ひろきち劇場NEO

ソフトウェア開発から写真、旅行、ダイビングまで寄せ鍋風にお届けするブログ。ええダシが出てる・・・かな

ETWEST 組込み総合技術展 2008 - パネルセッション

2008年06月08日 | ◆仕事
特別基調講演の後に行われたパネルセッション「組込み開発で「要求」は誰の手中にあるのか?」も聴講した。



こちらはパネルディスカッション形式で「組込み開発における要求って、一体ナニモノなのか」についてパネラーたちが思いを語るもの。パメラーの発言メモをそのまま書いても意味不明と思うので、面白いなと思ったものをピックアップします。

なお、講演者側は以下の通り。

モデレータ:前川 直也 氏(松下電器産業株式会社)
パネリスト:穴田 啓樹 氏(キャッツ株式会社)
      加藤 彰 氏(株式会社日本総合研究所)
      萩本 順三 氏(株式会社豆蔵)
      濱崎 治 氏(オムロン株式会社)
      米光 一成 氏(立命館大学)




■HowからWhatを創出する
 What(目標にする商品や機能)を達成するためにHow(技術や方法)を考えるだけではなく、HowからWhatを作るプロセスも大事。言い換えればSeedsからNeedsを作るということ。このWhatからHow、HowからWhatの両方をうまくチューニングできているところが成功しているのではないか。

■ビジネスと開発の統合
 ビジネスと開発を分けて考えていることが多いが本当はこれらを合わせて考えることが重要。Howの人(技術)の人にWhat(経営/戦略)を見せる、あるいはWhatの人にHowを見せるということ。両者がお互いを意識し合いながらそれぞれを追求する。でも実際はHowオタクの人がHowの領域を動かしてたりするんだよね・・・Whatなんか知らん!というような人が。

■カリスマ監督がいない
 演劇の世界ではカリスマ監督がいなくなったため、舞台監督が役者をぐいぐい引っ張って行くスタイルから役者が舞台を作り上げて行くスタイルに変わった。今の舞台監督の役割は「どうやって役者の力を最大限引き出すか」になっている。「Yes-And」という言葉があって、役者から「こうしたい」という提案があったとき「わかった。ではこの場合はどうすればいい?」といったん受け入れたうえで問題点を投げかけるというやり方が行われている。

■ゲームは少数開発
 PS3のような大規模なゲームソフトであっても今は6人から8にんで開発が行われているのが普通。むかしは大人数で分担してやっていて、兵隊の「足」だけをひたすら書く人とか「顔」ばかり書かされている人などがいた。どんどん大規模化するソフト開発のなかこのままでは無理だと気づいて少人数開発を始めたのが成功して、いまではゲーム業界では少人数開発が当たり前になっている。アジャイルを突き詰めた結果である。

■ファシリテーションの実践例
 フロアの真ん中で部長会議:場を共有することで空気が変わる
 狭い部屋でやる:発言数が変わる

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<感想>
 結局、主題である「組込み開発で「要求」は誰の手中にあるのか?」については「場」にあるのではないかという流れになった。顧客や市場、企画や経営陣が握っているわけではなく、開発がコントロールしているわけでもない。これら関係した人たちが「要求」について考える「場」にゆだねられる。何となく予想していたとおりの方向ではある。

興味深かったのは、上記2つ目に上げた「ビジネスと開発の統合」の話は特別基調講演で松下電器の櫛木氏が呼びかけた内容にシンクロしていたことだ。(この意見は株式会社豆蔵の萩本氏が発したものであり、松下電器の前川氏が誘導したものではない)やはり経営の視点で技術を考えるとこういう結論に達するということなのだろう。しかし「Howオタク」という言葉にもあるとおり、技術屋に経営を意識させるには戦略的な人材育成が不可欠であろう。経営の分かるエンジニアが自然出現するのを待つのは現実的な母数では期待できないのではないか。

なお、下の写真は加藤氏による「ファシリテーション・グラフィック」という手法で書き出された議事の内容。論点の整理を主眼においている点で単なる議事録とは異なる。




ETWEST 組込み総合技術展 2008 - 特別基調講演

2008年06月08日 | ◆仕事
6月5日(木)13:00-14:00 5号館2F 国際会議ホールで行われた特別基調講演デジタル家電に見る組込みソフトウェアの10年の総括と次のステージを聴講してきたのでそのメモから抜粋する。

■拡大するデジタル家電
 DTV、DVD/BD、DSCが急成長。3つ足して3億台。
 日本メーカーのシェアが高くカーナビ70.8%、ビデオカメラは91.9%。
 
■コスト比重の変化
 コストの比重が製造から開発へシフト
 テレビの場合アナログ時代に5%だったソフト開発コスト比率がデジタル化で50%に
 ユビキタスへ向けまだスタートライン

■三大競争
 1)激烈な開発競争
 2)熾烈な時間競争
  商品ライフサイクルの短命化
  ムーバでは36ヶ月→P904では8ヶ月
 3)想像を絶する価格競争
  価格半減期は13年から6年へ(テレビの場合)

■デジタルネットワーク大変革
 この10年で激戦。
 組込みソフト開発が爆発、ソフトが納期の責任を負うことに。
 組込みソフト開発リーダーの力量が問われている。

■組込みソフト開発におけるリーダー像
 アーキテクチャを再構築する力
 事業戦略を分析し紐付け出来るリーダーへ
 新ビジネスモデルに紐付け出来るアーキテクトがいるか?
 第一期:1976年~ デジタル制御家電における「プロジェクトマネージャ」CMM
 第二期:1996年~ デジタルAV家電における「プラットフォームアーキテクト」CMMI
 第三期:2006年~ ネット家電の時代においては???

■松下電器における事例紹介
 Uniphier、LINUXシステムでソフト資産の共通化→効率5倍以上
 DPIMにおける戦略的開発推進

■これからの組込みソフト開発リーダー
 グローバル事業戦略:グローバル標準採用
 アライアンス:オープンソース、外部資産の活用
 ネットワーク:その国・地域に適したネットワーク
 環境対応:規制・省エネ
 安全-品質設計:国情を配慮したフェールセーフ

 リーダー像:「グローバル事業戦略型システムアーキテクト」
       収支を遵守したグローバル納期必達
       グローバル事業戦略/商品戦略を見据え、
       経営者に適切な設計戦略を提案する

■経営と技術をつなぐ4つの視点
 利益・コスト
 時間
 品質
 環境

■まとめ
 プラットフォームアーキテクトの確立
 継続的なプロセス改善
 経営指標で語れるソフトリーダー
 新課題(グローバル事業戦略、環境問題など)への提案力
 ↓
 リーダー育成力が問われている
 組込みソフト産業推進会議に期待

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<感想>
全体の話としてはよく分かるのだが、現実問題として会社側が求めるリーダー像はレベルが高すぎる。システムアーキテクトも経営戦略も誰でもやれる仕事ではない。両方とも非常に高い専門性を求められる役割であり、一部のエリートがこの基準を満たすことが出来る。さらに一人のリーダーがこれらのスキルの両方を備えるというのは現実離れ感がある。実際のところは経営、企画、開発のそれぞれがお互いの領域を意識しながら補完し合う形で進めて行くのではないだろうか。