速水御舟の『梯子を登り返す勇気』が平凡社ライブラリーで復刊された。そこに「呼吸」という短文がある。御舟は「画業においても呼吸の一致なくして健康な作品は得られない」と記す。と書くとやや唐突だろうか。作家は様々な表現方法を学んだら、それを作品として昇華させなければならない。その循環が重要であるということ。御舟は、これを吸う、吐くの呼吸に例えたのである。
数年来、足を運んでいる団体展を見に出かけた。ある団体もしくは公募展を継続して見ていると、頭の中で去年の作品が思い浮かび、作家が1年間をどのように絵と向き合って過ごしたのかが、良い意味でも悪い意味でもわかる。会場の終わりにさしかかったとき、御舟の先の言葉を思い出し、それがより具体的に迫ってきた。息の吸い方が足りないとマンネリズムに陥りやすく、吐き方が多いと作品を支える土台が揺らぎやすい。そのバランスを取るのがいかに難しいのかを。もちろん、作家すべてが「呼吸」をする義務などないし、強制されることでもない。だが、「呼吸」のある作品は、やはり見ていて心地よいのも事実である。御舟の言葉は軽いようでいてとても重たい。
8月も末。日中は相変わらずの暑さが続く。だが、この頃は朝晩と涼しく、特に夕方は庭先から虫の音が聞こえ始め、少しずつではあるが、しかし確実に秋の訪れを感じるようになった。過ごしやすくなってきたところで、今年も方々の美術館へ出かけてみたい。「芸術の秋」が楽しみである。
数年来、足を運んでいる団体展を見に出かけた。ある団体もしくは公募展を継続して見ていると、頭の中で去年の作品が思い浮かび、作家が1年間をどのように絵と向き合って過ごしたのかが、良い意味でも悪い意味でもわかる。会場の終わりにさしかかったとき、御舟の先の言葉を思い出し、それがより具体的に迫ってきた。息の吸い方が足りないとマンネリズムに陥りやすく、吐き方が多いと作品を支える土台が揺らぎやすい。そのバランスを取るのがいかに難しいのかを。もちろん、作家すべてが「呼吸」をする義務などないし、強制されることでもない。だが、「呼吸」のある作品は、やはり見ていて心地よいのも事実である。御舟の言葉は軽いようでいてとても重たい。
8月も末。日中は相変わらずの暑さが続く。だが、この頃は朝晩と涼しく、特に夕方は庭先から虫の音が聞こえ始め、少しずつではあるが、しかし確実に秋の訪れを感じるようになった。過ごしやすくなってきたところで、今年も方々の美術館へ出かけてみたい。「芸術の秋」が楽しみである。