放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

武雄のレモングラス

2024年01月18日 23時55分47秒 | Weblog
 コロナ罹患から10日以上たった。
 もう隔離も終了し、社会復帰もできた。

 ただ、咳が出る。

 痰が絡むわけでもなく、息がしづらいわけでもない。
 ほとんど空咳というやつ。
 喉を潤したり、のど飴で咳を抑えようとするが、喉をむせ上がってくる衝動はかなり強く、思わずゲホゲホしてしまう。
 寝ていても突然この衝動がくるので、睡眠も断続的になる。
 漢方薬で効きそうなものを使ってみようと思う。

 嗅覚はほとんど回復した。
 レモングラスのおかげ。
 回復するまでに、焼き魚を1回、鍋を1回、焦がした。
 どちらも焦げる匂いがわからなかった。 
 コゲているのが判るようになるまで1週間くらいかかった。
 
 嗅覚が回復したとはいえ、以前のように戻ったかどうかはわからない。
 たとえば、日本酒の香りはよくわからない気がする。
 あずきもちょっと自信ない。
 蕎麦もどうだか・・・。

 好きな食べ物で、香りが淡いものは意外と多い。
 それが香ってこないとなると寂しいことになる。
 まだ時間を要するということなのか。

 今でも寝る前には窓際のレモングラスを嗅ぐようにしている。
 もうずいぶん香りが抜けてきた。抜けてきていることは判るようになった。
 
 でも香りの向こうに小さな不安を感じていたことは覚えている。
 今更だが、気が張りつめていたいっぽうで、やはり不安だったようだ。
 新型コロナに感染したが、ちゃんと回復するのか、社会復帰できるのか、家族に感染させないか、不安だったのだ。

 もう少し、もう少し。
 今、体中にはコロナウイルスの残骸がいっぱいあるようだ。いまPCR検査をすれば陽性反応が出てしまう。ウイルスの残骸を検知してしまうからだ。こういうのを「偽陽性」と言うらしい。
 ウイルスの残骸が体内から去るのに1ヶ月くらい。そのくらい影響が残るということだ。

 もう少し、もう少し。
 今日もレモングラスを嗅いで眠りにつく。
 今も胸を離れないレモングラスの匂い。
 ・・・どっかで聴いた歌詞だな。
コメント (1)
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コロナに罹った3

2024年01月13日 13時56分25秒 | 肝苦りぃさ
新型コロナ罹患5日。

お風呂に入ることができた。
それまでは、朝夕に熱いタオルを持ってきてくれて、背中など拭いてもらっていた。
(ホントに病院並みの待遇です)
人間50歳の坂を越えると新陳代謝も衰え大して垢も出なくなる。
髪の毛もやや脂付いたがフケ・カユミ・脂臭などは無し。
といっても体臭などはよくわからない状態だが。
手指などは却って乾燥期の手荒れから開放されてよかったくらいである。
4日位ならお風呂に入らなくても大丈夫らしい。
とはいえ、お風呂。
温かい湯に身を沈めたくない筈がない。
そういう時には災害で何日も入浴できない人々のことを想う。

入浴順序は当然ながら家族が全員入った最後。
ちなみに脱いだ衣類も家族とは別に洗濯する。罹患初日からそうだった。
洗濯機を二回廻すことになるのだから、その負担にはやはり頭が下がる。

少し寒かったが、まず全身を洗い、それから浴槽に身を入れた。
温かい。
つま先、指の先の毛細血管まで温まってゆくのがわかる。
鼻腔もしかり。
奥の方までゆっくり開いてゆくような気がした。

浴槽に浮かんでいる柚子をすくい、鼻先にもってゆく。
何も香ってこなかった。
だめか。

もう一度ふかく吸い込んでみる。
お、左の鼻腔に何か懐かしい香り。

遅れて右の鼻腔からも遠く懐かしい香りがした。
柚子だ。
柚子の香りが・・・。

それにしても香りが遠い。柚子は目の前にあるのに、こんなにも遠い。
くそコロナ。

風呂から上がり、寝室へ。
ふと柚子に似た香りを嗅いだ気がした。
あれ、と思い、BELAちゃんが置いてくれたアロマストーンを手に取る。
今度は右の鼻から香りが届いた。
柚子とも少し違う。柑橘系だろうか。野生種のような香り。橙?橘?
筑波山のふくれみかん?

