放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

鎌倉漫歩景-6

2013年06月08日 18時21分57秒 | あんなこと、こんなこと、やっちゃいました
翌日、3月31日(日)。
鎌倉は曇天模様。窓から見た感じではすこし降っているかも。

昨日、子供たちは持参した万歩計で14,000歩を超えたと大騒ぎしていた。

・・・そりゃ超えるでしょう。歩いたもの。
今日もいっぱい歩く予定ですよ。
でも最初は思い切ってタクシーで「銭洗弁天(ぜにあらいべんてん)」までいくことにした。さすがに道知らないで歩くには遠いかな、と思ったので。

雨が気になる。本降りというほどでもないが、それでも道路をしっとりさせる程度には降っている。

市街地を走り、そこそこ広い道路を西へ向かう。
が、しかし道はすぐに細くなり、昨日のコース以上に狭い路地をタクシーは進んでゆく。
これはいわゆる「切り通し」なのだろうか。
ホントに狭い道。車がとおってよいのかなぁと思うくらい狭い。
こ、今度はタクシー泣かせの道じゃないですかっっ。
(でもこれ運転手さんが選択して通っている道だし。)

やがて岩肌を削って作ったような見通しの悪いところで「ここですよ」と言われた。

ここ、って・・・。
岩肌に大きな洞穴が掘られている。
状況を知らないと銭洗弁天さんは地下にあるのかと思ってしまう。
とりあえず暢気に記念写真。実は暢気でもないけど。

写真を撮るのは、その場、空気が宿す「ご機嫌」の程を伺うためでもある。
「ご機嫌ナナメ」だとカメラのシャッターは下りない。
まあ機械だから調子が悪くなるにはいろいろ原因があるわけで、一概に「その場、空気が宿す云々」は乱暴な言い回しなのはわかっている。
思い込みも良くないし、それで旅行が台無しになることだってあるだろう。
でも何となく「他所から来た引け目」のようなものがあって、シャッターを押す瞬間には何かをお伺いしているというか、占うような感覚になる。
実際シャッターが下りないようなときには、機械もまるで頑固だ。「ピッ」とも「カシャ」とも言わなくなる。石ころのよう。
それって何だか神様のお遣いが「お控えなさい」と言っているように思ってしまう。根拠もカンもない。ただそう思うのだ。

洞穴の前ではシャッターがすんなりと下りてくれた。薄暗いところなのに、滅入るような鬱屈感がない。
今日はOKのようですな。

洞穴はそれほど長くはなかった。
ただ岩壁の向こうに突き抜けただけ。そしてその先には霊場らしい空間があった。

通称「銭洗弁天」。正しくは「宇賀福神社」という。
中央に大きな香炉。もちろん線香の束がそこに林立していて、一斉に薫煙を出している。
右にも左にも赤い鳥居。その奥は岩肌が取り囲んでいる。そして「やぐら」。
小雨まじりの天候のせいか、それとも水辺だからなのか、湿気を含んだ空気がなんとなく胸を圧迫してくる。

ひときわ大きな広い「やぐら」があり、参拝客はみんなそこへ集まってゆく。
正確には「やぐら」ではなさそうだ。
どちらかといえば洞穴。それも天井部が一部抜けていて空が見える。
水が断崖の上から浸水し、岩を穿ちつつ広がって出来た空間のようだ。
今でも洞穴に清らかな水の流れがある。あとで調べたらここは「鎌倉五名水」の一つだという。
水辺に竹で矢来が仕立ててあり笊がかけてある。

あ、なるほど。ここで小銭を洗うんですね。

小銭を出して笊にとり、ちょっと水量の多いところへ。そこで笊を水に浸し、小銭を洗った。
これでいいのかな。

よくある話だが、弁天さんがお祀りされている水辺で銭を洗うと二倍になって帰ってくるという。
実はこの話にはカラクリがある。

洗った銭を財布に仕舞い込んでいてもご利益はないというのだ。

洗ったあとに遣うからこそ、世の中に金が出回り、やがて自分の財布に還って来る。どうせ洗った五円が十円になって還ってきたって、そんなに判るモンでもあるまい。つまりホントのご利益は、財布の奥に眠る銭を洗って世の中に出させることにある。昔から伝わる最も単純なデフレ対策というわけ。
そしてその単純なデフレ対策の最も身近な受け入れ口が、背後に待ちかまえているお土産屋さんなのだ。

ま、なにはともあれ、奥の院でお参りをする。
岩屋の奥のお社に弁天さんの像が納められている。

個人的に水辺の神様や仏様にはちょっと警戒心がある。
過去に「水の障り」というものを体験しているからである。

あれは行者とすれちがったのがいけなかった。おそらく「行」の最中であり、そのときの念を貰ってしまったのだろう。
あまりよいことを念じていなかったようだ。家族は嘔吐はげしい病気となり、そのあと僕は怪我をした。
あのとき水辺に宿る激しい「気」を覚えている。冷たく恐ろしい「気」だった。

だから水辺の神様や仏様にお参りすることはちょっと控えている。今回は観光地にある有名な「銭洗弁天」だから「障り」は少ないだろうと思って来たのだ。

お参りを済ませて、お土産屋さんをのぞく。
お望みどおり、ここで銭を落としていこう。

お、「鎌倉サイダー」?
こういうご当地サイダーは地元でなけりゃ飲めませんからね。頂きますか。
さっき洗った銭を出してサイダーを買って飲んだ。

んー、ちょっと甘め? でも炭酸がキリッとしていておいしい。
水辺の神社で飲むからかな、「水」がおいしく感じる。
マイナスイオンもたっぷり吸い込んだし、ありがたいありがたい。

佐助稲荷とあわせて参拝するといいそうだが、そちらまで足を伸ばす時間がない。
やむなく先ほどの洞穴を戻り、切り通しに出た。
そこにはさっきのタクシーが待っていてくれた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする