
〇ハイタク運転者の労働問題に係る善処を厚労省へ要請
ハイタクフォーラムは、参議院議員会館の講堂で、タクシー政策議員連盟とともに厚生労働省への要請を行い、梶原輝昭厚生労働省大臣官房審議官へ要請書を手渡した。要請には90人、私鉄からは19人が参加した。
要請内容は、「ハイヤー・タクシー運転者の労働問題に係る重点要請」として、①コロナ禍における雇用の維持と法令違反事業者の摘発、②感染症対策、③累進歩合制の完全排除(禁止)、④給与体系・労働条件・運転者負担等、⑤地域別最低賃金の遵守と労働時間管理の適正化、の5項目。

要請行動は久松勇治私鉄総連ハイタク協議会事務局長の司会で始まり、小川敬二交通労連ハイタク部会長、近藤昭一タクシー政策議員連盟会長(衆議院議員)の挨拶の後、梶原審議官は、「エッセンシャルワーカーである自動車運転者の加重労働を防ぐことは、運転者自身の健康確保、利用者の安全・安心の観点から重要であり、令和6年4月からの時間外労働の上限規制と改正改善基準告示の適用へ向け、関係省庁と連携し制度の周知に務め、自動車運転者の労働条件改善に努めていく。違法な長時間労働の疑いがある事業者には、労働基準監督署による監督指導を実施し、法違反が認められた場合は是正を指導するとともに、重大かつ悪質な場合は送検を行うなど、厳正な対応を徹底していく」などとあいさつし、要請に対する回答を示した。
参加者からは、「最低賃金違反・監査」「労働条件の不利益変更」「コロナ5類変更に伴う労災認定の継続」などで質疑が出された。
私鉄からは、吉永順一シンセツタクシー労組書記長が「累進歩合制は賞与だと許されるのか」と質した。
これに対して厚労省は、「賞与について、禁止されている累進歩合にあたるかどうかの判断は難しいが、問題として認識している。専門委員会でも意見として伺っているので、改正改善基準告示適用から3年を目途に調査をしていく」などと応えた。
また、堀内隆彦阪急タクシー労組副委員長は「視野が狭くなる緑内障は、初期段階だと自覚症状がほぼなく、事故に繋がりかねない。健康診断の必須項目に眼底検査を入れ、費用の助成制度を検討いただきたい」などと要望した。これに対し厚労省は、「労働安全衛生法には、緑内障発見のような検査は含まれていない。ただ9月の健康診断強化月間で、事業者団体に労災防止の観点で眼底検査が有効であると推奨してきた。引き続き事業者へ、呼びかけていきたい」などと応えた。

〇タクシー関連法・附帯決議の厳格運用、ライドシェア合法化反対を国交省へ要請
続いて国土交通省への要請を行い、森哲也国土交通省自動車局旅客課長へ要請書を手渡した。
要請では、森屋隆タクシー政策議員連盟事務局長/私鉄総連組織内国会議員が「ぜひ23春闘を機に、私たちの産業を元気にしていただきたい」「コロナ禍を、エッセンシャルワーカーが支えてくれたから、移動ができるようになってきた。国交省には、真摯な回答と協力をお願いしたい」などとあいさつした。
また、辻󠄀元清美私鉄総連準組織内国会議員は「ハイタクは、普段の生活だけでなく、いざという時も絶対に必要である。だから、ハイタクを日頃から守り支援していくことが重要だ」などと、ハイタク政策の重要性を訴えた。
要請内容は、「タクシー関連法ならびにその附帯決議の厳格な運用および白タク(ライドシェア)合法化反対の要請」として、①長引くコロナ禍からタクシー事業の維持・再興をはかるために、②タクシー事業における適正化、③ライドシェアと称する白タク合法化問題、④タクシー事業の活性化、⑤タクシー運賃など5項目。


