春隣(はるとなり)
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サイコロの目を書き換えて春隣
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駄洒落で始まってゆく朝です
お隣のおばあちゃん
名前を「はる」さん
いつもチャイムを押しながら
はるがきたよっ!
我が家はいつも春隣
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手で触れるほど近くにきた春
冬のさなかには
寒さにひたすら耐えているだけですが
だんだんと寒さが緩んで
冬の終わりが見えてくると
かえって春が待ち遠しくなるものです
まして
何かちょっとした春の兆しに
気がついてしまうと
その気持ちはいっそう強まるもの
頬に当たる風も
心なしか柔らかくなり
目を凝らすと土からかすかに
緑色が顔を出し始め
北国では氷柱から滴る
雫の音も絶え間なく聞こえてくるころ
そんな思いを表わす「春隣」は
手で触れるほど近くまで来たという
気持ちは素直に伝わる素敵な言葉です
叱られて目をつぶる猫春隣 (久保田万太郎)
春も近く
活動的になった我が家の猫
何かいたずらをして叱られてしまった
陽の当たる縁側で
ぎゅっと目をつぶる猫の様子に
春が近づいたなあという思いがこもります
(道行めぐ著「美しい日本語帳」より)
そろそろ山下景子著
美人の日本語もおわりです~
添え書きとして使わせていただいた
美しい日本語も
これからますます消えそうなものばかり
この美しい日本語を消さないように
機会があるたびに使ってゆきたいと思っています