
9月27日、全世代型社会保障構築本部が持ち回り開催され、同日付けで、「年収の壁・支援強化パッケージ」が決定され、その内容が公表された。
従来から存在する「キャリアアップ助成金」に新たなコースを設けることにより実施するものでありその申請が必要であったり、そのためには所定労働時間を長くする取組み、時給を引き上げる取組みをすること、社会保険加入促進手当等の新たな手当を支給する必要があったり、もちろん事務負担の増加も伴うので注意が必要。
また、社会保険加入促進手当等の新たな手当を支給した場合、3年目に算定対象となったからといって簡単に廃止できない点にも注意。
もちろんいずれにしても、事業主の保険料負担は増える。
あまりにもややこしいだけの場当たり的な制度であって「厚生労働省もよくもまあ」という感じだし、しかも周知や報道の仕方がミスリードで、「社会保険に入っても自分の分の保険料は会社が負担してくれる」とか「助成金は自分に払われる」との勘違いの声がパートなどで働いている人から聞こえてきていて、ちょっと「まずいな」とも自分は感じているが…。
「年収の壁」への当面の対応策
いわゆる「年収の壁」への対応HP
「年収の壁」への当面の対応策( 「年収の壁・支援強化パッケージ」) 概要
人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するため、当面の対応として下記施策(支援強化パッケージ)に取り組むこととし、早急に開始する。さらに、制度の見直しに取り組む。
〇106万円の壁への対応
◆キャリアアップ助成金 ※省令の改正が必要
キャリアアップ助成金のコースを新設し、短時間労働者が被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用による手取り収入の減少を意識せず働くことができるよう、労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対して、労働者1人当たり最大50万円の支援を行う。なお、実施に当たり、支給申請の事務を簡素化。
労働者の収入を増加させる取組については、賃上げや所定労働時間の延⾧のほか、被用者保険適用に伴う保険料負担軽減のための手当(社会保険適用促進手当)として、支給する場合も対象とする。
◆社会保険適用促進手当
事業主が支給した社会保険適用促進手当については、適用に当たっての労使双方の保険料負担を軽減するため、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として被保険者の標準報酬の算定において考慮しない。
〇130万円の壁への対応
◆事業主の証明による被扶養者認定の円滑化被扶養者認定基準(年収130万円)について、労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動による被扶養者認定の判断に際し、事業主の証明の添付による迅速な判断を可能とする。
〇配偶者手当への対応
◆企業の配偶者手当の見直しの促進
特に中小企業においても、配偶者手当の見直しが進むよう、
(1) 見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成・公表するとともに、
(2) 中小企業団体等を通じて周知する。

キャリアアップ助成金: 社会保険適用時処遇改善コース
短時間労働者が新たに被用者保険の適用となる際に、労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対して、一定期間助成を行う
ことにより、壁を意識せず働くことのできる環境づくりを後押しするため、コースを新設し、複数のメニューを設ける。
社会保険適用時処遇改善コース
新たに被用者保険を適用するとともに、労働者の収入を増加させる取組を行う事業主に対して助成。
一事業所当たりの申請人数の上限を撤廃。
令和7年度末までに労働者に被用者保険の適用を行った事業主が対象。
支給申請に当たり、提出書類の簡素化など事務負担を軽減。

助成金活用イメージ< 手当等により収入を増加させる場合( 手当等支給メニュー) >
被用者保険適用後、社会保険料相当額の一時的な手当支給を行った事業主に助成(最大2年間)。3年目以降、継続的な収入の増加に取り組むことが必要。
(注)・助成額は中小企業の場合。大企業の場合は3/4の額。
・①、②の賃金は標準報酬月額及び標準賞与額、③の賃金は基本給。
・1、2年目は取組から6ヶ月ごとに支給申請(1回あたり10万円支給)。
3年目は6ヶ月後に支給申請。
※1 一時的な手当(標準報酬月額の算定に考慮されない「社会保険適用促進手当」)による支給も可。
※2 基本給のほか、被用者保険適用時に設けた一時的な手当を恒常的なものとする場合、当該手当を含む。労働時間の延⾧との組み合わせによる増額も可。
また、2年目に前倒して③の取組(賃金の増額の場合のみ)を実施する場合、3回目の支給申請でまとめて助成(30万円)。
(2)労働時間延⾧メニュー(労働時間延⾧を組み合わせる場合)
<現行の短時間労働者労働時間延⾧コースの拡充>

助成金活用イメージ< 手当等と労働時間延⾧を組み合わせる場合( 併用メニュー) >
被用者保険適用後、1年間は一時的な手当支給を行い、2年目以降、継続的な収入の増加に取り組む場合。
(3)併用メニュー
1年目に(1)の取組による助成(20万円)を受けた後、
2年目に(2)の取組による助成(30万円)を受けることが可能。

社会保険適用促進手当について
〇概要
○ 短時間労働者への被用者保険の適用を促進するため、非適用の労働者が新たに適用となった場合に、事業主は、当該労働者の保険料負担を軽減するため、「社会保険適用促進手当」を支給することができることとする。
※ 当該手当などにより標準報酬月額・標準賞与額の15%以上分を追加支給した場合、キャリアアップ助成金の対象となりうる。
○ 「社会保険適用促進手当」は、給与・賞与とは別に支給するものとし、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととする。
※ 同一事業所内で同じ条件で働く他の労働者にも同水準の手当を特例的に支給する場合には、社会保険適用促進手当に準じるものとして、同様の取り扱いとする。
〇要件等
①対象者
標準報酬月額が10.4万円以下の者
②報酬から除外する手当の上限額
被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額とする。
※令和5年度の厚生年金保険料率18.3%、健康保険料率(協会けんぽの全国平均)10.0%、介護保険料率1.82%の場合の本人負担分保険料相当額
③期間の上限
最大2年間の措置とする。

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
〇概要
○ 被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認しているところ、短時間労働者である被扶養者(第3号被保険者等)について、一時的に年収が130万円以上となる場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な被扶養者認定を可能とする。
※ あくまでも「一時的な事情」として認定を行うことから、同一の者について原則として連続2回までを上限とする。