放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

トマトと蓮の花

2012年08月28日 16時58分45秒 | 肝苦りぃさ
 いつもいつもイノチの野菜を分けてくれたあの人が、逝きました。
 蓮の花も盛りを過ぎた残暑の頃に逝きました。
 享年64歳。まだまだこれから楽しいこともいっぱいあったはずなのに、残念でなりません。
 
 春先には血色もよかったので、病院からの宣告はだれも信じておらず、
 なんか、このまま長く生きてくれるんじゃないかと、どこかで願っていました。

 ガン治療に御利益のある神社に毎週お参りに行き、願掛けの「箍(たが)」を納めたお社に手を合わせていました。
 先週も、お参りに行き、放菴に戻ると、角田から電話。
 「おじさん、昨日亡くなったよ。」

 しばらく声も出ませんでした。

 この話を子供たちにすると、困ったような、疲れたような顔をするのです。
 悲しい、という顔でなはく、どちらかというと、「またか」という顔。
 無理もありません。

 ここらは、震災からずっと、「死」が身近でありすぎるのです。
 
 もちろん、いろいろ楽しい体験をさせてくれたおじさんですから、大好きなのです。
 だから、ニコニコ顔は自然に出来るのに、沈痛な面持ちは疲れる・・・みたいです。
 まあ、悔やみ顔の似合う子供なんてかわいくないんですけどね。

 それでもやさしい次男Mクンは、翌日自分で育てたプランターからプチトマトを採れるだけ採って、一緒に角田へ行きました。イノチの野菜を分けてくれたから、いっぱい可愛がってくれたから。

 
 出棺前に間に合って焼香机をはさんでおじさんと対面。
 
 白い棺に収まって、穏やかな貌を見せるおじさん。
 おじさん・・・。
  痛くて苦しかったでしょう。お疲れ様でした。
   ほんとうにお世話になりました。
    おばさんのこと、見守っていてくださいね。

 おばさんが言いました。
 「おんちゃんね、私に、『ここサ一緒に入ろ』っていうんだよ。『こっそり入ろ、オレ痩せたから、あんた一人くらい入れっぺ』て。『あんた独り残していくのがオレ一番気がかりだ』って。」

 BELAちゃん号泣です。

 Mクンがトマトを差し出すと、おばさんは
 「ありがとね。これおんちゃんと分けっこするから。半分はお棺に入れてあっちで食べてもらうからね。」

 またまたBELAちゃん号泣。

 「Mクン、ここで夏合宿させてあげたかったって残念がっていたよ。一番の心残りだって。」
 
 これからも畑手伝いに来ます。MクンもYクンもいっぱい働きますから。

 帰り道、蓮沼では、ぽってりとしたツボミが空を見上げていました。
 咲き遅れのツボミです。
 おじさんをいざなうために待っていたのかもしれません。

 

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