山の頂から

やさしい風

和子さんへ

2008-12-05 22:23:28 | Weblog
 
 朝、祈る思いで空を見上げました。
天気予報では昼過ぎには雨。
午後には7台のバスの予約があるのです。

 昨日と一昨日が最高に美しい紅葉でした。
訪れた人の誰もが感嘆の声をあげ、
私までもが幸福な気分になりました。

 2時を過ぎた頃、空模様が怪しくなって、
すかさず降り出した雨に泣きたい思いでした。
ああ~神も仏もないもんだと、
何処にもぶつけ様のない怒りがこみ上げました。

 昨年の今頃の夜、貴女がご主人と共にみえた時も、
酷く風が吹いていましたね。
行燈を飾れず、ライトアップも出来ない晩でした。
そしてモミジが散ってしまった・・・
「いいよ、来年見に来るから~~」と、
人懐こい笑顔を見せたご主人。

 御主人が亡くなって三カ月が過ぎたのですね。
私の父と同じ斎場、通夜の日が一日違いだなんて、
互いに辛い思いを抱えながら行き会ったあの日でした。
父も、和子さんの御主人も紅葉を楽しみにしていながら、
見ることなく逝ってしまいました。

 元気だった父が落葉掃きを手伝ってくれた時、
母と二人で箒を持ったまま写した写真があるのです。
その樹に西日が当たると、まるで錦の輝きのように美しく、
誰もがそれを背にしてスナップを撮るの。
その樹の下に立つと涙が滲んでしまいます。

 横殴りの雨の中、次から次へとバスが到着。
どうにもならない混乱の3時間でした。
最後のバスを見送って雨の上がった庭に立ち、
酷く落ちてしまったモミジを見上げ、
ふっと和子さんとご主人の姿を思い出したのです。

 会社をたたみ、生活の為に就職をする予定との噂。
血縁者との財産の整理など泣く暇もないと人伝に聞いています。
貴女が心から笑える日は、まだ々先のことでしょう。
友人として皆が貴女を心配しています。

 私は明日も戦争です。
辛くとも生きていれば良いこともあるわ、きっと!!
元気を出してね、和子さん。
笑ってお茶を飲める日を楽しみにしています。



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