学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

宇和島伊達家の名宝

2015-11-03 15:17:02 | 展覧会感想
私は宮城県で育ったこともあり、「伊達」というと思い浮かべるのは伊達政宗であって、緑あふれる仙台の街並みです。

しかし、西日本の人は「伊達」といえば宇和島を思い浮かべるのかもしれません。

なぜなら江戸時代の宇和島藩主も代々伊達家が務めていたためです。祖は伊達政宗の長男秀宗でした。


現在、仙台市博物館では仙台と宇和島の歴史姉妹都市を記念して「宇和島伊達家の名宝」展が開催されています。

展覧会は、宇和島藩の祖である伊達秀宗から出発し、時系列に宇和島藩の歴史がわかるような流れになっています。

また、そのなかに仙台藩との関わりが絡み合って、両伊達家の歴史をも辿れるという内容です。


私が展示資料のなかで面白いと思ったものを下記に列挙していきます。

・「銀伊予札白糸威胴丸具足」のデザイン性。特に胴の朱色が全体にアクセントをつけています。
・「黒漆五枚胴具足」は闇夜に光る三日月のイメージは、秋の夜空を想像させてくれます。
・ 宇和島城の絵図3点。西日本なので石垣の多い城かと思いきや、外郭は意外に土塁が多いのですね。
・「唐人図屏風」や「花鳥図」のスケールの大きさ。大味にならないところも。
・「指面」は仙台藩主伊達綱宗の作で、能面を全て指に巻けるサイズで制作。綱宗の器用さには驚かされます。
・ 蒔絵全般。贅を凝らしたものばかりで、特に随所に施された金工は見事です。

このほかにも、「名宝」というにふさわしい資料が数多く展示されています。

それと宇和島藩に起こる不幸は、殺された家老山賀の幽霊のせいとする古文書はなかなか背筋が冷たくなる…。

全体的にとても見ごたえのあり、おススメの展覧会です。


●「宇和島伊達家の名宝 政宗長男・秀宗からはじまる西国の伊達」11月23日まで開催中
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モリエール『病は気から』

2015-11-01 10:39:39 | 読書感想
実家へ向かう電車のなかで、軽めの読書を楽しみたいと思い、図書館からモリエールの『病は気から』を借りて読みました。

この本は、体調に神経質な主人アルガンを中心に繰り広げられる笑劇です。

登場人物たちはそれぞれが個性的に描写されていて、その言葉の掛け合いが魅了のひとつといえるでしょう。

医者がアルガンに絶交を突き付けた際に、ありえないような病症の脅し文句を羅列する場面。

何かと体調を気にするアルガンを制すべく、医者に化けたトワネットの振る舞いと「肺臓」の一言の連鎖。

劇は全体を通してユーモアやアイロニーに溢れていて、人間という存在の滑稽さを浮き彫りにしてくれるようです。


モリエール(1622~1673)はフランスの劇作家で俳優でもありました。

巻末に書かれた解説には、自らの病をも劇の題材に変えて『守銭奴』、『病は気から』などを創作したそうです。

そうして、モリエールは『病は気から』の第4回公演を終えると、病が悪化し、そのまま逝去しました。

自らの病を客観的にとらえ、それをユーモアに織り交ぜながら作品を創作した点では、俳人正岡子規に気質は似ているのかもしれませんね。
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