業務日誌

許せないヤツがいる 許せないことがある
だから倒れても倒れても立ち上がる立ち上がる
あいつの名はケアマネージャー

(つづき)訊ねるのはやめてくれ

2006年10月15日 | 業務日誌
ドアを開けた瞬間に思わず
「!すみません、部屋を間違えました!」
と慌てて閉めてしまったほど激変わりしていたトシオさんの居宅。
部屋の中から照れ臭そうに
「ハリケンさん、間違っとらんのじゃい!ここはワシの部屋じゃい!」
と家主トシオさんの声。


「田中さん、どうしたんですこの部屋は?」
と聞く私に、トシオさんは言い難(にく)そうにモゴモゴと説明してくれました。


実は、こないだ入院していた頃から付き合っていた彼女が荷物を持って来たんじゃい。でも一緒に住んでいるワケではないんじゃい。彼女は、週に1度遊びに来る程度の付き合いじゃい。

私、心の中で叫ぶ。
このウソつきジジィ!
どこの女が、こんな山のように家財道具を持って遊びに来るというのだ。
どう見てもあんた、これは同棲している男女の部屋だぞ。

ま、トシオさんのバックレには理由があります。

そう、トシオさんは実は「ナマホ」です。
※わかりますよね?
ナマホの方に同居人が出来ると、まあいろいろと面倒な問題が起きます。
また、現在週に3回組んであるヘルパーの利用も、場合によっては減らさなくてはならないかも。
私はトシオさんのウソにはあえて突っ込まず、平静を装って来月の利用票を出して聞いてみました。
「来月も今月と同じ利用でいいですか?彼女が来るのなら、買物とかお料理とか、サービスは少し減らしてもいいのでは?」
でもトシオさんは
「彼女はときどき遊びに来るだけなんじゃい。料理や洗濯をしてくれるわけではないんじゃい。だから先月と同じようにヘルパーに来てもらうんじゃい。」

あくまでもシラを切る。

ふん、それならそれで結構。
とりあえずヘルパーは明日から再開し、ちょっと様子を観察することに。


次の日。
トシオさん宅に派遣された鼻くそが報告にやってきた。
鼻くそにはあらかじめ事情を説明しておき、余計な詮索をしないようにクギを刺してありました。

鼻くそウォッチングにより、やはりどう見てもトシオさんと彼女は同居しているとしか思えない事実が浮上。
鼻くそは
「台所にさあ、韓国産の袋ラーメンがあったし、本棚(以前はなかった)にはハングルの辞書もあったのう。」
うーん、トシオさんの彼女は韓国の方なのか。
「私が思うにさあ、たぶん、彼女の作るお料理は、トシオさんの口に合わないんじゃないかなあ。それでやっぱりヘルパーが必要なのかもお。」
ふーむ、それは考えられる。鼻くそよく見てるなあ。
だとしたら、やっぱりサービスを減らすワケにはいかないかなあ。
ところが..............................
鼻くその次の報告を聞いた私、仰天。

「それでさあ、私がサービスに入っている間なんだけどう、トシオさん宅の台所脇の小部屋(※3畳ほどの和室)にさあ、彼女がじっと潜んでたのよう

!!

おいおいおいおい。

「仕事がやりづらいったらないのよう。その部屋から物音はするし、トシオさんは気を遣ってか無言だし全然気が休まらない様子でビクビクしてるしさあ、、こっちは知らないフリしなきゃならないし、もう同居してるならしてるでいいし、私たち別に(区の)ナマホ課にチクったりしないからさあ、ハリケンさんからちょっとそう言ってみてくれないかなあ。」

あたたたたたたた。

これはいかん。
こういう状況でヘルパーを派遣するというのは何かとトラブルになる可能性大だし、かといってケアマネもヘルパーも公認のナマホ不正受給という事態も困る。ここはひとつ、トシオさんの担当ケースワーカーにそれとなく、訪問でもしてもらうようにしてみっか。
あの部屋を見れば同居してるのは一目瞭然だし、それでケースワーカーがどう動くかでこっちも対応を変えていけばいい。

よし、電話電話。トシオさんの担当は吉田さん(仮名)。なかなか話のわかる、親切なワーカーさんだ。きっと何か解決策を考えてくれるだろう。

しかし、私が電話をかけてみると、いつもはフレンドリーな吉田さんの態度がカタい。会話も一方通行で、なんだかこっちの出方を探っている様子なのです。こりゃ何か知ってるなと思った。
私は私で、なんとか本当のことは言わずに吉田さんを訪問させようとしているものだから、どうにもギクシャクした話し方になってしまった。
こういう駆け引きって大嫌いです。
私は、以前ちょっとトシオさんに聞かれたことのある、浴室の住宅改修のことを引き合いにして、新米ケアマネなので手続きがよくわからないのでと言い相談してみたフリをしました。その話も済み、会話が途切れたところで本題へ。

私「ところで吉田さん、最近田中トシオさんのお宅には行かれましたか?」
吉田CW「ええと、いいえ、7月末以来伺ってませんねえ」
私「そうですか。実は最近トシオさん、部屋の模様替えをされたようなのです。なんでも親しいお友達が出来たとかで、その方から色々と家財道具をいただかれたようで、すっかり様子が違っていますよ。」
吉田「へへえ、どんなお友達なのでしょうか」
私「…それは…よく存じませんが、じょ、じょ、女性かも知れません…」

ここでしばし沈黙。

吉田(大きく息をつく音とともに)「実はハリケンさん、ついさきほどトシオさんからお電話をいただいたんです」
私「は?トシオさんからですか?」
吉田「そうです。相談があると言われました。」
私「はー、どんな相談なんでしょうか」

吉田「結婚したいとのことでした。」





!!!!結婚!!!!





いえ、結婚はいいんです。
どんなにご高齢でも、どんなにク○ジジィでも、恋愛は自由ですし幸せになる権利はあります。喜ばしいことです。
もしかしたらそのうちヘルパー不要になるかも知れません。介護保険は出来ることなら使わないほうがいいというのが主義のハリケンとしてはお目出度いお話でございます。
トシオさん、福祉用具だけの利用になるかも知れない。
これまで何度もヘルパーや事業所を替え、その都度頭を下げまくってきた私や前任者の苦労も報われる(か?)。ほぼ毎日かかってきていた電話からも解放される。
ブラボー結婚!万歳(マンセー)!!!!!




ただ問題は




トシオさんのお相手の女性が



不○滞在者(オーバーステイ)だということです.....................。
(※吉田CWがオフレコで教えてくれました。というか逆に相談されちゃいました。私も「じじじじじ実はもう同居なさっていると思われます」と白状しちゃいました。…吉田CW絶句でした。)


ここで前回のブログの冒頭でご紹介した本 Q&A在留特別許可 愛する人と日本で暮らしながらビザを取るには? に戻ります。
そして、この2部作のタイトルを繋げてみましょう。
浜田省吾の名曲「LONELY」の歌詞ですね。

ハリケンらしからぬ、歯切れの超悪いブログで申し訳ございません。
トシオさんのハッピーウェディングによって、困難事例から逃れられるかもという甘い夢を見ていた私でしたが

................余計にアタマを悩ませられることになりそうです。

…こんなオチはイヤです(泣)