改憲勢力と戦う「国民投票」を考える

2017-06-11 08:46:46 | 日記

    改憲勢力と戦う「国民投票」を考える

  

  衆参両院の憲法審査会で地道な論議が行われている最中に、首相である安倍晋三氏は「自民党総裁」という肩書を使って憲法「改正」の旗を振りあげた。あたかも、首相夫人が「私人」と「公人」を巧みに使い分けるように、安倍氏もまた「自民党総裁」と「内閣総理大臣」の二つの立場を都合良く使い分けている。本来、内閣総理大臣は憲法を遵守し、憲法に拘束される立場であるにも関わらず、政治家「自民党総裁」としての主張を広めようとした。これは政治家としてアンフェヤーな振る舞いと言わざるを得ない。

   そしてその発言の内容であるが「憲法第九条の1項・2項をそのままにして、なおかつ2項に自衛隊の存在の「明文化」をはかると報じられている。さらに新憲法の施行を「2020年オリンピックの年」とするとの発言をした。このことはオリンピック憲章で禁じている「政治への利用」を犯そうとしている。また憲法学者の多くが「自衛隊は憲法違反である」としている法理論を、憲法に書き込むことによって否定しようとしている。まさに「学問の自由」を侵すものである。そして現在の自衛隊の『体』はそのままにして、専守防衛を超える『軍隊に衣替え』をさせることに狙いがあることも間違いない。

   いずれにせよ、改憲は「国会の発議」により「国民投票」に付される。しかも自民党内の動きは、安倍首相の発言を受けて「国民投票への実施を急ぐ論議」へと加速されている。国民投票法の審議は残るが、公示されてから投票日までの期間は一応60日から180日間という目安がある。この期間が長いか、短いかの論議はあるだろうが、その運動期間をやり抜く「体力と知恵」が私たちの側に作り切れるかということである。

   通常選挙の地方議会選挙は7日間、国政選挙は参議院が17日間、衆議院が12日間である。しかも国民投票は通常選挙と異なり「戸別訪問」は自由であり「情宣活動」も自由である。その運動の量と質は大幅に拡大される。当然にして行動力が試される。しかも告示前の前段の取り組みを加えればまさに長期戦である。もはや集会を開催する。あるいはチラシをポストに入れるなどでは対処できないだろう。家庭訪問、信書活動、街頭での呼びかけを含めた地道な粘り強い行動が必要とされる。まさに「金力・権力」を総動員する改正派との戦いになるだろう。

   マスコミによる最近の世論調査がある。数年前までの調査では「憲法改正反対」という世論が過半数を優に超えていた。しかし今や拮抗、あるいは改正賛成が反対を上回る勢いとなっている。「黙していれば、結論は見えてくる」といっても過言ではない。

   私たちの中には「我が身にかかわる、きついことには口を閉ざし黙って時を過ごす」という傾向がある。かつて経験をした60年・70年安保闘争のそれは職場生産点でも展開された。そして国民的な大きなうねりはそれを支えた。しかし今や労働組合においても「政治学習会」は皆無となった。ある基幹労働組合の調査によれば支持政党の第一党に自民党を上げていることも明らかになっている。

   さらに安倍政権への支持率は20代が最も高く、30代以降も若いほど高いことが世論調査でも明らかになっている。ここの層にどれだけ食い込めるか。「国会発議」が時間の問題となりつつある今、このことを本気になって考え、討論をしなくてはならないと思うが、どうだろうか。