BELAちゃんに言うと、驚き、喜んでくれた。
でも柑橘系はハズレ。
「レモングラスだよ。武雄の。」
ハズレはくやしい。でもいい香り。

佐賀県武雄の陶土で作った小石のような素焼きに、同じく武雄産のレモングラスのエッセンスを滴下したものだという。
陶土は素焼きだが、下半分には空色の釉薬を塗ってある。こうすればエッセンスを滴下しても下から染み出すことはない。
上半分の素焼き部分からはエッセンスが少しずつ蒸発して香るという仕掛け。かなり長持ちしそうな仕掛け。
本当は寝室いっぱいにレモングラスが香っているのだろう。でも僕は素焼きを鼻先に持ってきてやっと検知できるくらい。

仕方がない、ゆっくり行こう。
仕事も再開しなければ。
多くの人に迷惑をかけた。
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コロナに罹った2

2024年01月11日 19時36分04秒 | 肝苦りぃさ
新型コロナ罹患4日目。

やっと微熱が下がりはじめたが、夕方になるとやはり37℃を超える。
こういう体質は子供の頃から変わらない。

トイレに立って、ふと芳香剤の匂いがしないことに気がついた。
あれ

寝室に戻り、龍角散のど飴を口に含む。
いつもなら鼻腔に昇るハーブの香りがしない。

嗅覚やられた。
なんてこった。
新型コロナは何か爪痕残さないと気が済まないらしい。

鼻から空気を深く吸う。
空気の温度は分かるが何も匂わない。
のど飴が口の中でなくなっても、ついにハーブの香りはやってこなかった。

これが後遺症になるかも知れない。

BELAちゃんが心配してアロマを用意してくれた。
小さな素焼きの荒肌にアロマオイルを一滴染みこませてある。
何の香りかは聞いていない。
鼻を近づけてみる。
やはり香ってこない。

気長に恢復を待つしかないか・・・
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コロナに罹った

2024年01月10日 10時05分39秒 | 肝苦りぃさ
具合が悪くなり診療所へ行くと、医者から新型コロナ陽性であると告げられた。

この感染症は4年前と比べると弱毒化が進み第5類感染症相当に移行している。けど防疫はしなければならない。僕は寝室隔離が決まった。

隔離を恨む話しをするつもりはない。
家族の適切かつ迅速な感染対策に驚き、感謝し、並以上の負担に申し訳なく思っていている。
常時換気、ペーパータオル設置、アルコールスプレー配置。
僕は寝室とトイレの往来だけ。あとは上げ膳据え膳、着替えの用意、シーツ、カバーの交換。病院並の対応である。
家族の予定もみんなキャンセル。
ここまでしてもらって家族に感染させるわけにはいかない。
腹括って療養生活に入った。

ノドの痛みは1日目で引いた。けど眉間のムカムカと頭痛がひどい。あとしつこい微熱。
眉間のムカムカと頭痛と微熱のせいで眼球から後頭部へクギ2本刺さっているみたいな不快感。
3日目に寝ていられなくなり、布団に座り込んだ。

寝室にはラジオはあるけどテレビはない。
あっても眉間のムカムカで見ていられない。
字も読む気になれない。
触るもの全てに菌を残留させてしまうから触ろうとも思わない。
なにもすることが無いまま座っているだけ。
なんとなく能登地震(2024/1/1発災)の被災地のことを思った。

あちらが大変な状況なのは言うまでもない。
きっと多くの方が寒くてテレビもないところで安否の判らない人を想いながらじっと座っているのだろう。
それはこんな風なのだろうか。
(あちらの感染状況が心配です)
目を閉じると耳ばかり澄んで、やたら外の音が気になる。
考え事ばかりしてしまうのは、時間が有り余っているから。
でも考え事にはやがて妄想がまじり、答えの出ないメビウスループができるだけ。
余計に疲れて落ちこむ。
思考が明るく正常化するには誰かに声を掛けてもらえる必要がある。

ウクライナでもガザでも今この瞬間に呆然と座り込んで、今いない人のことを想う人がいるのだろう。
まるで何かに閉じ込められたように、そこから抜け出せない。
時間の経過を待つしか無い。

かつて新型コロナに罹った家族が地域に住めなくなり引っ越しを余儀なくされた事案があった。
責められて自死した人もいた。
治療に当たった医師の子が保育所から拒まれる話も聞いた。
今のコロナ株とは毒性が違うのかもしれないが、あの時傷ついた人たちに、今の僕はなんて言ったらいいのだろう。
無知とは恥ずかしいこと。
今すでに危機や恐怖と併存していることを知らない愚かさ・・・
災害や戦災、感染症。
それだけではない。
もしも今、家族が急変し、認知症や感情障害になったとしたらどうなるか。
家族が突然暴れ、または目を離すと何をするかわからないようになったら。
その日から危機や恐怖と同居していることになる。
実際それに耐えながら暮らしている人は少なくはない。
そんな人たちには、近所にコロナ患者がいることなぞ恐怖のうちには入らないだろう。

現世(うつしよ)は苦界にて浄土にあらず。
それは壊れやすく、長持ちしない生命だから。
それこそが唯一の平等性だと気がついているくせに目を背ける指導者たちはなんて罪深いんだろう。

日常生活から離れ、想いは遠くを彷徨う。
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