山崎豊子さんのベストセラー小説を映画化した作品。
若松節朗監督の、
『沈まぬ太陽』
を借りて来て観ました♪
作品中では「国民航空」と呼ばれていますが、現在(2010年)会社更生法を申請して破産し、飛行機を飛ばしながら経営再建をはかっている「日本航空」(JAL)をモデルとした映画です。
主演の渡辺謙さんが演じるのは、国民航空の労働組合で委員長を務める恩地元という人物。
「空の安全」のため、会社側と激しく交渉する恩地は、懲罰人事で海外赴任を命じられ、パキスタン、イラン、ケニアと次々と転勤を強いられます。
巨大な企業の中で甘い汁を吸い、従業員を互いに争わせ、従業員の人格も乗客の安全も考えない経営者たち…
役員たちに一筆詫び状を書けば日本に呼び戻してやるという上司の誘いに、しかし恩地は「一緒に戦った(労働組合の)仲間に顔向けできない」と、自分の矜持(きょうじ)を貫きます。
最初は2年という約束だった海外勤務はのびにのび、最終的には10年の歳月が流れていく…
妻は疲れ果て、反発する息子や幼い娘。
一方会社側は新たに言いなりになる「第二労組」を作らせ、恩地の仲間たちを次々と閑職に追いやり、うるさい労働組合を黙らせます。
その中で指導的に「労組つぶし」に手を貸すのが、かつて恩地と共に副委員長として戦った三浦友和さん演じる行天(ぎょうてん)。
この三浦友和さんの演技がよかった~
本当の悪人に見えてしまう!!
役員は自分のことしか考えず、社員同士がいがみあう最悪の職場。
精神的にも追い詰められていく渡辺謙さんの狂気の演技もスゴイ。
そしてようやく帰国した恩地を待っていたのは、最悪の航空機事故…
群馬県の御巣鷹山にジャンボ機が墜落。
乗員乗客520人が死亡したのです(生存者4名)
原作者の山崎豊子さんのインタビューも読みましたが、この作品を書くにあたって、日本航空からのかなりのプレッシャーがあったそうです。
映画化も当初は不可能といわれていました。
国民航空にはびこる組織悪と政界との癒着、そして不法行為の数々…
墜落していく飛行機の中で最後まで乗客のために働くスチュワーデス…
残されたわずかな時間に家族へのメッセージを書きなぐる父親…
飛行機は四散し、燃え上がり、乗客の体もバラバラに…
…言葉も出ない。
それなのに、それなにの、国民航空の役員の考えることっていったら!!
本当に怒りがこみあげてきました!
墜落事故の遺族の叫びが胸に刺さります!
遺族の世話係りとして東奔西走し、ひたすら頭を下げ続ける恩地。
映画を観た人の感想も読みましたが、主人公恩地の生き方に疑問を持つ人もいました。
「組織なんてそんなもの。個人の力で何ができるの。嫌なら辞めればいいのに…」
私は恩地の生き方にすごく共感できました。
けっしてヒーローなんかじゃありません。
自分も傷つき、家族も傷つき、仲間も傷つくとても厳しい生き方です。
それでも、それでも許してはいけないものがある以上、それは許してはいけない。
自分に言い訳をして、世間とはそういうものさとわかったような口をきき、あきらめて皮肉な笑いを浮かべる。
そんな生き方は誰だってできる。
原作者の山崎豊子さんのインタビューの中の言葉が印象的でした。
…勇気を失わないこと。
戦い続けること。
この映画を日本航空の人はどんな気持で見るのだろう、と思わず思ってしまいました。
アフリカに行ってみたい!!
もう絶対日本航空には乗りたくない!!(あくまで個人的な意見です)
すごく考えさせられる映画でした。
ただ、映画としてはちょっと間延びした印象があって(202分もあります)、海外ロケして大変だったのはわかるけれど、イランやケニアのシーンはもっとカットしてもよかったし、日本でも墜落事故の遺族を訪ねるシーンとかでだらだら歩いているシーンがあって、各所に(それっている?)というシーンが多かったような感じがしました。
原作にあるシーンなんでしょうが、映像としてはもう一つ。
ま、ドラマ重視なんでしょうね。
でも渡辺謙さんに(若い当時ということで)カツラをかぶせたのはちょっと許せない…
ドラマは最高です。
本当に考えさせられる映画でした。