goo blog サービス終了のお知らせ 

労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

労組の仕事している勤務社労士がもしや誰かの役に立ってるんかな~と思いつつ飲んだくれて書いてるっす~(* ̄∀ ̄)ノ■☆

【メモ】他人の故意に基づく暴行による負傷の取扱いについて(平成21年7月23日 付け基発0723第12号)被害者の挑発に関する判令

2025-05-13 | 書記長社労士 労働災害

他人の故意に基づく暴行による負傷の取扱いについて
(平成21年7月23日)(基発0723第12号)(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 標記については、従来、個別の事案ごとに業務(通勤)と災害との間に相当因果関係が認められるか否かを判断し、その業務(通勤)起因性の有無を判断してきたところであるが、今般、近時の判例の動向や認定事例の蓄積等を踏まえ、以下のとおり取り扱うこととしたので、了知の上、遺漏なきを期されたい。

 業務に従事している場合又は通勤途上である場合において被った負傷であって、他人の故意に基づく暴行によるものについては、当該故意が私的怨恨に基づくもの、自招行為によるものその他明らかに業務に起因しないものを除き、業務に起因する又は通勤によるものと推定することとする。
   

🆗業務災害と認定した裁判例
〇 同じ職場の従業員に対し、指示や注意をする際に侮辱的意味合いを含んだ発言をして暴行を受け負傷した事案において、裁判所は、加害者が被害者の指示に反抗的な態度をとったことに対する戒めの意味も込めていたこと、及び侮辱的意味合いを含んだ指示、注意に憤慨した加害者による暴行は時間的、場所的に極めて近接していること等から、本件暴行が被害者の「仕事上の指示、注意という業務に関連して、その業務に内在または随伴する危険が現実化して発生したものと認めるのが相当である」と判断し、業務起因性を肯定した。(中野建設工業事件・新潟地判平15年7月25日)。

〇 マークレディは、競馬場のマスコットガール的存在とされ、男性から見て魅力を感じさせる女性(一般的には容姿端麗な女性)に限定されていた一方で、マークレディと警備員は、実質的には協働して業務に当たり、相互に一定の私語を交わすような同僚労働者と同等な関係にあったものであり、そうであれば、男性警備員が魅力的な女性であるマークレディに対して恋愛感情を抱くことも決してないとはいえず、その結果、ストーカー的行動を引き起こすことも全く予想できないわけではない。これは、単なる同僚労働者間の恋愛のもつれとは質的に異なっており、いわばマークレディとしての職務に内在する危険性に基づくものであると認定し、業務起因性を肯定した。(園田競馬場事件・大阪高判平24年12月25日)。

🆖業務災害を否定した裁判例
〇 被害者が口論に際して加害者に対して侮辱的な言辞を用い、それが同僚の立腹を誘発し、最終的に喧嘩闘争となって被害者が加害者の掴みかかる行為を避けようと足を滑らせて転倒して死亡した事案において、裁判所は、被害者の一連の行為が本来の業務に含まれないこと等を理由として業務起因性を否定した。(雪島鉄工所事件・東京高判昭60年3月25日)。

〇 建築現場で大工仕事をしていた被害者が、訪ねてきた元同僚と仕事上のことに端を発してけんかとなり、頭部を殴打されて死亡した事例において、裁判所は被害者が加害者に感情を刺激するような言辞を述べ、嘲笑的態度をとり、暴力を挑発したことによるもので、元同僚に対して退去を求めるために必要な行為と解することができないとして、業務起因性を否定した。(倉敷労基署長事件・最判昭49年9月2日)。

〇 会社がタイムカードの廃止を宣言していたにもかかわらず、労働者(被災者)が会社からの退場に際してタイムカード打刻の手続を行おうとしたところ、警備員らにより同行為を阻止された際に傷害を負った事案において、裁判所は「自ら作り出した危険に基づいて生じたもの」と認定し、業務起因性を否定した。(亀戸労基署長事件・東京地判昭57年7月14日)。

〇 市バスの運転手が自らのバス運転業務に対する苦情処理の公務の遂行中に乗客から殴打されて傷害を負った事案において、裁判所は「傷害の直接の原因は原告(※被災労働者)の現場における態度」にあること等を理由として、業務起因性を否定した。(京都市バス事件・京都地判平9年9月10日)。

〇 農協支所貯金係の女性職員が、一方的に恋慕の情を抱いていた顧客により職場で刺殺された事例において、裁判所は、加害者が一方的に被害者に恋愛感情を持ち、結婚を望んだが実現できそうになかったことや、貯金の受入れ、払戻し業務、物品の販売業務という販売係の職務内容として外来者と接することが必要であるが、世間一般の販売係と同じく事務的なものにすぎず、職務内容がことさら恋愛感情やそれに基づく反感や怨みを誘引するものであるとは言い難いこと等を理由として、業務起因性を否定した。(呉労基署長事件・広島高判平49年3月27日)。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シンポ 「万博と日本版ライ... | トップ | 2024年4月に読んだ本 »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。