学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ガラスの天井

2019-10-06 20:28:20 | 仕事
9月30日の日本経済新聞に「〔ガラスの天井〕美術館も破ろう」という記事が出ていた。「ガラスの天井」というのは、働く女性が職場で昇格するうえで見えない壁があるという表現である。記事によると、全国の美術館の学芸員の割合は女性が多いものの、美術館の館長となると男性が圧倒的に多いという現状を取り上げていた。(2018年の文部科学省の調査によると、男性に対して女性の学芸員は60%であるが、館長職の女性の割合は20%以下に下がる)実際、私の職場も、周りのお世話になっている美術館の学芸員も、圧倒的に女性の学芸員が多く、そして館長職は十中八九男性である。

私の経験上、館長職に至るまでにはおおよそ3つの道があるようだ。ひとつは、勤務している美術館の学芸員が昇格して館長職に就くもの。2つ目は、他の美術館や大学で研究の実績を重ねてきた人材が招へいされて館長職に就くもの。3つ目は、美術館とはあまり関わりのない行政職が人事異動で館長となるものである。私の手元に正確なデータがないために想像でしか言えないが、印象としては2つ目のケースが全国的に多いように見受けられる。学芸員として働いている私の立場から言えば、美術館として理想的なのがひとつめ。その美術館の収蔵品にも熟知しているし、問題や課題は把握しているし、なにより市町村民との信頼関係を築けていることが大きな強みになるからだ。

私は、女性の館長職の比率を着実に上げていくならば、このひとつめの道を推進することが現実的であると考えている。というのは、単純に考えれば60%の女性の学芸員がそのまま昇格して館長職に就くことができれば、男性と女性の館長職の比率はほぼ五分五分になるからだ。さらに地域創生が大きな目標になっている現在の行政側としても、上記のようなスキルを持った学芸員を館長に昇格させることができれば、地域のためにも大いにメリットがあるから喜ばしい。もちろん、館長となるからにはマネジメントのスキルが必須だ。男女問わず、学芸員のうちにそうした経験も積んでいく必要があるだろう。現状では、今すぐに「ガラスの天井」は破れないかもしれない。だが、近いうちに破れるのではないか、というのが現場で働く私の実感である。
コメント
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