
【🎦13 2022/03/26鑑賞】 ショービジネスでの成功を目指す、野心溢れる青年スタンがたどり着いたのは、人間とも獣ともつかない生き物を出し物にする、華やかさと怪しさに満ちたカーニバルの世界。スタンは読心術を身につけ、ショービジネスの世界をその才能と魅力で駆け上がっていくが、その先には予想もつかない栄光と闇が待ち受けていた…。
ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの「ナイトメア・アリー 悪夢小路 (扶桑社BOOKSミステリー)」を原作に描くサスペンス、ショービジネスの世界で成功した野心家の青年の運命が、ある心理学者との出会いによって狂い始めるという映画。
原題は同じ「NIGHTMARE ALLEY」、NIGHTMAREは悪夢、ALLEYは路地で、原作では「悪夢小路」と訳されていて、字幕でもそうなっていた。

1930年代の猥雑な空気を感じると同時に妖しげな幻想美を醸し出しつつ、場面場面ではかなり悪趣味なグロテスクさもあって…。
特に、前半の移動式遊園地や見世物小屋は、ポスターも小道具も妖しく禍々しいのに、どこか夢幻的な甘さを宿しているのは画面の色彩の使い方のせいなのか。
撮影と美術がとってもギレルモ・デル・トロ監督らしく、あとで知ったが、撮影も編集も衣装も『シェイプ・オブ・ウォーター』と同じだそうで、納得。

主人公は同じながら、前半と後半で物語や色彩はくっきりと分かれていて、2つの別もののストーリーを観ているかのよう。
因果応報の皮肉なクライマックスの際に気付いたが、後半はこのショッキングなクライマックスのために「赤」という色が極力使われていなかったのだ!
そしてそして最後の最後の数分間のシーン、150分という長尺の映画ながら、この140分ほどの時間はすべてこのラストの数分のためのプロローグにしか過ぎないのか…。
狂気と人間の本能のスレスレの境界を表現したブラッドリー・クーパーの演技、ケイト・ブランシェットが抜群の存在感もすごいのだが、ルーニー・マーラが物語の軸を微動だにさせなかったという意味で、敢闘賞だ。