学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ひさしぶりの日本民藝館

2017-01-30 21:31:24 | 展覧会感想
東京に縁もゆかりもない私ですが、駒場東大前駅には親しみを感じています。なぜなら、一時期この駅をよく利用していたためで、と書くとなんだか私が東京大学に通っていたかのような誤解を与えてしまいますが、私が通っていたのは日本近代文学館のほうで、調べものをするために開館と同時に入室し、昼ごはんも食べずに夢中になって閉館近くまで調査をしていたものでした。

今回の目的は日本民藝館で、こちらは約10年ぶりの再訪です。建物の前で日本民藝館を眺めると、相変わらず威厳があって、その風格に圧倒されそうになります。けれど、玄関(入口)の戸をがらがらと開けて室内に入ると、目に入るのが左右に分かれる階段であって、それが「あなたを待っていました」と話しかけてくれているような気がしてとてもうれしい。

日本民藝館は基本的に1階が2室、2階が5室程度の部屋に別れていて、それぞれのテーマに基づいて作品が展示されています。他の博物館や美術館と違うのは建物があって作品がある、というよりも、作品があって建物があるという調子のところで、「民藝」のコンセプトのなかで建物と作品の調和が見事になされている点にあります。また、展示作品として軸ものや陶器、染織、版画などを扱う割にはガラスケースを多用していません。ゆえに私たちと作品との物質的な距離が近く、細かいところまでじっくり観ることができます。私などは作家との精神的な距離も近くなったような気持ちになります。キャプションも極めてシンプル。タバコの箱よりも小さな黒い板面に、タイトルと作家名、制作年などの必要最低限の情報だけが朱書きされています。日本民藝館に来ると、不思議な事に解説が無くても違和感がありません。もしも日本民藝館に、この作品は云々、と解説があったのなら、なんだか野暮ったく感じるかもしれない。日本民藝館の主であった柳宗悦の目が、今も行き届いているかのようです。

さて、肝心の展覧会の中身についてはまだふれていないのですが…今日はここまでにして、後日書くことにいたしましょう。





ひさしぶりの講師

2017-01-25 20:50:34 | 仕事
ひょんなことから、久し振りに講座の講師を務めることになりました。講座の内容は、ある江戸時代の絵師について述べること。私の専門からはまったく外れているのですが、美術系ならとりあえずできるだろうと依頼された次第です。

まず、日本史及び美術史の年表をひっくり返して、その絵師の生きていた時代を追っていく。次に評伝(戦後すぐに書かれたもの一冊しかない)を紐解いて、参考文献を頼りに絵師の作品や資料にあたる。ところが、もちろんのこと、すでに60年前近くに書かれた内容なので、かつての所蔵者はすでに亡くなっていたり、変わっていたりして、個人所有の作品や資料自体は所在不明がほとんど。けれど、幸いなことに、私はその絵師の作品を所蔵する博物館や美術館で実物を何度か観たことが有るので、その印象を受講者には伝えることができそうです。

もっと深く調べたいのですが、難関がひとつ。それは漢文のこと。絵師の作品の多くには漢文による賛があり、詩画一体とする南画の作品を解釈する上で内容を理解することは必須。けれど、その漢文がなかなか読めない…。これはひとつの語学を学ぶようなものですから、なかなかどうして手強いのです。

詩も画もどちらも解釈しなければならない…想像以上に大きな山に取り組んでいる気がしています。

漫画を読むこと

2017-01-18 22:30:57 | その他
最近、『H2』といふ漫画を読んでゐる。ひと昔前まで、漫画は子どもの読みものと相場が決まっていたが、今は大いに出世して、大人も臆せず読める時代になったことを感謝しつつ、私も平気な顔をして読んでゐる。ただし、勇気がないので家で楽しむばかりなり。

『H2』は、あだち充さんの描く高校野球の漫画である。登場人物の国見比呂と橘英雄の頭文字Hがタイトルの由来なのだらう。あだち充さんといへば、『タッチ』が知られてゐるが、私にとっては『H2』のほうが懐かしくて親しみが湧く。私が学生の時分、教室での前の席に、坊主頭で背の高い運動の得意な同級生がゐた。彼がしきりに読んでいたのが『H2』で、私も彼から漫画を借りてよく読んでいたものである。

さういふ思い出が頭のなかをよぎりつつ、久方ぶりに読んでみると、『H2』の世界にはおっとりとした時間が流れてゐて心持ちが良い。コマとセリフに無駄がなくて軽快であるし、人物たちの言葉の掛け合ひは絶妙である。さらに言へば、人物の描写は筆のやうに、やわらかでなめらかなタッチであり、それが人間の温かみのやうなものを感じさせる。

