放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

肝苦りぃ・・・。

2010年04月12日 10時51分53秒 | 肝苦りぃさ
日曜日、夕方、僕たちはとあるマンションの入り口付近に集まっていました。

手に手に小さな花束をかかえて。
黒い服の人。
ハンカチをにぎりしめている人。
みんなうつむいて、黙りこくって並んでいました。

空はどんよりとしていて、今にも泣き出しそう。
ときどき薄らさむい風が吹きます。

係りの人がキャスター付のストレッチャー(担架)をエレベーター前に運んできました。

待つこと10分くらい・・・
マンションの上の階で声が聞こえました。
子供の声かな?
やがて祖父母と思われる人、親戚、そしてちいちゃな女の子が礼服を着て降りてきました。

それから、しばらくして、ご両親がまぶたを真っ赤にして降りてきました。
エレベータに近いところからすすり泣きが聞こえてきます。

やがてキャスターのきしむ音、それから黒い服の人に添われて、白い布団に寝かされた女の子が運ばれてきました。

長いまつげ、うっすらと頬に紅をさし、口元に微笑をたたえたお顔。
まるでお人形さんのようにきれい。

すすり泣きがいっそう広がります。
肝苦(ちむぐ)りぃ、肝苦りぃさ。
なんともやりきれないひと時でした。

あっという間でした。
大人なら、数日安静にしていればすぐ治る病気。
子供でさえ、早い対応と、医療機関の正しい診断があればなんとかなる病気。
どうして―・・・。

明日も続くと信じていた娘の呼吸、いつかは戻ると信じていた元気な姿。
突然絶たれた幸せに、呆然とたちつくす両親。
肝苦りぃ、肝苦りぃさなぁ。

おなじ子を持つ親として、他人事ではないのです。ましてや同じ子供会。レクリエーションなども一緒だったようだし。
ここにあつまった人たちも、このどうにもいたたまれない気持ちをどうしてよいかわからずに、それでもお顔を見れば気持ちの整理がつくか、またはここでみんなで泣くことで楽になれるのかと、どうにも落ち着かない心持ちをかかえているにちがいないのです。

肝苦りぃ、肝苦りぃさなぁ。
泣き出しそうな空のした、黒い車の扉がゆっくり閉まりました。

そして長いクラクション。
やがて車はゆっくりと動き出し、ポプラ並木を遠ざかっていくのでした。


お別れのつらいついらいひと時でした。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 劇団四季「55Steps」 | トップ | 泣き出しそうなお空のかなた... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

肝苦りぃさ」カテゴリの最新記事