山の頂から

やさしい風

マフラー

2008-01-22 17:59:28 | Weblog
 君絵が熱を出した。
2~3日前から軽く咳をしていた。
今年、成人式を終えて春には短大を卒業の予定だ。
アルバイトや卒論制作で無理を重ねていた。
母親の美恵は様子を見ていたが、父親はオロオロしていた。
8度以上の熱となって氷枕が欲しいと君絵が言う。
美恵は戸棚に取りに行った。
最近、滅多に使わないので見当がつかない。
探しているうちに見慣れない袋に入ったマフラーが出てきた。
それは赤味がかった茶系の毛糸で編んだものだった。
ハンドメイドだ。勿論、美恵が編んだ覚えはない
「何かしら?」と思ったがピンときた。
夫の雅夫が貰ったものに違いない。
彼は事務関係の小箪笥を、この戸棚に置いておいた。
その箪笥の上にヒョイと置いたと云う感じだった。
そう、何かの序でにウッカリそのままにという具合。
「これなぁに?」雅夫の前にひろげてみせた。
美恵は、夫の「あっ!」とした表情を見逃さなかった。
しかし、今はそれどころではない。
氷をアイスピックでかち割りながら美恵は忌々しさを感じていた。

 

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