山の頂から

やさしい風

さようなら07年、サヨウナラ・さようなら・・・

2007-12-31 06:57:27 | Weblog

  【7】という数字の付く年は好い事がないという

 ラッキィー7なんて嘘なんだ

 振り返っても仕方ない

 辛いことや哀しいことを思い返すだけ

 だから全てに<さようなら>という

 新しい明日を心待ちにして・・・・

ハグの樹

2007-12-29 10:56:31 | Weblog
 昔、大変美しい娘がいました。

貧しいが志の高い若者と愛し合っていました。

二人は見晴らしの良い高台に二本の木を植えました。

楓と紅葉を並べて植えながら約束をしました。

この木が大きく育つ頃に一緒になろう・・・

若者は必ず仕事に成功をすると決心をしました。

そうして彼は海を渡り貿易商人として努力をしました。

辛く悲しいことの連続でした。死んでしまいたいような時もありました。

しかし、歯をくいしばって彼女を想い頑張りました。

娘は沢山の縁談にも見向きもせず、ひたすら彼を待ちました。

しかし、彼が出かけて十年後に重い病で亡くなってしまいました。

彼は、仕事に大成功を収め日本の地を踏みました。

実に五十年の月日が立っていました。

何もかも失われてしまった時・時・時。

あの高台に見たものは・・・

絡み合った二本の楓と紅葉の樹でした。

秋の頃は他のどの樹よりも見事に染まって輝くのです。


しっかりと互いを抱き合うように遠く平野を見下してながら・・・

柚子

2007-12-27 08:41:59 | Weblog


   庭に3本の柚子の樹がある

   高い、高い空に黄色い実が光っている

   少し風邪が強く吹くとポタポタと実が落ちる

   落ちた柚子は辺りにいい香りを振り撒く

   母さんの指はガサガサしている

   母さんは落ちた柚子を拾い集め皮を剥く

   たちまち指はツルツルになった

   柚子はアカギレのお医者さん

お得意様

2007-12-25 15:05:13 | Weblog
 「ありがとうございました~」と美恵は頭を下げた。
何処かで見たことがあると思ったが思い出せない。
そうこうしている内に客で一杯になった。

  美恵は地方銀行の行員。窓口係りである。
高校を卒業し地元の短大を出て入行した。
初めこそ緊張したが6年経った今はベテランの口だ。
しかし、顔が若作りの所為か誰しも新人に見る。

 「オ~イ、橋立君」課長の声で我に返った。
そうだ!さっきの女性はホテルで見かけた客だった。
彼女は学生の頃、ホテルでアルバイトをしていた。
車で一時間の県庁所在地にあるホテルだった。
忘れもしない女だった。
年配の男と連れ立って出て行って直ぐに血相を変えて戻ってきた女。

 美恵は清掃の為、用具を運び入れている最中だった。
女はドアーの前に立って「洗面所に指輪が有ったでしょ!?」と言った。
美恵は未だ洗面所には入ってもいなかった。
「いいえ、未だ部屋にも入っていません」と答えた時、まっすぐ顔を見た。
女は咄嗟にバッグの中を探し「ああっ」と言うや踵を返して小走りに去った。
美恵は女の差すような目つきと態度がひどく不愉快だった。

 課長に呼ばれて側に行った美恵は思い切って聞いてみた。
「先ほどの武田さまは、あの武田産業の・・・?」
すると課長は声を顰め「後妻さんだ。良いとこ出の方らしいが・・・」
美恵は胸がドキドキした。
「良いとこって・・・あの女は喰わせ者です」と内心呟いた。
武田産業の社長は、最近妻を亡くした。
60歳代の奥様を美恵も知っていた。上品で知的な女性だった。
社長には愛人がいるとの噂は皆が知っていた。
奥様を亡くして1年も経たずに再婚したのだ。
それも30歳近く齢の離れた、あの女と・・・

