学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

感謝の1年間でした

2020-12-31 19:03:54 | その他
昨夜の荒れ模様の天気からは一変、朝から気持ちの良い快晴となりましたが、我が家の庭は強風で飛ばされてきた藁くずでいっぱいに!けれど、これも福が風に飛ばされてきたと思えば、また一興なり。

今年最後の1日は、家への日頃の感謝の気持ちを込めて部屋の掃除をしました。いつもは掃除機を使って床のほこりを取りますが、今日は箒を使って、細かいところまで丁寧に掃除をしてみました。非合理的なやり方かもしれませんが、いつもは行き届かないところまで、ほこりをとることができるので、気持ちがすっきりします。あとは、玄関先に注連縄を取り付け、リビングに購入したばかりのカーペットを敷き、ゴロゴロする、もとい、新年を迎える準備はすっかり整いました。

今年は、私たちが人と会話したり、お店で美味しいものを食べたり、旅行へ出かけたりする、ごく当たり前のことが、いかに幸せなことだったのかを気づかせてくれる1年となりました。ブログを読んでくださっている皆さまも、不自由な毎日を送られたことと思います。来年は、今年より少しでも良い年になりますよう、心から願っています。

それでは、不定期な更新ではありましたが、今年1年、ブログをお読みいただき、ありがとうございました。どうぞ、よい新年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。

年賀状を書く

2020-12-30 21:32:16 | その他
今日、すっかり日課となったウォーキングの途中で、元気な声で鳴くヒヨドリを何羽も見かけました。とてもにぎやかで、私も元気が出てきます。
少しでも外に出ると、気持ちが前向きになりますね。

家に帰ってからは、すっかり遅くなっていた年賀状を書き始めました。およそ30枚。お世話になった方々に気持ちを込めて、一字一字、丁寧に書いていきます。年賀状もパソコンで印刷したものをもらうことが多くなりましたが、私は以前から手書きで作ります。常日頃、御礼状を書く機会が多いので、30枚でもなんのその。届いた人に気持ちが伝われば嬉しい限りです。

夕方、その年賀状をポストまで出しに行きましたが、日中とうって変わって、空は厚い雲に覆われて、さらに風が強くなってきました。そして、ぽつりぽつりと雨も。大魔王でも復活しそうな何やら怪しい空模様でしたので、要件を済ませて急ぎで帰ってきてしまいました。

年賀状も出して、あとは新年を待つだけとなりました。今年もあと1日ですね。明日は今年1年に感謝して過ごしたいと思います。


文庫本ポーチなるもの

2020-12-29 21:04:18 | その他
今日も青空の1日となりました。晴天が続いて嬉しいかぎりです。

さて、先日、買い物へ行ったときに「文庫本ポーチ」なるガチャガチャを見かけました。これは角川文庫の近代文学6種のカバーデザインをポーチにしたものだそうで、本好きとしては無視できず、久しぶりにガチャガチャを回してみました。

その結果、なんと芥川龍之介の『杜子春』が当りました。ポリエステルの素材で、ポーチとしても使えるし、そのまま文庫本のブックカバーとしても使えるので、とても得した気分です。『杜子春』以外では、『浮雲』、『注文の多い料理店』、『それから』、『細雪 上』、『津軽』があるようで、機会があれば、またやってみたいですね。

今年もあと残り2日となりました。年の残りを味わいつつ、1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。

お雑煮の食材を買いに

2020-12-28 21:44:42 | その他
今日も見事に晴れて暖かい1日でした。朝、1キロほどのウォーキングをして楽しみましたが、体がとても温まります。日中も気温は高く、気持ちの良い日となりました。

そろそろお正月。少し早いのですが、近くのスーパーへお雑煮の食材を買いに出かけました。いつもだと県外の実家へ帰り、母が作ったお雑煮を食べるのですが、こういうご時世なので、今年は自宅でお正月を迎えることにしたのです。我が家のお雑煮は、しょうゆベース。そのなかに、こんにゃく、ぜんまい、ちくわ、鶏肉、そしてお餅を入れ、食べる直前にゆずとねぎを入れて完成です。母と会えないため、家では私が作ることになりました。母に負けない味を出したいものです。