国土交通省からは、岡野まさ子自動車局審議官、森哲也自動車局旅客課長ほか15人が出席した。
岡野審議官は、「タクシーは、ドア・ツー・ドアの、きめ細かな公共交通輸送機関であり、地域住民の足になっている。災害時も緊急輸送手段として、生活のあらゆる面で活躍いただいている」「コロナ禍でもエッセンシャルサービスとして、公共交通機関としての役割を果たしていただいた」「タクシー業界は、引き続き厳しい状況にある。運賃改定について、多くの地域から申請が出されているが、地域の足を確保するために適正な運賃を収受して、運転者が賃上げを早期に実現することが重要である。運賃改定の申請には、できるだけ迅速に審査し、適切に対応していく」「忌憚のない意見を伺い議論し、今後の対応に活かしたい」などと応じ、要請に対する回答を示した。
回答後、参加者からは「実車時の行灯消灯について」「タクシー事業活性化への補助」「UDタクシーでの車いす対応」「訪日外国人旅行者への白タク行為」「タコメータ設置義務の拡大」「UDタクシーと介護タクシーの区別」「運賃改定後の賃金改善フォローアップの厳正な対応」「賃金の不利益変更への指導強化」「最低賃金違反の厳正な処分」などで質疑が出された。
私鉄からは、①吉永順一シンセツタクシー労組書記長が「ドライブレコーダーの運用でのプライバシー保護についての国交省見解」、②田中滋修私鉄ハイタク協副議長/関西ハイタク労連委員長が「日報改ざんの話を聞く。自動日報を義務化してほしい。監査も早くなる。貸切バス同様、更新制も導入すれば、優良事業に早く到達できる」、③堀内隆彦阪急タクシー労組副委員長が「乗務員の健康診断で脳疾患、心臓疾患について、『早期の発見が必要』などと回答しているが、全体の事故のなかで、32%が健康に起因している。最終的には『スクリーニング検査が必要』『定期健康診断が義務』としているが、ほとんどが外見上の兆候や所見がない人が事故を起こしている。本来は、自覚症状や所見のない人がフォローされるべきなのに、そこは『推奨される』との回答である。推奨は義務ではない。事業者は、金がかかるから曖昧にする。疾患による事故は減らない形になる。だから私たちは、スクリーニング検査に対する費用補助を要請している。早急な対応を再度、要請する」などと迫った。
これに対して国交省は、①ドラレコを運行管理に活用しているが、プライバシー保護の配慮は必要だ」、②「監査は、現在の定員では全ての事業者に入りきれないが、違反の疑いがある事業者に絞り、重点的に監査している。監査体制は、着実に強化しているので、監査官の研修を通じて、改ざんを見破る技術の向上を措置し、厳格に対応していく」、③「事業者に運転者の健康状態の把握等は、法令上義務付けている。健康状態の悪化を分かっていながら乗務させていたとなれば、監査の時に罰則を受けることを事業者には伝えている。スクリーニング検査は、どういう方へ優先的に受けていただくか。モデル事業を通じ、ハイリスク者を検証しながら事例を事業者に周知していく。マニュアルを事業者に、いかに使っていただくかが重要。いかに、ハイリスク者が確実に受診し、健康起因の事故防止に繋げるかに取り組んでまいりたい」などと応じた。