奥様は自殺だった。
「橋立君、お得意様だからね」課長の言葉を背中で聞いた。

2007-12-24 00:18:23 | Weblog

  月周回衛星「かぐや」が月を廻る

  おとぎ話のかぐや姫

  人類が降り立ったクレーターには

  姫のお宿は見えません

  あんなにも恋しかった月の光

  荒涼とした大地ばかりがどこまでも・・・

  科学は夢物語までも宇宙の彼方に葬り去った

冬至の雨

2007-12-23 07:15:09 | Weblog


   寒い日だった

   どうやら雨になりそうだ

   夜に雪にならねばいいが・・・

   葉の落ちた木々がひどく寒そうな一日

   気象予報士が冬至だと言う

   ああ~米粒一つづつ

   春に近付くのだ

器用な女

2007-12-22 10:33:34 | Weblog
 しかし、咄嗟に「はじめまして。前田です」と応えた。
彼は「あっ」という顔をしたが「よろしく」とだけ言った。
和子は何も言わず軽く頭を下げた。
社長が脇合いから知人からの紹介だと言った。
それによると彼は最近、リストラにあったようだ。
スリランカ人が抜けて人手不足だったので受け入れたと付け加えた。
和子は憂鬱な気分になった。
社長はそれとなく付き合いを求めてくる。
が、彼もまた女が原因で離婚に至ったとの噂を耳にしている。

 千秋は公立の商業高校を受験し、将来は銀行に入ると希望をしている。
娘に目鼻がつけば女二人の暮らしも悪くはない。
もう、男に振り回される暮らしは懲り懲りだと感じていた。

 それからの和子は素早い行動であった。
社長には体力に自信がなく、代わりの事務員を探すよう要請。
そして2ヶ月後には会社を辞めた。
徹には勿論、何も言わなかった。
どうにかなる!! そんな風に自分に言い聞かせた。
つまらぬ男どもに纏わり付かれるのは御免こうむりたい。
大丈夫!先の人生をを楽しく生きていくわと声にして・・・

器用な女

2007-12-21 07:39:06 | Weblog
 和子は疲れを感じるようになった。
確かに働きづめであった。
千秋は、口数は少ないが素直に成長していた。
和子の父親が一年前に亡くなった。
その葬式に徹も顔を見せた。
一般の焼香に交じっていた。 和子は黙って頭を下げた。
その時、千秋には陰に呼び止めたらしい。
「少しだが・・」と言って小遣いを呉れたと後で知った。
そんな律儀さは変わらなかった。
が、しかし、彼は面変わりをしていた。
苦労をしているのかも知れない。
自業自得だと和子は強いてそう意識した。

 清掃会社に出る日だった。
少し風邪を引いていたが無理をした。
会社について社長に呼ばれた。
新しい社員を紹介すると言う。
「オ~イ、恩田君」と呼ぶ声にドキッとした。
恩田は和子の前の姓だった。
呼ばれて入って来た男。  何と徹ではないか!!
和子は眩暈がした。風邪の所為ばかりではなかった。

器用な女

2007-12-20 14:21:01 | Weblog
 社長はまたしても和子より3つ年が若かった。
和子は経理の仕事をしたが、手が足りない時は清掃も頼まれた。
仕事は嫌ではなかった。
兎に角、働けることは嬉しかった。
和子のテキパキと、丁寧な仕事ぶりが社長を喜ばせた。
食事に何度か誘われたが最初は理由を付けて断った。
しかし、そうばかりは、言っていられない雰囲気を察知した。
が、和子は慎重であった。
と云うよりも、男に対して信頼する気持ちが失せていたのだ。

 会社は3人の男を雇っていた。
一人、スリランカ人がいた。
若い彼は国に妻がいると言っていた。
その彼が突然帰国すると言って社長を慌てさせた。
丁度忙しくなる時期であったのだ。
社長は「困った、困った」と口にする。
次第に和子は仕事を辞めようかと思い始めた。
何か、どこかで自分が社長の中に飛び込んでいってしまう様な
訳もない不安を覚えたからだ。
此れもまた、理由のない勘の様な感覚である。
少し距離を置きたいと真から思った。

器用な女

2007-12-19 14:09:18 | Weblog
 和子は内心心配したが余裕がなかった。
3つの仕事をかけ持ちした。
女の細腕で子供一人を養わねばならない。
兎に角、頑張って徹を見返してやりたかった。
我武者羅に働いた。
千秋も心配させまいと健気な態度を見せる。
それが又、和子には不憫だった。

 そうして2年が過ぎた。
千秋は中学校の3年生になろうとしていた。
私学に行きたいと希望する彼女の願いを聞いてやりたいと
和子はもう一つの仕事を増やした。
週に2回出る仕事だったから、どうにかこなすことは出来た。

 そんな中、和子の前に一人の男が現われた。
彼は父親とビル清掃の会社を経営していた。
和子が週2回出る会社のオーナーだった。
彼もまた、バツ1であった。
子どもは二人いたが女の子は妻が連れて出て行った。