学芸員は、ある事柄を調査したら、その成果を論文におこし、対外的に示すことで、社会、しいては文明の進展に寄与する。よって、常日頃から、自分の感度を高く保ち、美術館に足を運んだり、画集を眺めたり、あるいは社会についての問題意識をもって過ごしていかなければならない。とはいえ、これはなかなか容易なことではない。
私自身、学芸員となって数年間は普段の仕事をこなすのが精一杯で、論文を書く余裕が全く無かった。だが、あるとき、当時の館長から「論文を書かない学芸員は存在していないのと同じだ」と痛烈な言葉をいただいた。論文を書く書かないは仕事の問題ではない、自分自身の問題なのだと。普段は温和な方だっただけに、その言葉の重みを強く感じて、私は大いに反省した。以来、どんなに忙しいときでも、たとえ5分間しか時間が取れなかったとしても、少しずつ文章を書き進めて、年1回は必ず論文を出すようにしている。論文を書くことは体力も時間も使う。だが、執筆活動は自分の能力を高めることにもつながるし、調査の中で新しいことを誰よりも早く発見する楽しみもある。それに、その結果が対外的な評価を受けることで、独りよがりの考え方にならぬよう、自分への意識付けにもなる。
過日、このたび自分が執筆した論文の抜刷を、その元館長へ近況報告も兼ねてお送りしたところ、わざわざ葉書で過分なお褒めの言葉をしたためてくださった。ご高齢になられ、公職からは引退されたが、今でも独自に研究を進めておられる。そういう研究者に出会えた縁に心から感謝したい。
私自身、学芸員となって数年間は普段の仕事をこなすのが精一杯で、論文を書く余裕が全く無かった。だが、あるとき、当時の館長から「論文を書かない学芸員は存在していないのと同じだ」と痛烈な言葉をいただいた。論文を書く書かないは仕事の問題ではない、自分自身の問題なのだと。普段は温和な方だっただけに、その言葉の重みを強く感じて、私は大いに反省した。以来、どんなに忙しいときでも、たとえ5分間しか時間が取れなかったとしても、少しずつ文章を書き進めて、年1回は必ず論文を出すようにしている。論文を書くことは体力も時間も使う。だが、執筆活動は自分の能力を高めることにもつながるし、調査の中で新しいことを誰よりも早く発見する楽しみもある。それに、その結果が対外的な評価を受けることで、独りよがりの考え方にならぬよう、自分への意識付けにもなる。
過日、このたび自分が執筆した論文の抜刷を、その元館長へ近況報告も兼ねてお送りしたところ、わざわざ葉書で過分なお褒めの言葉をしたためてくださった。ご高齢になられ、公職からは引退されたが、今でも独自に研究を進めておられる。そういう研究者に出会えた縁に心から感謝したい。