〇3.10適正な運賃改定と確実な賃金反映を求める総決起集会~23春闘勝利!ライドシェア反対!~
ハイタクフォーラムは3月10日、東京都内の「全電通労働会館」で、適正な運賃改定と確実な賃金反映を求める総決起集会を開き、全体で200人、私鉄からは49人が参加した。集会冒頭、「ライドシェア問題を考える市民会議」で大変お世話になったが、2月5日に逝去された宮里邦雄弁護士に黙とうをささげた。
溝上泰央代表運営幹事は、「感染リスクにさらされながら、国民の移動の権利を守ってきた。ワクチン接種でもタクシーが活躍した。タクシーが最後の砦となり、地域の足を支えている」「ハイタク労働者は、社会の維持に欠かせない公共交通を支える存在であることを社会に認知してもらう必要がある」「全国101ブロック中、80ブロックで運賃改定の波が起きている。われわれハイタク労働者にとって、ようやく反転攻勢の機会が訪れた」「23春闘は、待遇を変える貴重な場であり労働組合の真価が問われる。粘り強く経営者と交渉を続け、賃金・労働条件向上を勝ち取ろう」などとあいさつした。
続いて、久松勇治私鉄総連ハイタク協議会事務局長が厚生労働省、本田有(たもつ)全自交労連書記次長が国土交通省の要請報告を行った。
連帯あいさつは、清水秀行連合事務局長、住野敏彦交運労協議長、近藤昭一タク議連会長、逢坂誠二立憲民主党代表代行、古川元久国民民主党国対委員長、坂本克己全国ハイタク連合会会長
最高顧問、浦田誠国際運輸労連政策部長から、それぞれいただいた。

また、齋藤貴子私鉄関東ハイタク協日の丸自動車労組書記長による「いますぐ魅力ある産業にし、新たな仲間を増やすとともに去っていった仲間を呼び戻し、持続可能な公共交通を実現しなければならない」「そしてなによりも運賃改定が、確実に私たちの賃金改善に反映されることが重要であり、まずは賃金の改善こそ、最優先されるべきだ」などとした集会アピール提案を満場の拍手で採択した。
集会は、団結がんばろうで締めくくった。

〇「交通運輸産業における迅速な運賃改定と賃金・労働条件への確実な反映を求める請願署名」提出行動・タクシー政策議員連盟との意見交換
ハイタクフォーラムは総決起集会終了後、衆議院第一議員会館大会議室で、衆参両院議長へ提出する「交通運輸産業における迅速な運賃改定と賃金・労働条件への確実な反映を求める請願署名」をタクシー政策議員連盟(以降、タク議連)へ託し、タク議連と意見を交わした。行動には、全体112人、私鉄から32人が参加した。

司会は、道下大樹タク議連事務局次長が務めた。
溝上代表運営幹事は、「ハイタク産業は、厳しい状況が続いている。運賃改定が一筋の光明であることは間違いないが、これをバネにハイタク労働者としても利用者利便向上に、よりいっそうの努力を惜しまず持続可能な産業を構築していく」「改正タクシー特措法から9年が経過したが、いまだ活性化・適正化にも十分な成果が見えない」「全国の仲間が集めた請願署名を、議連の皆さんに託し、まじめに頑張っている事業者と労働者が報われる制度・政策をお願いしたい」などとあいさつした。
出席議員の紹介後、近藤タク議連会長は、「コロナ禍の3年間、リスクを負いながら現場で頑張っていただいている。バス路線が減少しているなか、最後の砦は、やはりタクシー・ハイヤー。現場を支えていただいている皆さんの、厳しい、切なる声を受けとめたい。働きやすい環境を作り、みんなが行きたいところへ、行きたい時間に行ける社会を、みんなで支え合っていくために、現場のみなさんとともに頑張る」などとあいさつした。
また泉健太タク議連顧問/立憲民主党代表は、「働くみなさんの環境は傷を負っている状況。物価が上がるのに実入りがない状況を政治や行政が直視し、改善していかなければならない局面」「賃上げに対する支援が弱い」「エッセンシャルワーカーであるみなさんを守れずして交通弱者は守れない」「請願署名を重く受けとめ、政府へ要望を続けていく」などとあいさつした。
その後、衆参両院議長へ提出するため、13万9,653筆の請願署名を、タク議連へ託した。
地方情勢は、全自交富山地連、交通労連関西地方総支部が富山と大阪の状況を、私鉄は酒井博私鉄関東ハイタク協議会事務局長が、東京の運賃改定後の稼働や営業収入、春闘労使交渉状況などとともに、「お客さまに感動と満足を与えられるようなタクシーとなるよう活動を展開していく」などと報告した。