1969/04/09に生まれて

1969年4月9日に生まれた人間の記録簿。例えば・・・・

柏の赤獅子③

2007-12-11 17:52:09 | 旅の記録
そのカフェから『赤獅子』までは僅か数10mだった。だから店を出た瞬間に『赤獅子』がどうなっているのかがわかった。

入口に休憩用?の木製のベンチが置いてあり、傍らには植木鉢?の灰皿が置いてあり、店内には明かりが点いていた。
そして店内には1匹の“オス赤獅子”が居た。
どうやら店は開店したばかりのようだった。
“オス赤獅子”は店内の清掃に余念が無かった。
ウィンドーには冬用の今流行の女性用の帽子やキャップ等が飾られていた。確かに古着屋ではなかった。
店内に入ってみた。だけど荷物が邪魔だったので、入口付近の空いたスペースに荷物を置かせてくれと頼み店の外にでると、そのついでにタバコに火を点けてしばらく“オス赤獅子”を観察した。


ボクは数少ない情報を頼りにここまで来ていた。あの“オス赤獅子”は、ボクのターゲットである獲物なのか、そんな思いで観察を続けた。“オス赤獅子”は、ボクの行動に全く関心を示さず、奥から掃除機を持ち出してきて、ガーガーやり始めた。
まったくマイペースな『赤獅子』だぜ、酔っぱらっていい気になってたボクはそう思った。


掃除が終わった頃を見計らって店内に入った。
そして商品の物色を開始した。店内には昨日の“メス赤獅子”からの報告のとおり、『赤獅子』のオリジナルブランドのTシャツ及びシャツが置かれたてあった。
まず、その棚あたりを物色。しかし、最初に目にとまったのは、黒地に黄色文字でプリントされたオリジナルTシャツだった。
そのシャツには「NO BEER NO LIFE(ビール無しでは生きていけない)」と書かれてあった。ボクの嗅覚に間違いが無かったことが証明された瞬間だった。


“オス赤獅子”は、カウンターでナニゲのそぶりだった。
身長は180cm強。古びたスニーカーにジーンズ。黒のロングシャツに「ウェスタンラリアート20th?アニバーサリー(英語)」とか書かれた白のTシャツを重ね着し、トップは黒のハンチング帽子だった。顔面にはメガネとヒゲがあった。特に、カッコ良さは感じなかったし、彼が国内トップレベルの少年野球ブロガーであるという雰囲気は微塵も無かった。しかし、ボクは確信した。ゼッタイに間違いないと。この左門豊作をギュギュギューッと絞ったようなオヤジこそ、ボクが、追い求めてきた人物であると。


ボクのミッションは終わりに近づこうとしていた。


ボクは8点の商品をカウンターに載せ精算を頼んだ。
それなりの金額になってしまっていて、現金で払うかズイブン迷ったが、ここである少年野球オヤジの男気を有効に使わせてもらった。
値札を丁寧にはずしてくれる店長に、ボクは簡単にイキサツを話した。
店長は、手を止めるとニッと笑って「私がmetooです」と自己紹介してくれた。

それから店の外に出て、しばし歓談。
metooさんの目下の悩みは、シーズンオフになるとネタ薄になることだった。
そして、少年野球には少年野球の数だけ、悩みや困難、嬉しさ、愛があると、そんなことを語ってくれた。
最後に別れの挨拶をすると、metooさんは帽子を取ってお辞儀をしてくれた。半伸びした坊主頭に野球オヤジの片鱗が見て取れて嬉しくなった瞬間だった。
ボクはまだ酔っぱらっていた。



今、ボクの手元に一枚の名刺がある。
「REDLION T-SHIRT SHOP」と書かれてある。

metooさん、ありがとう。
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柏の赤獅子②

2007-12-11 11:22:54 | 旅の記録
その店で使用されていた暖房器具は、ベージュ色のいわゆる昔ながらの円筒形の石油ストーブで、小窓から見える橙色の炎が、店内を暖かいものにしていた。

奥にどうぞと言われ、奥へ行くと、そこには4組の20代のキレイ系女性達がランチ中であった。

そこには、オヤジはお呼びでない雰囲気が漂っており、それ以上奥へは行けなくなったボクはオーディオが置いてある一番手前の席に腰をおろした。

ジーインズでラフな格好をしたカワイイ顔のウェイトレスの彼女に、とりあえずビールを注文した。

彼女はキョトンとした表情になった。ツカツカと接近してきて、「生ビールでよろしいでしょうか」と意思確認のような口調だった。
「ハイ、ナマを・・・」ボクはそう答えるのが精一杯だった。
「ナニかツマミを・・・」と言いそうになったが、メニューも見ずに「ランチ下さい」と無難に言った。


店内には、スローなかんじのクリスマスソングが流れていた。
オーディオが置かれたラックには、サーフ系雑誌やハワイアンのオーガニック系のCDがあった。

ランチを待っている間、ボクは音楽を聴きながら生ビールを喉に流し込みながら、ここまでのミッションの過程を野球に例えて振り返っていた。

1球目は『見逃し』だった。→場所を間違えた。
2球目は『空振り』だった。→店は閉まっていた。
打席を外し、一呼吸している。→現在だった。

ランチを運んできた彼女に、『赤獅子』について訊いてみた。

もともと『赤獅子』は古着屋でこの近辺では有名な店だったと話してくれ、だけど、最近、ソレはやめているみたいだと付け加えた。そして、いつもは12時には開店しているとそう教えてくれた。

時計は既に12時30分を回っていた。
クリスマスソングが止み、ボクがオーディオを気にしていると、厨房から若いシェフがでてきて別の音楽に替えてくれた。
アコースティックギターをバックに男性ボーカルが暖かい風のような唄を奏でていた。
2杯目が全身をゆるくほぐしてくれ、ボクはビールと音楽をしばらく楽しんだ。

だけど、3球目が心配だった。
三振したら、また、この店にくればいいや、そう思った。

時計は1時を過ぎた。
酔いが回り最高の気分になった。
お店をでるときに、今、流れてる音楽のアーティスト名を訊いた。
彼女はCDケースをボクのところに持ってきてくれ、喜々としてそのアーティストについて説明してくれた。LAULAという男性デュオだった。時々、お店でライブもするという。今度是非、聞きに来てくれと満面の笑みで誘ってくれた。
だけど、ボクはこういう素性の男で残念ながらそう簡単には来れない旨を話し、今から行く『赤獅子』が閉店だったらまた戻ってきてゆっくりさせて下さいと言って、そのカフェを後にしたのだった。
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