
「交通の安全と労働を考える市民会議~ライドシェア問題を考える~」は、5月10日、大阪市中央区のエルおおさかで「万博と日本版ライドシェア24時間解禁の先に何があるか?~大阪から公共交通の『未来』を考える」と題し、大阪万博を口実とした日本版ライドシェア(RS)の24時間運行をきっかけに維新の会が完全版のRSを実現しようとしている現状と問題点についてシンポジウムを開催した。
当日は、京阪神の労組幹部を中心に、一部タクシー事業者幹部も含めて会場をほぼ一杯にするとともにZoomによるリモート参加も含め多数が参加した。

冒頭、「万博での24時間RS導入の経過」について私鉄関西ハイタク労連の大南昌彦委員長が報告。
大南委員長は、「大阪ではニューモ社が目立った動きを見せている」とし、万博RSの実施では「大阪府の動向を把握した動きがみられる」と指摘。
RS法案を進める日本維新の会への警戒を呼び掛け「予断を許さない」と警鐘を鳴らした。

続いて日本城タクシーの坂本篤紀社長が「大阪におけるタクシーの現状(万博開催後の状況も含め)」をテーマに講演。
「吉村(洋文)大阪府知事は2年ぐらい前に突然2300両のタクシーが足りないと言ったが、そこから乗務員証の登録は毎月約100人増え、実質的には2400両増となった。2300両より100両オーバーしているのに、(吉村知事は)不足状態が解消されたとは言わない」として、「全体として大阪・関西万博の開催でどれだけタクシーの売上が上がったかというと、対前年で100%か下手すると99%かもしれない。万博が始まってから正直、ちょっと落ちている」と指摘するとともに、維新等RS推進派が求める「完全なRS」というのが曲者で、「普通は『完全な人の輸送』とは、(事故の際)お客様や通行人、乗務員のけがも補償するが、彼らが推進するRSは補償もしない、要は運転者の自己責任。監督官庁もなく、問題も公表しないようなものは、日本にはそぐわない。彼らの言う『完全』とは『完全に補償しない』こと。乗らない人が被害に遭い、轢かれた人が損をする。動機は簡単、自分たちが儲かったら良い、ただそれだけの話だ」と安全面の懸念を示し、当事者意識を持って一般にアピールしてもらいたいと述べ、維新府政のデタラメを痛烈に批判した。

次に日本労働弁護団の木下徹郎・常任幹事が「24時間RS導入の法的問題点」、労働ジャーナリスト(前国際運輸労連政策部長)の浦田誠氏が「万博のその先 海外の情勢から」をテーマにそれぞれ報告した。⇒木下弁護士の発言要旨はこちら「「『ライドシェア』の法的問題」木下徹郎弁護士@大阪シンポ 「万博と日本版ライドシェア24時間解禁の先に何があるか?」~大阪から公共交通の「未来」を考える~」
浦田氏は、RSドライバーの労働者性を認める判決が世界各国で相次いでいるとし、法整備を待たずになし崩しでRSを広めた海外の事例や、それを阻止した事例を具体的に紹介し「安全性の問題だけでなく、料金と台数の規制、ギグ労働(請負)の問題を強調していくべきだ」と訴えた。

市長として子育て支援に取り組み、人口と出生率を引き上げた泉房穂・前明石市長が在任12 年間の公共交通との連携・支援について紹介。
まず駅前のたばこのポイ捨てをなくすために喫煙所を設け分煙化を図り、荒っぽい接客を改善すべく補助も出し乗務員研修を促したほか、「市民を応援するために高齢者にタクシー券を出すことで、タクシー業界も支援。補助金も出しマタニティータクシーも走らせた」と報告、待機児童問題を例えに交通問題を語り、「共通するのは量だけでなく質が大事ということ。質を担保するためには、保育士さんやドライバーさんの待遇改善こそ重要だ」、「公共交通・移動は福祉だ。民間まかせだけでなく、公共が責任をもつべき分野」などと述べ、「安全だけでなく安心のためには、このような会議が重要」と語った。⇒ 発言要旨はこちら 「泉房穂前明石市長@大阪シンポ 「万博と日本版ライドシェア24時間解禁の先に何があるか?」~大阪から公共交通の「未来」を考える~」

また辻元清美・参院議員が「RSを巡る政治情勢」について、国土交通委員会で、河野太郎に対して「アメリカの領事館で日本国民にライドシェアを乗るときには気を付けろという警鐘を鳴らしたときの外務大臣はあなただったよね」って追求した件など、国会での議論を紹介しつつ、「タクシーだけでなく、バスも含めた総合的な交通施策が地方には求められる」と、人口減少の進行する自治体の経営では、交通空白の解消に向けた一層の取り組みが必要との見方を示した。

その後、木下氏が代表して質疑を行った。
辻元氏は、泉氏とは互いに古くからの友人だったと明かし、迫る参議院選に向けて、国政への挑戦を表明している泉氏が「政党がしっかり安全・安心を大事にする姿を示すべき」と述べたことに対し、辻元氏は「泉さんも国会に来たら、タッグを組んで一緒にRSを止めようね」と笑顔でエールを送った。
さらに辻元氏は「国土交通大臣」になると宣言した。

参加してくれていた野々上愛大阪府議会議員に大阪の議会の状況について発言を求めたところ、野々上氏は「私、少し合点がいったところがあった。維新が国会でライドシェア法案を出したが、実は大阪の維新は『国会の維新なにやってくれんねん』って怒ってて、万博のどさくさ、違法状態で既成事実を作っていこうとしているのに、国の維新はなんで寝た子を起こしてくれるなという生々しい議論が、実は維新の中で聞こえてきてて、とても平仄が合いました。大阪府議会は、維新が55人いて、私たち立憲が2人しかいないというような状況で、もうほんまに苦労して議論してますけど、何よりも現場の皆さんの声が、私たちの力にもなりますので、今日を契機にさらに連携をしてきます。」と、リアルな報告があった。
最後に、山口広弁護士が「市民の利便性より先に大切なのは市民の安全。すなわち『社会の安全』を守るためこれからも頑張りましょう」と締めた。
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