無事に食材を買うことができましたが、さすが年末、おいしそうなものばかりが店頭に並んでいました。昆布巻き、栗きんとん、数の子、カニ、いくら、えび…どれも食べたいものばかり。毎日お正月だったらいいのに、とついつい考えてしまいます。

そういえば、年末年始は食べ過ぎにも気を付けなければいけませんね。今からお正月が楽しみです。

年内最後の仕事を終えて

2020-12-27 22:06:51 | 仕事
今日もすっきりとした青空の1日でした。冬の空気はとても澄んで、遠くの雪をかぶった山々がいつもより美しく見えます。今年も寒い時期ならではの光景が見られて嬉しくなりました。

今日の美術館は、年内最後の営業日でした。お客様もいつもよりは少しだけ多め。年末の忙しい時期に美術館へ足を運んでくださるのですから、ありがたいことです。私の仕事も予定通り進み、最後は机の上や中の整理をして、すっきりさせて終わりました。色々なことがあり、長く感じた1年でしたが、無事にこの日を迎えることができて良かったです。

家に帰ってからは鍋料理で体を温めたあと、部屋の掃除を開始。このところ掃除をさぼっていたので、床のフローリングやシンク、トイレなどを中心に掃除しました。部屋が片付くと気持ちが良いものです。明日から年末年始のお休みが始まります。寝正月にならないよう、休み中もしっかり計画を立てて過ごしたいと思っています。

そろそろ御用納めです

2020-12-26 17:56:10 | 仕事
今日は一面の青空となりました。仕事前に2キロほどウォーキングをしてから出勤。体がぽかぽかすると、冬の冷気が気持ちいいですね。

美術館は明日で御用納めです。年内の仕事はほとんど片付いたので、あとは来年のスタートダッシュに向けて、段取りを考え、必要な準備をして終わりました。今年も色々なことがありましたが、美術館の事業が制限された分、自分の仕事に対して、きちんと時間をとって向き合うことができたのは良かったことだったのかもしれません。

私が美術館の学芸員になり、数十年が経ちます。自分の好きな仕事であるのは間違いないのですが、その仕事がどれだけ社会の役に立っているのか、そもそも自分はこの仕事に向いているのかわからない、と考えることが今まで多々ありました。けれど、昨年、そして今年と、とてもありがたいことに、様々な方から感謝の言葉を頂くことが増えました。あなたはこの仕事に向いている、と周りから評価されたような気がして、これまでの迷いのようなものが心から消えてきているのを実感しています。心から感謝をしたい1年となりました。

明日は年内最後の仕事です。この仕事ができることに感謝の気持ちを込めながら、最後まで気を抜くことなく、取り組んできたいと思います。

収蔵庫の問題

2020-12-23 21:41:29 | 仕事
この数日、収蔵庫の掃除をしています。ここは関係者しか入れないうえ、密閉された空間なので、それほど汚れることはありませんが、美術館にとっての心臓部ですので、きれいに整えてきました。

収蔵庫といえば、このところの悩みはそのスペース。年々増え続ける作品と資料で、収蔵庫はほぼ満杯の状態です。それは私が勤める美術館の問題だけではなくて、どの美術館も同じ悩みを抱えてるよう。問題を解決する方法は2つ。収蔵庫を増築するか、コレクションの一部を手放すこと。けれど、増築には大きな予算がかかるし、コレクションの一部を手放すことは現実的ではなし。

美術館ではありませんが、博物館によっては、廃校を仮の作品や資料の置き場として利用しているところもあるようです。確かに発掘された埋蔵品や、地域から収集した民俗資料は収蔵庫のスペースを取りそうですし、余程の貴重な資料でなければ、苦肉の策でそういう選択肢もあるのかもしれません。もちろん、担当の学芸員にとっては本意ではありませんが…。

各美術館によって置かれている状況は違いますから、答えがひとつというよりは、その美術館や地域に応じた管理の仕方を検討することになりそうです。1年間の感謝を込めて収蔵庫の掃除をしながら、今後の行く末が頭のなかをよぎった1日でした。

ポストコロナの美術館

2020-12-22 18:16:40 | その他
今年は新型コロナウイルス(もうこの単語を使うことさえ辟易する)のおかげで、他の美術館の展覧会を観に出かけることができず、とても残念な1年となりました。特に毎回楽しみにしていた横浜トリエンナーレに行けなかったのは特に無念です…。

