氷面鏡(ひもかがみ)
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凍った湖の一角に
少しだけ溶けているところがある
そこに対岸の景色が
まるで絵に描いたように
自然は嘘や偽りがないね
ただ逆さまになっているだけで
全く同じ風景が写っているもん
わたしの心を
写したらきっと・・・
どこか違うところが
きっと写るかもしれない
だって・・だって~
こういうときに使うのでしょう?
謙譲の美徳
うぅ~~うん
・・・・
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きらめく思い
氷の表面に風景が映って
鏡のように見える様子を氷面鏡(ひもかがみ)といいます
この言葉は
中世の歌人の造語なのだそうです
万葉集に出てくる
「紐鏡(ひもかがみ)」
これは 紐をつけるようになっていて
儀式などに使う鏡のことでした
「紐」も「氷」も
つまり とけるものですね
どちらも「とく」を
導く言葉として使われていたので
そこから生まれたと言われています
ますます
ロマンティックな言葉に生まれ変わりましたね
「とく」は 帯を解くにも通じ
とっても意味深なのです
もちろん
氷がとけて春になる
心がとけて親しくなる・・
氷面鏡に映った美しい情景に
さまざまな思いがきらめいています
(山下景子著「美人の日本語」より)