具なんて、僅かな時間にゴミです。
皆さん、知ってか知らずか安い方が良いそうなのです。そして、本物の職人さんは絶えてゆきます。
そんな中。不屈の精神でお仕事されています。


表具には実に色んな紙を使い分けているそうです。江戸時代の和紙も使っておられました。
しかし近年に近づくにつれて、紙は切れやすくなっているのです。
考えてみると可笑しくなって。
今時の人はまるで進歩でもしているかのように思っているけど、実に衰退していて、日本という国は技も伝統も失ってゆくつもりなのでしょうか?

こんなちっぽけな私ですが、ありがたいことに力をかして下さる方もいて。
大げさですが、私の生涯は截金に。
そんな覚悟を決めています。


話は戻りますが、そんな素敵な表具職人さんから、色んな紙の切れ端をいただきました。
感触から、箔盤に使えそうな紙がありました。
これから色々試しでいきたいと思っております。

ヒバチ。

2007-03-01 20:34:38 | お道具考-截金工程を探る-
火鉢がやってきました。いただいてしまったのです(^^;)。。。
2月28日は、日がよいということで火入れを行いました。

明治時代の職人さんの手によるもので、丁寧なお仕事に感じます。模様も四面違った植物があしらってあります。

(*^_^*)大切にします。

火鉢は、備長炭をおこして金箔を焼き合わせるのに使っています。
今年は仕様に合わせて、金箔の量を加減してみるつもりです。