学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

台風のなかで

2019-10-16 21:16:34 | 仕事
天災とはつくづく恐ろしい。10月12日から13日早朝にかけての台風19号の甚大なる被害を目の当たりにするに、道路のいたるところは泥にあふれ、ゴミが散乱し、川の堤防の側面は大きく削れている。私が勤務する美術館はやや高台にあるので被害はなかったが、街のなかは被害が大きく、外へ出るたびにとても心が痛む。

全国津々浦々の美術館で水害にあったケースはあまり聞いたことがない。だが、これだけ天災が多いと水害へのリスク管理も見直されなければならないだろう。仮に美術館が洪水に見舞われたとき、最も懸念されるのが展示室と収蔵庫にある作品の被害である。そこで2018年の西日本豪雨で注目された大原美術館のリスク対応が参考になる。大原美術館は、倉敷美観地区の運河沿いにあり、常に水害のリスクにさらされている。そこで同美術館は、倉敷市のハザードマップを元に、防水壁を導入しているほか、万が一のときには地下に展示されている作品を収蔵庫に戻すといった対応をマニュアル化しているという。

おそらく、どの美術館でも水害を防ぐためのマニュアルはあるし、実際に私が勤める美術館にもある。今回の台風では、そのマニュアルに沿って、作品を守るために収蔵庫の施錠を再度確認したほか、部分的に作品を上階へ運んで被害を最小限度に抑えようと行動した。こうしたマニュアルも、いざというときに動けなければ意味がないし、さらに、より作品を安全に守る方法がないかどうかを適宜検討していく必要がある。大原美術館の防水への意識の高さを私自身も学ばなければならない、と今回の台風を目の当たりにして感じた。