それはむろん、私だけではなく、外出がはばかられるのなか、美術館の展覧会に行きにくいという方はたくさんいらっしゃったと思います。そうしたなか、各美術館ではデジタルを駆使して、ネット上やアプリで絵を見られるようにするなど、家に居ながらでも絵を楽しめる環境を作ろうと活動をしていたところが多かったようです。私が勤める美術館も、一部の展覧会をネット上で見られるようにして、少しでもお客様に楽しんで頂けるように工夫を試みました。

書店では、早くもポストコロナを話題にした本がいくつか見られるようになりましたが、美術館は果たしてどうなっていくのでしょうか。私は、やはり、コロナ禍を期にデジタルによる情報発信が一気に進んでいくと思います。デジタルの分野を活用すれば、高解像度による絵画鑑賞ができたり(すでにやっているところもあるようですが)、美術館の収蔵作品や資料のデジタル化とその公開、さらに動画ソフトを利用した学芸員やゲストのギャラリー・トーク…考えれば、まだまだ色々なことができそうです。お客様にとってはいいことづくめかもしれません。ただ、それをするには発信する美術館側にデジタルのスキルを持った人材がいないと難しい…。課題はありそうですね。

なにはともあれ、早く色々な美術館へ出掛けられる環境が戻ってきてほしいものです。

岩波文庫と角川文庫

2020-12-21 21:47:23 | 読書感想
このあいだ国木田独歩の『武蔵野』を読みたいと思って、書店をのぞいたところが、岩波文庫版と角川文庫版がそれぞれあって、値段は岩波文庫の方が200円程高めでした。値段だけなら角川文庫のほうがお得ですが、それぞれ手に取ってみると、同じ中身でも、表紙も違えば活字の組み方も違います。岩波文庫の表紙は武蔵野の昔の地図を使い、活字の文字間や行間はやや広めでゆったりと組んであります。角川文庫の表紙は眼鏡をかけた若者のイラストが飾り、活字と文字間の行間はやや狭い。どちらにするか最後まで悩みましたが、角川文庫にしました。というのも、値段の安さはもちろん、ページのめくりやすさが手にしっくりときたこと、さらに現代の感覚で楽しめるよう表紙を今風にした心意気を買ったというところです。角川文庫といえば、今から20年程前に夏目漱石の全シリーズをイラストレーターのわたせせいぞうさんの表紙で飾ったことがあって、若い時分の私には衝撃的だった記憶があります。出版業界のことはよくわかりませんが、角川文庫はわりと過去の文学作品の表紙を今風にアレンジすることで、手に取りやすい本にしているようです。岩波文庫には大変申し訳ないところですが、しばらく角川文庫の『武蔵野』を楽しみたいと思っています。




伊藤整『M百貨店』

2020-12-20 07:48:15 | 読書感想
私たちの多くは、他人が自分のことをどう思っているのか、絶えず気にしながら生活をしています。もちろん、人間は他人の心のなかを見透かすことはできませんから、相手のちょっとした言葉や態度、仕草を見て、私たちは日々煩悶するわけで、ことに恋愛についてはそうでしょう。

伊藤整の『M百貨店』(1931年)は、3人の男女の心理描写を試みた小説です。似たような主題で、芥川龍之介が『藪の中』(1922年)を書いていますが、『M百貨店』は近代を象徴する百貨店を舞台に、3人の心理描写を細かく書き、なおかつ言葉の使い方、例えば機械の音を「briririririri rrUrUrUrU」と表現するあたりに、前衛的な手法が用いられています。とりわけ、3人のうちの三輪キリ子の心理描写は面白く、その思考がとどまることなくあちらこちらに動いていくところは、多くの人が共感する場面ではないでしょうか。

昭和初期、複数の版画家たちが集まって「新東京百景」というシリーズものを発表しており、随分前にそれらの作品を観たことがあるのですが、そのうちの1点に川上澄生の《百貨店の内部》があり、小説を読んでいるうちにその絵のことを思い出していました。きらびやかな百貨店のなかで繰り広げられる人間模様。『M百貨店』にしろ、《百貨店の内部》にしろ、当時の社会を映す鏡のようで興味深いものです。