あわただしい職場での一日を終へて、家で夕ご飯を食べたあとも、私はまだ漫画を手に取らない。私が漫画を読むのは、布団のなかにもぐってからと決めてゐる。薄明かりのなかで、空想と現実と夢のなかを行ったり来たりするのが好きなのである。いつも必ず夢の世界が勝つけれど、意識はいつのまにか薄れて、心地よい眠りに落ちてしまふ。今宵もそんな夜を過ごさう。

ヨガの初心者

2017-01-12 21:49:16 | その他
今年になってからヨガを始めました。始めた理由はふたつ。ひとつは、年始明けに前かがみの前屈姿勢をしたら手が床に届かなかったこと…。ふたつは、若干調子の悪い自律神経を整えるためです。

私はものぐさなので、レッスンには行かず、ヨガの本を買って自宅で少しずつ始めています。普段は絶対にしないであろう奇抜な体の動きをして、腹式呼吸を整えながら実践します。そのせいなのか、ヨガをやり始めてから胸や脇腹が筋肉痛でピリピリする(笑)

まだ始めてまもないのですが、早速効果は出て、前屈姿勢で手が床に届くようになりました。どれだけ体が硬かったんだろう。大したことはないのかもしれませんが、少しでも効果が得られるとモチベーションが上がりますね。この調子で、できるだけ毎日取り組んで、体をほぐしていきたいと思います!

『民藝の歴史』を読む

2017-01-11 21:26:34 | 読書感想
昨日、雑誌『民藝』について書きました。そこで、ちょっと民藝の勉強をやり直したいと思い、書店へ出掛けたところ、『民藝の歴史』(志賀直邦著 筑摩書房 2016年)が売っていましたので購入してきました。

著者の志賀直邦氏は、株式会社たくみの代表取締役で東京民藝協会会長、公益財団法人日本民藝館評議員を務めていらっしゃる方です。私は主に雑誌『民藝』で何度か目にしてきたお名前です。

本書は、様々な資料の引用や著者自身の経験から「民藝の歴史」を振り返ったものです。民藝運動の中心的な人物であった柳宗悦の『白樺』時代から、民藝ではおなじみの陶芸家濱田庄司、河井寛次郎を始めとして、浅川伯教、巧兄弟、バーナード・リーチ、芹澤ケイ(金編に土重ねる)介らの活動、そして柳亡き後の現在に至るまでの流れが記述されています。文体は「です・ます」調で読みやすく、民藝の歴史をたどるには絶好の入門書ではないかと思います。(そもそも市販されている民藝関係の本のなかで、ここまで詳細にその歴史を扱った本はないかもしれません)

本書では、民藝運動が柳や濱田、河井らが中心となり、多くの支持者によって各地へ波及したということの重要性について言及されています。柳らのメッセージを受け止めた地方の人材では新潟県の吉田正太郎、鳥取県の吉田璋也ら、企業人では大原孫三郎、山本為三郎、松方三郎ら、こうした人たちが共鳴したことでムーブメントが起こりました。他の書籍ではどうしても柳や濱田、河井を中心とした思想や活動が取り上げられやすいのですが、本書はこうした地方のキーマンの活動も拾い上げて紹介している点で、民藝運動の全体的なかたちを捉えやすく、とてもよい本であると感じます。よくを言えば…たくさん人物が登場するので、本の最後に人物別の索引があると便利だったかな。

今年最初の私のオススメの一冊です♪

雑誌『民藝』から

2017-01-10 19:58:17 | その他
部屋の書棚を片付けていたら、ほこりをかぶった雑誌『民藝』が出てきました。第三百五十七号で、昭和五十七年九月一日の発行とあります。最初、この雑誌『民藝』が私の手元にある理由がわからなかったのですが、目次を見てようやく納得。項目に「師、父濱田庄司と語る」とあって、弟子の島岡達三氏、庄司の息子能生氏による対談が掲載されている記事があります。私は以前、濱田庄司に関する展覧会を企画したことが有り、そのときに買い求めた資料のひとつであったことをようやく思い出しました。

2人の対談は濱田庄司の作品に関すること、というよりも師として、父としてどのような人間であったのかが語られています。そのなかにこんなセリフがありました。これは能生氏が将来何をするべきかを父庄司に尋ねたときの言葉です。

「人と競り合って、人を蹴とばしたり、つつき合いしたりして、それに競り勝って上がっていくやり方と、まるっきり人の裏をかいて、人のやっていないことを見つけて自分の道をつくる方法と、二つある。おまえ、どっちを選ぶ?」

その後、能生氏は後者の道を選んでガラス工芸家となりました。

私も選ぶなら後者の道かな。私の性格上、あまり競争というのが好きではないから。でも…と最近の私自身を振り返ってみると、気負うあまり、いつの間にか他人と競争をすることを知ってしまい、それを始めてしまっているな…と。この雑誌を今、手に取ったのも、諌めとして運命的であったのかもしれません。私はもちろん生前の濱田庄司と面識はありません。しかし、彼の言葉は生き続けていて、私の胸に優しく染み込んでいくのを感じるのでした。

重宝するネットのツール

2017-01-06 22:46:53 | 仕事
現在はインターネットが普及して便利な世の中になりました。美術の調査に関わる者にとって、知りたいことは何でも調べられる環境は嬉しい限りです。

私の場合、検索サイトでキーワードを入力して調べるのはもちろんですが、それでも見つからない人物名や項目があるときに重宝しているのは次の2つ。

Google books
 世界中の書籍の「中身」まで検索できるシステム。例えば「岸田劉生」と入力すれば、「岸田劉生」の単語が記載されている書籍のなかの文章の一部を提示してくれる優れものです。これをヒントにして、調査したい人物や項目の原典の書籍にあたることができます。

国立国会図書館デジタルライブラリー
 旧名は「近代ライブラリー」。明治、大正、昭和初期に出版され、著作権が切れた書籍をデジタル画像で公開しています。私の場合、ほとんど手に入らない貴重書の装幀や挿絵などを確認したいときによく使います。モノクロがほとんどですが、なかなかどうして重宝します。

インターネットの普及で、こうした情報をネットで得ることができるようになったのは本当にありがたい。このほか、個人的な趣味では国立公文書館の城郭地図のデジタル画像も好みです(笑)今後、博物館、美術館、図書館などのデジタル資料の公開が普及してくるでしょうから、ますます楽しみです。

短気は損気

2017-01-05 22:08:30 | その他
普段は穏やかな性格であるのに、車のハンドルを握ると大胆な性格に変わってスピード狂になる。一昔前の漫画にはこんな人物がよく描かれていたように思います。

最近、我が家では昔懐かしいスーパーファミコンがブーム。1日30分だけ、妻と仲良く(?)ゲームを楽しんでいます。ゲームソフトは、スーパードンキーコング。1994年に任天堂から発売された横スクロールアクションゲームです。94年、このゲームのCMがテレビで流れたときには、あまりの画面の素晴らしさに感動したものでしたが、ソフト自体はとうとう買わず。十分大人になった今頃になって中古品を買い求めた次第です。

さて、ゲームをしていて気づいたことがあります。それは私が意外に短気だということ。私は普段どちらかといえば穏やかな性格(と思いたい)なのですが、ゲームとなると性格が豹変するのが自分でもわかり、操作するキャラクターが死ぬと凄まじくイライラする(笑)いい大人なのに、どうもいけません。そういえば、子供の頃も弟とゲームをして負けるとものすごくイライラしていたっけ…と昔のことまで思い出す始末。人間は年を重ねても変わらないものなのですねえ。自分一人でイライラだけで、八つ当たりしないのはまだましかもしれません。

短気は損気。と言い聞かせて、今日もゲームと楽しみました。いや、楽しんでいると言えるのか?と疑問もわきますが…(笑)

2017年の気になる展覧会

2017-01-04 22:12:10 | その他
年末年始、実家へ帰っても取り立ててやることもないので、ぶらりと書店へ出かけました。ひときわ目を引いたのが『日経おとなのOFF』で、特集は「2017年絶対に見逃せない美術展」です。美術館情報のほとんど入らない環境にいる私にとって、これは迷うことなく買いでした(笑)

私が気になる2017年の展覧会は次のとおりです。

・ミュシャ展 3月8日~6月5日 国立新美術館
・茶碗の中の宇宙展 3月14日~5月21日 東京国立近代美術館
・運慶展 9月26日~11月26日 東京国立博物館
・長沢芦雪展 10月6日~11月19日 愛知県美術館

このほかにも海北友松展(京都国立博物館)もマークしたいところ。今年は横浜トリエンナーレもありますし、楽しい1年になりそうです。

私の個人的なことでいえば、ようやく体調が整ってきたので、コツコツと論文執筆のための材料集めに取り組みたいと思っています。少しずつギアを入れて、体調を気にせずにバリバリ働けるところまで持っていきたいものです。

謹賀新年

2017-01-03 18:16:15 | その他
明けましておめでとうございます。

私の年末年始のお休みは6日間。メディアは、いつもよりも短いお正月休み…と報じていますが、なかなかどうしてサービス業の方々を思えば6日間も休めるのだからありがたいことです。

1月1日、家族と初詣に行き、おみくじを引いてきました。結果は「末吉」。まあまあかな、と思い、項目に目を凝らすと、「心の病に注意せよ」とのお告げが…。今年も仕事が忙しくなるのかしらん(笑)

私が今年やってみたいことは、四国の一周旅行でしょうか。数日間をかけて、美味しいものを食べながら、美術館や城郭、名所などを巡って来たいものです。松山で温泉に入るのもいいですね♪ 私は大の旅行好き。旅行へ出かけることをモチベーションとしながら、今年も1年間頑張りたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。